第101話 「真実」・3
本日2本目の投稿です。
(こ、こんな……こんな事って!)
ルーセンティア王国が行った「勇者召喚」の所為で、エルードだけじゃなく地球までもが消滅する。
このとんでもない「事実」を聞いて、水音はその場に膝から崩れ落ちそうになったが、それでもどうにか踏ん張る事は出来た。
(か、覚悟はしていた……でも……)
ただ、幾ら覚悟していたとはいえ、それでも話の内容があまりにも衝撃的だったので、そのショックは大きかったが。
そして、ふとイヴリーヌをチラッと見ると、
「あ……そ……そん……な」
と、水音以上に顔を真っ青にしている彼女を見て、
(まぁ、そりゃそうなっちゃうよな)
と、水音は心の中でそう呟いた後、「スー、ハー……」と深呼吸してどうにか気持ちを落ち着かせた。
その後、水音は真っ直ぐ春風を見て、
「春風。春風は、召喚が行われたあの日に、この話を聞いたんだよね?」
と尋ねた。
その質問を受けた春風は、コクリと頷きながら答える。
「ああ。あの日、みんなが召喚の光に飲み込まれてしまって、いつの間にか教室には俺だけになってしまったんだ。そして、このままじゃヤバいって思った俺は、以前みんなに話したように教室のカーテンにしがみついて、必死に抵抗していたんだ」
「その時に、アマテラス様に出会ったの?」
「そうさ。必死に抵抗して、『もう駄目だ』って思った時に、アマテラス様と、同じく地球の神様のゼウス様とオーディン様に助けられたんだ」
「え、『ゼウス様』って、ギリシャ神話の!?」
と、大きく目を見開きながらそう尋ねてきた恵樹に、春風は「うん、そのゼウス様」と答えた。
その答えを聞いて、
(いや、日本神話や北欧神話だけじゃなくギリシャ神話の最高神も登場ってどういう状況なのさ!?)
と、水音が心の中でそうツッコミを入れている中、春風は話を続ける。
「その後、俺はアマテラス様達からみんながこのエルードに召喚されたんだけど、それがルールを無視したもので、その所為でこの世界と地球が消滅の危機に陥ってしまったんだって話を聞かされて、俺、ショックで膝から崩れ落ちたんだ。その時の事は今も覚えてるよ」
「フーちゃん……」
「春風君……」
「だけど、このまま黙って消滅を迎えるなんて嫌だって思った俺は、アマテラス様達からどうすれば地球を救えるのかを聞いたんだ。そして……まぁ、ちょっとしたゴタゴタ(?)の末に、俺はオーディン様に『契約』という名の肉体改造をされて、『見習い賢者』の固有職保持者になったんだ」
真剣な表情でそう話した春風。その話を聞いて、水音達は「おぉ!」と感心したが、
(いや、ちょっと待って)
(今、『肉体改造された』って言わなかった?)
(ああ、サラッと凄い事言ったなオイ)
と、皆、内心では「オイオイ!」とツッコミを入れたい衝動に襲われていた。
そんな心境の彼らを他所に、春風は更に話を続ける。
「で、その後アマテラス様達に見送られるように、俺はこの世界に送り込まれたんだ。そしてウィルフレッド陛下の話を聞いて、俺も質問をして、危うく殺されそうになったところをレナに助けられて、みんなのもとからルーセンティア王国の王都の外へと飛び出して、レナの案内を受けて、ヘリアテス様に出会って、俺は『真実』を知ったんだ」
と、そう話した春風の言葉に、水音は「ん?」となって、
「春風。『真実』って……何?」
と、春風に向かって尋ねた。その瞬間、その場にいる者達全員の視線が、春風に集中したので、春風は「う!」と小さく呻いた後、
「……この世界の『真実』だよ」
と、先程まで以上に真剣な表情でそう答えた。
その答えを聞いて、水音だけでなく進らクラスメイト達までもが「え!?」と大きく目を見開くと、
「ヘリアテス様」
と、春風はヘリアテスの方へと振り向き、
「この先を、お願いしてもよろしいでしょうか?」
と、尋ねた。
それにヘリアテスが無言でコクリと頷くと、水音達を見て、
「これから私がお話しするのは、皆さん……特にイヴリーヌ姫、あなたにとって最も残酷な話になりますが、それでも聞きますか?」
と尋ねた。
その質問を受けて、水音達は「え、えぇ?」と狼狽だした。特にイヴリーヌは表情を真っ青にしたままで、今にも逃げ出しそうな様子なのだが、
「か、構い……ません。もう、ここまで来たら、全てを聞かなければなりませんから」
と、体をブルブルと震わせながらも、真っ直ぐヘリアテスを見てそう答えた。
その答えを聞いて、水音も……いや、水音達も更なる覚悟を決めたのか、
「ぼ、僕達にも、その『真実』というものを教えてください!」
『お願いします!』
と、イヴリーヌと同じように真っ直ぐヘリアテスを見てそう言った。
その様子を見て、ヘリアテスも覚悟を決めたかのような表情で、
「わかりました。それではお話しします。この世界の『真実』と、500年前に起きた『本当の出来事』を」
と、水音達に向かってそう言った。