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文字だけの、見えない君を探してる。  作者: 佐藤そら
第2章 見えない君を探してる
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宿れ、言霊

 金曜日、かなえは、あの店へと向かった。

 しばらく歩いていると、一軒の店が見えてくる。

 店の戸には、のれんがかけられており、そこには『おあいそ』とある。

 奇妙な寿司屋は、今日も同じ場所に存在していた。

 かなえは、店の戸を開けた。

 

 数人の男性客が黙々と回転寿司を食べている。かなえに目を向ける者はおらず、店内は異様な空気が漂い静まり返っていた。

 奥では店主らしき人物が寿司を握っている手が見える。

 かなえは店内を見回したが、まだ小鯖の姿はなかった。

 かなえは、あいているカウンター席に座った。

 今日も、回転レーンに乗った寿司が目の前を通過していく。

 いつもよりレーンに乗っている甘エビの数が多い気がする。

 甘エビばかりが回転している。たぶん、気のせいではない。

 

 しばらくすると、回転する寿司レーンの中に一冊のノートとボールペンが乗った皿が現れた。

 やがてそれは、かなえのもとへと回ってくる。

 そこには、『書いたらお戻しください』とあった。

 かなえは動いているレーンから、ノートとボールペンを手に取った。

 

 かなえは、ノートを開く。

 そこには、“鋤柄直樹(仮)”からの続きの“文字”が書かれていた。

 

『確かに僕にとって甘エビは、天エビであり、雨エビかもしれませんね。ラーメン屋『ことだま』は素敵な店です。また行かなくては。 鋤柄』

 

 鋤柄さん!!

 わたしも大河原さんとか関係なく、『ことだま』行きますよ! もちろん!!

 鋤柄さんがそこへ行くのなら!!

『ことだま』のノートにもまた鋤柄さんは戻って来てくれますか?

 鋤柄さんなら、きっとまた、ノートにも現れますよね?

 

 嬉しさが込み上げる。

 かなえは甘エビを頬張った。

 

 甘エビがいつもよりも甘い気がする。

 でもこれは、きっと気のせいなんだろう。

 今日は、あの鯖男が来る前に帰ろう。

 この美味しさのままに。

 

 ノートにある“鋤柄直樹(仮)”の“文字”に返信でもするように、かなえは続きを書いた。

 

『“ことだま”にも“言霊”が、宿りますように。 中条かなえ』

 

 かなえはノートを閉じると、回転するレーンにノートとボールペンを戻した。

 ノートは、回転するレーンに乗り、かなえの前を通り過ぎ流れて行く。

 

 あれ……、待てよ?

 もし、鋤柄さんが本格的に『ことだま』にも通うようになったとしたら……

 あのノートの鋤園さんって……

 うわっ、ヤバイ! あれは、どうしたら!

 ノートの中で、鋤園さんと鋤柄さんが出逢ってしまっては、まずくないか!?

 もし鋤柄さんが、“中条かなえ”より“鋤園直子(仮)”のことがお気に入りになり、絡み始めたりなんかでもしたら……!!

 ん? 果たしてこれは、まずいのか?

 っていうか、わたしが“鋤園直子(仮)”じゃん!!

 別にどちらと絡んでくれても問題はないはずだ。

 鋤園さんは、かなえさんのライバルではなく味方だ。

 鋤園さんに逢いたいと鋤柄さんが思ったとしても、結果わたしが逢えるのだから。

 むしろ、逢える可能性をわたしが広げたのではないか?

 一石二鳥、三鳥四鳥だ!

 わたしの想いが、この“文字”に宿って、“言霊”となって、鋤柄さんに届きますように。

 

 ×  ×  ×

 

 男の手が、動いているレーンから、ノートとボールペンを手に取った。

 ノートを開くと、何かを挟み込んだ。

 

 ×  ×  ×

 

 小鯖がいつものように店にやって来た。

 すでに、かなえの姿はそこになかった。

 

「あれっ? かなえさん、いないなぁ……」

 

 小鯖はあいているカウンター席に座った。

 回転レーンに乗った寿司が目の前を通過していく。

 鯖を食べている時だった。

 回転する寿司レーンの中に一冊のノートとボールペンが乗った皿が現れた。

 やがてそれは、小鯖のもとへと回ってくる。

 そこには、『書いたらお戻しください』とあった。

 ノートには何かチラシが挟まっており、それは少しはみ出していた。

 小鯖はそれが気になり、動いているレーンから、ノートとボールペンを手に取った。

 小鯖は、ノートを開く。

 

「鋤柄……。こいつが……」

 

 小鯖は挟んであったチラシを抜き取り、見つめていた。

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