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文字だけの、見えない君を探してる。  作者: 佐藤そら
第1章 見えない君を見つめてる
8/35

相談

 今週も金曜日の夜がやって来た。

 かなえは仕事を終えると、足早にあの店へと向かった。

 

 暗闇の中に、明かりがついた一軒の店が見えてくる。

 店の戸には、のれんがかけられており、そこには『ことだま』とある。

 奇妙なラーメン屋は、今日も変わらず同じ場所に存在していた。

 かなえは、店の戸を開けた。

 

 数人の男性客が黙々とラーメンを食べている。かなえに目を向ける者はおらず、店内は異様な空気が漂い静まり返っていた。しかし、それももう気にならない。

 店内には一台のテレビがあり、テレビの横には一冊のノートとボールペンが置かれていた。

 奥では店主らしき人物が麺を湯切りしている手が見える。

 かなえは、券売機でつけ麺のボタンを押す。新しい試みである。

 食券を厨房のカウンターへと出した。

 食券を出すなり、顔が見えない店主からすぐにつけ麺が出てきた。

 まるで、かなえの選択を見抜いていたかのようだ。

 これには、かなえも少し驚いた。

 

 

「間に合ったー」

 

 かなえはお決まりのテレビの横の席に座った。

 テレビでは、『その感情に名前をつけたなら』が放送されていた。

 

 ×  ×  ×

 

 エモーション「彼は君を助けようと奮闘しているようだよ」

 

 捕らわれの身、若い女アルマに怪人エモーションは語りかける。

 

 アルマ「人の感情とは、なんなんでしょうね。彼はわたしのどこが好きなんでしょう」

 

 エモーション「人を愛するという気持ちは、実に不思議だ」

 

 アルマ「本当のわたしを知っても、彼はわたしを愛せるのでしょうか……」

 

 ×  ×  ×

 

「本当のわたし……!?」

 

 ドラマを気にしつつ、かなえの目線はノートにいっていた。

 テレビの横にある古くぼろいノート。その横にはボールペンがひとつ。

 かなえは、ノートを手に取り、開いた。

 そこには、“鋤柄直樹(仮)”からの続きの“文字”が書かれていた。

 

『もちろん、ラーメンが好きです。そして何より、この店が好きです。ここにいると、素の自分でいられる気がするんです。』

 

 

「わたしもです。鋤柄さん」

 

 ノートにある“文字”に返信でもするように、かなえは続きを書いた。

 

『わたしもここに来ると、なんかホッとします。婚活パーティーというものに、行ってみるべきなんでしょうか? そんな短い時間で、本当の姿が分かるのか……わたしはただ臆病になっているのか……。』

 

 かなえは相談するかのように、鋤柄に尋ねるかのように、“文字”を書いた。

 

 何かに期待しているか、どうしたいのかは自分でもよく分からない。

 けど、何故か書かずにはいられなかった。

 

 

 

 かなえが帰宅すると、リビングにいた風呂あがりのひとみが話しかけてきた。

 

「お姉ちゃん最近、金曜いつも遅いね。どこ行ってるの?」

 

「え……?」

 

「まさか男?」

 

「え? まさか」

 

「太った?」

 

「はっ!?」

 

 まさか、男なわけがない。

 むしろ、男だったら助かったんですけど。

 ん? 男?

 鋤柄さん……

 鋤柄さんは、男……

 いやいや、わたしったら何を……

 完全に原因は分かっていた。そう、ラーメンだ!!

 

 

 本当のわたし……

 

 かなえはこれまで放置していた、埃のかぶった体重計を取り出した。

 恐る恐る体重計に乗ってみる。

 

「ぬはっ!」

 

 かなえは思わず声を出した。

 体重は増加していた。

 毎週ラーメンを食べてきたつけが、ついに体重となっていた。

 それは、見事なつけ麺だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] つけ麺好きです!
2022/01/09 16:50 退会済み
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