第105話 「真実」を聞き終えて
(何だよ。何だんだよこれ!?)
アマテラス達から語られた数々の「真実」。
それは、あまりにも衝撃的すぎた内容だった為、
「……とまぁ、コレで話は終わり」
と、アマテラスが明るい口調でそう締め括っても、水音達の表情が明るくなる事はなく、全員顔を真っ青にしていた。
特にルーセンティア王国の王女であるイヴリーヌは、自分達が行った「勇者召喚」の所為でこのエルードだけでなく水音達の故郷である地球までもが消滅の危機に陥ってしまっただけでなく、今日まで自分達が知っている「歴史」が全くの偽りで、自分達が他の次元から来た「侵略者」の子孫であるという事、更に自分達が崇める「神々」が滅ぼされる未来が絶対に変える事が出来ないもので、その「神々」を滅ぼす3人の「悪魔」の内の2人が、目の前にいる春風とレナだという事実を知って、愕然としていた。
しかし、それでも体勢を崩す事なく、
「そ、それは……本当の事なのですか?」
と、イヴリーヌがアマテラスに向かって恐る恐るそう尋ねると、
「色々言いたいけど、まずはコレかな?」
と、アマテラスは小さくそう呟いて、
「残念だけど、全て事実よ。あなた達が行った『勇者召喚』の所為で、この世界と地球は消滅の危機に陥ってしまった。この責任、一体どう取ってくれるのかしら?」
と、イヴリーヌに向かってそう尋ね返したので、
「そ……それ……それ、は……」
と、イヴリーヌは顔を更に真っ青にしながらもなんとか答えようとしたが、その先を言う事が出来ず、やがて耐えられなくなったのか、とうとうその場に膝から崩れ落ちてしまった。
一方、水音ら勇者達はというと、イヴリーヌと同じように全ての「真実」を知って愕然としていた。特に歩夢と美羽は、大切な存在である春風が、実は自分達以上に過酷な運命を背負っていたという事実を知って、
「そ、そんな……フーちゃんが……」
「嘘。こんなの……嘘よ……」
と、今にも泣き出しそうな表情で、ガクガクと全身を震わせていた。
そして、
(何で……何でだよ)
それは、水音も同様で、
(こんなのあんまりだ! 何で春風が、そんな大きなものを背負う羽目になってるんだよ!?」
と、顔を「怒り」と「悲しみ」で歪ませて、歩夢と美羽と同じように全身をガクガクと震わせながら、心の中でそう叫んだ。
その時だ。
「……何だよそれ」
(……え?)
傍に立っていた鉄雄がそう呟いたのが聞こえたので、水音は思わず視線を向けると、鉄雄は怒りに満ちた表情で春風に近づき、
「雪村ぁ、お前! 何でこんなとんでもねぇ事を教えてくれなかったんだよ!? 召喚されたあの日の時点で、教える事が出来たんじゃねぇのかよ!?」
と、春風の肩をガシッと掴みながら、怒鳴るようにそう尋ねた。
その質問を聞いて、
(あ。もしかして、『地球消滅』の事を聞いてるのかな?)
と、水音はそう考え、
「それは……」
と、春風が答えようとし、
(……いやいや! だ、駄目だ、暁君……!)
と、ハッとなった水音が鉄雄を止めようとしたが、
「おい、よせよ暁!」
「そうだよ! 雪村君だって凄く辛かったんだから!」
と、水音よりも早く、進と耕が鉄雄を止めに入ったので、水音は2人に向かって、
(ごめん、ありがとう)
と、水音は心の中で2人に感謝した。
するとそこへ、
「ちょ、ちょっとぉ、近道君に遠畑君、2人共やけに落ち着いてないかい?」
と、恵樹が「おやぁ?」と首を傾げながら尋ねてきたので、その質問を受けた進と耕は、
「……まぁ、俺らは帝城で雪村がやった事を聞いた時から、何かあったんじゃねぇかって考えてはいたさ」
「う、うん。それでも実際に話を聞いたら、結構キツかったけどね」
と、2人して気まずそうにそう答えた。
そんな2人の言葉を聞いて、
(……そうだね。確かに、春風には何か事情があったんじゃないかって考えてはいたよ。そして、その事情を聞く為の『覚悟』だってしてきたさ)
と、水音は心の中でそう呟いた。
すると、
「……あの日」
と、春風がそう口を開いたので、水音達はハッとなって一斉に春風に視線を向けた。
その視線を受けて、春風は「うっ!」と呻いたが、すぐに真面目な表情になって、
「『勇者召喚』が行われた時、アマテラス様達から話をきけたのは俺だけだった。でも、あくまでも話を聞いただけだったから、みんなを納得させる確証なんて持ってなかった。ましてや俺は固有職保持者。しかも未熟な『見習い』とはいえ、この世界で最初に生まれた固有職保持者と同じ『賢者』の固有職能を持っているんだ。そんな状態であそこに留まってたら、いずれ俺の正体がバレて、何をされるかわかったもんじゃない」
と、水音達に向かってそう説明した。
それを聞いて、
(それは……当然だな)
と、水音が納得していると、
「……だから、私達のもとから離れたの?」
と、悲しそうな表情の歩夢が、春風に向かってそう尋ねてきたので、
「……ごめん」
と、春風はそれにコクリと頷きながら謝罪した。
すると、
「で、でもよぉ! それでも時間かけて、じっくりと説明してくれれば……!」
と、未だに納得してない様子の鉄雄がそう口を開いたが、
「暁君。俺は学校の中では君達とそんなに交流してなかったんだよ? そんな人間と、救いを求める大勢の人達、どっちが信用出来ると思う?」
と、春風がそう尋ねてきたので、
「あはは。確かにそうだね」
と、水音はそう乾いた笑い声を、周囲に聴かれないようにこぼしながらも、納得の表情を浮かべた。
それと同時に、春風に質問された鉄雄は、「うっ!」と呻くと、悔しそうな表情でその場に膝から崩れ落ち、
「チクショオオオオオッ!」
と叫びながら思いっきり床を殴り、そして、そんな鉄雄を、
(暁君……)
と、水音は悲しそうな表情で見つめるのだった。




