未来への道筋(4)
−世界は闇によってのみ込まれていた
−暗闇の中、鬼達は光を求めてさ迷い続ける
−ならば光とは何か
−光は
−『心』
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あけぼの。
いつの間にか空が明るく白ずみ陽が昇ろうとしていた。
昴と沙梨香の前に現れたのはキィナと同い年くらいの少年少女。名前は梨乃と慧というらしい。彼らの後ろには先ほど自分達を追っていた鬼たち(すでに邪気は消えているので今はただの人)が山積みにされていた。
突然現れて謎の単語(時の番人とか)を言われても全く理解が出来ない昴と沙梨香はただぼーと3人のやりとりを見ていた。
−否、見ているしかなかった。
「んで悪趣味な覗き見をしてる暇があったんだから仕事は全部終わってんだろうな?」
キィナが若干頬をひきつらせながら問うと梨乃と呼ばれた少女が胸を張って、
「終わってるわけないじゃない!というか誰のせいでこんなに忙しくなってると思ってんの?十中八九キィナあんたのせいだからね!」
「俺が何したって言うんだ・・・」
「仕事放棄に行方不明、おまけに下界人であるあの兄妹についての近況報告書未提出!あと・・・」
「梨乃、その話は後で。まずあの子達に説明しないと」
「あ~・・・・・・昴、沙梨香!」
いきなり頭を掻きながらさも面倒くさそうにキィナに名前を呼ばれ昴と沙梨香は恐る恐る3人の側に近寄った。梨乃と呼ばれている少女はまだ何かブツブツと文句を言っていたが隣にいる慧と呼ばれている少年に「落ち着け」となだめられている。昴が何か言いたげにキィナを見ると、やれやれといった様子でまた頭をかいていた。そして梨乃と慧から少し離れたところまで二人を連れて行っておもむろに話し始めた。
『世界の守護人:時の番人』
世界が世界と認識されるよりも遙か昔・・・。そこには何にもない空間が広がっていた。人はもちろん、動物、生きとし生けるものすべてが存在すらしていなかった頃のこと。生命のいない世界には時もあるはずもなく、ただ変わることなくあり続けた。
どのくらいそうしていたのか。あるいはたった一瞬だったのかもしれない。ほんとうに突然世界にひとつの物体が現れた。そこから、世界が構築されていった。その物体を人は‘神’と呼ぶ。
神によって何もない空間に最初に作られたのが『時』と『空間』。そのふたつが混ざり合いひとつのあるものが作られた。それが、『世界』。そして、世界には様々なものが生まれ始めた。海が生まれ、大地が作られ、生命が誕生した。
しかし、そうして形成された世界はひとつだけではなかった。世界は多様に姿を変えていくうちに分裂し
、そこからまた新たな世界が次々と誕生していった。
世界が多くなるにつれて、神はすべての世界の存在が維持できなくなった。そこで神は考えた。ならば世界ごとに自分と同じ世界を管理できもるのを作ればいいと。そして、生み出されたのが時を、世界を管理する‘時の神’。その神の手足として作られたのが‘時の番人’という人間だった。彼らの役目は時の神に仕え、世界の存在維持と時を守ること。
長い年月を経て、人間が生まれたが時の番人達と相容れることができなかった。時の番人として生まれた者たちは等しくある能力を兼ね備えていたからだ。彼らは住む場所を追われ、見かねた時の神によって地上ではない場所で生活することができた。それを、‘天界’と彼らは呼んだ。
以後彼らは世界を守るために天界で生きている。たまに地上で活動したあと天界に戻るところを下界人に目撃されて‘天使’などと呼ばれることもある。
『本当のこと』
キィナの話を聞いた二人はただ茫然としていた。そんな二人の様子にキィナは困ったように頭をかいている。だが、そのままにもしておけないと思ったのか面倒臭そうに口を開きかけたところで、
「キィナ、話は終わったの!?」
絶妙なタイミングで梨乃の叫びがキィナ達のところまで届いた。キィナは開きかけた口をまた閉じて二人に目線だけで戻るように言うとスタコラと行ってしまった。昴と沙梨香は顔を見合わせて動けずにいたが梨乃が「こっちにおいでー」と手招きしていたのでノロノロと歩いて行った。
三人のところに着くとキィナが少し不機嫌な顔で座っていた。どうやら梨乃からお叱りを受けたらしく慧も少々苦い顔をしていた。
「全く連絡寄越さないんだから。こっちはいろいろと大変なんだからきちんと連絡寄越しなさいね!」
「・・・・へーい・・・」
「んじゃ次はあなたたちね。昴、沙梨香」
キィナの生返事を意に介さず梨乃は二人に向き直った。梨乃はキィナの時とはうってかわって少し申し訳ない顔になって話出した。
「今まで大変だったでしょ?本当のこと中々教えられなくてごめんね」
「・・・俺達のことを知ってたんですか?」
昴が梨乃に尋ねると梨乃はキィナを指差しながら、
「私たち以外に『鬼』に食われなかった子がいるっていう報告だけ(・・)は受けてたから」
と若干‘だけ’を強調して言った。昴はその言葉に反応しておうむ返しのように言った。
「・・『鬼』に食われなかった・・・?」