第99話 「真実」
本日、外伝100回目の投稿です。
そして、アマテラスは水音達に「真実」話し始めた。
「そうねぇ。取り敢えず、まずはアレかな?」
そう言って、彼女が最初に話したのは、ルーセンティアで行われた「勇者召喚」についてだった。
アマテラス曰く、本来、「勇者召喚」……というより、異世界からその世界の住人を召喚する「異世界召喚」という儀式を行うには、絶対に守らなきゃいけない「ルール」が存在しているという。
その話を聞いて、
「え、『ルール』があるんですか!?」
と、驚いた鉄雄がアマテラスに向かってそう尋ねると、
「ええ、あるわよ。ちゃんと説明するから、しっかり聞いてね」
と、アマテラスにそう言われて、鉄雄は「はい」と返事した後、静かに話を聞く体勢に入ったので、それを見たアマテラスは「うん、良い子ね」と言うと、改めて説明を始めた。
その「異世界召喚のルール」なのだが、まず1つ目は、「異世界召喚」を行わせる者は、「神官」や「司祭」といった「神職者」でなければいけないという事だ。それも、ただの「神職者」ではなく、アマテラスのような「神」と軽く世間話が出来るくらいの高い実力者でなければならないそうだ。
次に2つ目は、「異世界召喚」を行う側は、それを行うに至った『動機』と、行う為に必要な『対価』を用意しなければならないという事だ。
その内容を聞いて、
「あ、あの。それって『魔力』とかの事を言うんじゃないんですか?」
と、美羽が恐る恐るアマテラスに向かってそう質問すると、
「悪いけど、その法則が通用するのは、あくまでもその世界の中だけだから。他の世界からその住人を召喚する場合だと、それはなんの対価にもならないの」
と、アマテラスはそう答えたので、
「え、えぇっと。まさか、誰かを『生け贄』にする……なんて事ありませんよね?」
と、今度は恵樹がそう質問すると、
「他の世界の住人を召喚するってのは、大抵の場合はその世界で起きた『問題』を解決してほしいってのが多いのよね」
と、アマテラスは恵樹に向かってそう言い、その言葉に恵樹が「はぁ、そうなんですか」と言うと、
「その世界の問題を解決してほしいのに、その世界の住人を生け贄に捧げると? それだと本末転倒よね?」
と、アマテラスにそう尋ねられてしまい、それを聞いて、
(ちょおっとぉおおおおお! それ、世界中の『生け贄文化』のある地域に住んでる人が聞いたら絶対ショックを受けると思うんですけどぉ!?)
と、水音は心の中でアマテラスに向かってツッコミを入れた。
そんな水音を前に、アマテラスは話を続ける。
そう、3つ目、即ち最後の「ルール」を。
最後のルール。それは、「異世界召喚」を行う側は、「人材」、「動機」、「対価」を用意した上で、行う側の世界の神と、呼び出す世界ーー相手側の世界の「神」と話し合い、双方から「許可」を得なくてはいけないというものだ。
「……とまぁ、以上が『異世界召喚』を行うにあたって絶対に守らなきゃいけない『ルール』なわけよ」
と、アマテラスが最後にそう締め括ると、
「す、凄い複雑というか、大変なルール……だな」
「う、うん。それだけ、ヤバいものだったんだね、『異世界召喚』って」
「いや、ヤバいっていうか……」
「なんか、面倒くさい……かも?」
と、進達が口々にそう話し出した。
その時だ。
(……あ、コレってもしかして!)
と、水音は何かを思い出したかのようにハッとなった後、春風に視線を向けた。
その質問に気付いた春風は、
「……そうだよ。『勇者召喚』が行われたあの日、俺がウィルフレッド陛下達に出した質問内容さ」
と、水音に向かってそう答えた。
そう、アマテラスが説明した「ルール」の内容は、「勇者召喚」が行われたあの日、春風がウィルフレッド達に出した質問の内容そのものだったのだ。
春風のその答えを聞いて、水音は「や、やっぱり」と小さく呟くと、
(そ、そうだ! イヴリーヌ様は、この『ルール』の事……)
と、今度はイヴリーヌに視線を向けた。今、アマテラスが説明した「ルール」について、「知ってたのでは?」と考えたからだ。
ところが、
「……え? イヴリーヌ様?」
いざイヴリーヌを見ると、彼女は顔を真っ青にさせていたので、
「い、イヴリーヌ様。その表情は……?」
と、水音がそう尋ねると、アマテラスが1歩前に出て、
「もしかして、知ってたのかしら? それとも……知らなかったのかしら?」
と、イヴリーヌに向かってそう尋ねた。勿論、
「ああ、私に嘘は通用しないから」
と、付け加えて、だ。
その質問を受けて、イヴリーヌはゆっくりと答える。
「……知りません。そのような『ルール』、聞いた事もありませんでした」
その瞬間、
『ハァアアアアア!?』
と、進ら勇者達が驚きの声をあげ、「どういう事ですか!?」とイヴリーヌに詰め寄ろうとしたが、
「ハイハイ、問い詰めたい気持ちはわかるけど、一旦落ち着こうね」
と、アマテラスが「待った」をかけてきたので、皆、どうにか問い詰めたい気持ちを落ち着かせた。
それを見てアマテラスが「よしよし……」とニコリと笑うと、
「さてと、イヴリーヌ姫で良いかな?」
と、イヴリーヌに向かってそう話しかけたので、それにイヴリーヌが「は、はい!」と返事すると、
「『ルール』を知らなかったというのは嘘じゃなさそうみたいね。でも、そんなあなたに、今から残酷な事を言うわ」
と、アマテラスは真剣な表情でそう言ったので、イヴリーヌだけじゃなく水音達までもが「え?」と表情を強張らせた。
そんな彼らにを見て、アマテラスは言う。
「今回の『異世界召喚』……いや、『勇者召喚』の際、守られた『ルール』は……0よ」
『ぜ、ゼロォ!?』
「そう、完全にルール無視しちゃってるわ。そして、その所為で……この世界だけじゃなく、地球までもが消滅の危機に陥ってしまったのよ」
その言葉から数秒の沈黙後、
『えええええええっ!?』
という悲鳴が、食堂内に響き渡った。