プロローグ
派生作品、始めました。
物語を始める前に、最初に言っておこう。
これは、異世界に召喚された「勇者」の物語……の、筈だった。
「エルード」という世界に存在する2つの大国の1つ、「ストロザイア帝国」。その中心、「帝都」の中にある「闘技場」で、今、多くの観客達に見守られながら、2人の少年による「決闘」が始まろうとしていた。
1人は黒い髪に「美少女」を思わせる美しい顔付きをした、青いローブ姿の少年。
そしてもう1人は、白銀に輝く軽装鎧を纏った、整った顔立ちをした茶髪の少年だ。
多くの観客達による歓声が上がる中、茶髪の少年が、目の前にいる黒髪の少年に向かって口を開く。
「遂にこの時が来たね、春風」
その言葉を聞いて、「春風」と呼ばれた黒髪の少年は、
「俺としては、ひっそりとやりたかったんだけどなぁ」
と言って、「はぁ」と溜め息を吐いた。
そんな彼を見て、
「はは、ごめんごめん。でもヴィンセント陛下は、一度決めたら絶対に折れない人だから」
と、茶髪の少年は申し訳なさそうに謝罪しながらそう言ったので、春風は「あー」となんとなく察して、
「まぁいいさ。どっちにしたって……」
と、「仕方ないな」と言わんばかりに、再び「はぁ」と溜め息を吐きながら頭を掻いた。
その後、春風はちらりと観客席の、とある一角を見た後、
「カッコ悪いとこ、見せたくねぇ人達がいるんだわ、俺」
と、真剣な表情で茶髪の少年を見てそう言った。
その言葉を聞いて、茶髪の少年は「むっ」となって、
「それは……僕も一緒だよ」
と言って、彼もとある一角をちらりと見た。
その後、2人は共に真剣な表情でお互いを見ると、それぞれの武器を構え出した。
そして、
「悪いけど春風……」
その武器を構えた状態で、茶髪の少年が口を開く。
「この決闘、勝つのは僕だ!」
その言葉を聞いて、
「いいや、水音……」
と、春風は不敵な笑みを浮かべながら、「水音」と呼んだ茶髪の少年に向かって言い放つ。
「勝つのは、俺だ!」
その瞬間、闘技場内が緊張に包まれた。
その雰囲気の中、誰もが何も言えないでいると、2人の間に立つ審判役の男性が、
「両者、始め!」
と叫び、その後すぐに、
「「いくぞ!」」
春風と水音、2人の少年が動いた。
もう一度言おう。
これは、異世界に召喚された「勇者」の物語の筈だった。
しかし、これから始まるのは、「神」に選ばれた「勇者」の1人でありながら、その「神」に逆らって、後に「青き悪魔」と呼ばれる事になる少年による、もう1つのちょっとユニークな物語である。
本日はもう一本投稿します。