二人の日々(3)
剛が自分の仕事を終わらせ昴のところにやってくると、昴は剛の姿を目にした途端全くの無表情になる。
そんなわかりやすい反応に苦笑しながら近づいて
「よぉー昴!仕事は終わったか?」
肩を叩き声をかける。無表情ではあるが無視はしないのが昴の真面目な性格を表している。
「…たった今終わりました」
「そーか、んじゃこれ持って早く沙梨香んとこ帰ってやれ」
そう言いながら剛は昴に紙袋を手渡した。昴がちょっと驚いた表情をして受け取ったのを見ると軽くウインクをして背を向けて歩いていってしまった。
昴が紙袋の中を覗くと風邪薬や果物が入っていた。昴のことをからかってばかりいるが剛にとっては可愛い弟のようなものなのでその弟の妹なら尚更可愛い。
ちなみに彼女有り。それを知らないのは昴だけ。(沙梨香も知ってて剛に悪乗りしている)かなりずれて…いや、天然…天然なんだ!
中身を見た昴はすぐに剛の後を追い、
「剛さん!ありがとうございます!」
と叫んだ。昴の感謝の言葉に振り返らず手だけ振って返す。一部始終を見ていた他の作業員はその後ろ姿を見て普段一度だって思わない言葉を連想する。
が、次の瞬間
「…でも果物だけじゃ沙梨香は釣れませんからね!」
…昴の勝ち誇ったような叫びに全員がずっこけたのは言うまでもない。
やっぱりどっかずれて…いや、天然なんだ!
同時刻:アパートでは…
う〜ん…う〜ん…う〜ん…………
中々下がらない微熱に頭も痛い。いくら熱に慣れていても体はやっぱりだるい。沙梨香は唸りながらベットに横になっていた。
昴に迷惑をかけたくないと思う一方で早く帰ってきて欲しいと思ってしまう自分に、
「……私、まだ兄さんに甘えてる…」
つい独り言のように呟いてそれに気づいてため息をつく。甘えてばかりはいられないのに…昴を頼ってしまう自分に嫌気がさしていた。
タン、タン、タン、タン、
扉の向こう側から聞き慣れた足音が聞こえてくる。
ガチャ、ガチャン
扉の開く音が聞こえ沙梨香が扉のほうを向くと見慣れた顔が見える。
「……兄さん、早かったね。」
沙梨香が声をかけると昴は沙梨香のほうに目線を向けて笑顔を作った。沙梨香以外にめったに見せない無防備な笑顔。沙梨香もそれを知っているから昴には甘えてしまう。
「ただいま、沙梨香。ちゃんと寝てたか?薬飲んだか?ご飯食べたか?食べないと元気になんないぞ。それから新しい薬剛さんにもらったからそれなくなったら飲めよ。後、果物もあるぞ」
世話好きの昴は帰るなりてきぱきとあちこちを掃除しながら沙梨香に話しかける。シスコンだからちょっと口うるさいのは仕方ない。それでも心配してくれているのが少し嬉しいので口には出さない。
「剛さんがくれたの〜?…うー果物か…」
そう言って眉をひそめる。果物自体が嫌いではないが、
「…どうせなら肉がいい…」
布団の中でボソッと一言。昴しか知らない沙梨香のダークな一面に気づいているのは剛一人。
実は内面かなり男勝りな沙梨香なのであった。
その後夜ご飯を食べて早めに就寝した。昴は沙梨香が眠りにつくまで他愛のない話をしたり、仕事の話をしたりした。
次の日:
「沙梨香〜?早く出ないと遅刻するぞ?」
「わわっ!待ってよ〜兄さん!」
元気よく部屋を後にする兄妹の姿があった。辛いときも苦しいときも二人一緒にいられたから頑張れた。
そしてこれからも―――
次は昴が会った謎の少年の正体でも…!
ホント謎だよねι
何なんだろね
(作者も知らないι)