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文字だけの、見えない君を探してる。  作者: 佐藤そら
第2章 見えない君を探してる
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ニセモノの鋤園

 カオス鋤園さん問題から、一夜明けたオフィス。

 かなえは、桃華に聞きたいことがあり過ぎた。

 

「お疲れ様でーす」

 

「ちょっと、なんであんな大嘘ついたのよ!」

 

「えっ? 何がですか?」

 

「いや、昨日の!!」

 

「あぁ、大河原さんのことですか? まぁ、タイプだったんで」

 

「はっ?」

 

「え、かなえ先輩って、別にあの人とはなんでもないんですよね? ただの知人なんですよね?」

 

「そ、そうだけど?」

 

「なら、関係なくないですか?」

 

「か、関係ない!?」

 

「それか、好きなんですか? 大河原さんのこと」

 

「そんなことあるわけない! わたしは、鋤……!」

 

「好き!?」

 

「いや、その好きじゃない!」

 

「LOVEじゃなくて、LIKEってことですか?」

 

「そういうことじゃなくて!! とにかく、ホンモノの鋤園さんが、どこかにはいるわけでしょ?この世界の、どこかには」

 

「あー。まぁ、そうですね。でも、ホンモノの鋤園さんは、大河原さんに逢いたがってないですよね?」

 

 !!!

 図星だった。

 本当の、ホンモノの鋤園さんは、“文字だけの君”に逢いたいと思ってない……。

 

「なら、わたしが鋤園を名乗ったところで別に問題ないですよね? むしろ、素晴らしいくらいじゃないですか。鋤園さんはノートから解放される。大河原さんは願いが叶う。わたしは大河原さんに愛される。一石二鳥、三鳥ですよ」

 

「大河原さんに愛される!?」

 

「大河原さんカッコイイじゃないですか!」

 

「えぇぇ!?」

 

「前に言いましたよね? わたし、結構おじさんが好きって」

 

「えーっ!? それでなの!?」

 

 衝撃が襲ってきた。

 そうだ、桃華は、歳の差婚にときめいている類いだった。

 だけど、大河原さんは今年39歳だ。桃華は23歳!?

 大河原さん、あなた、それでいいんですか……!?

 

「あのあと、カラオケで二次会しましたよ。大河原さん、意外と最近の曲も知ってたんです。歌もうまくって」

 

 そうか、大河原さんは自分に酔いしれて歌う類いだったのか。

 そういえば、わたしは大河原さんとカラオケに行くこともなかったな。

 そんな庶民的だったのか。

 結婚が目的だったからなのかな。

 なら桃華とは? 桃華とは何目的!?

 

「次、会う約束もうしたんですよ。これからはノートを介さずに連絡します」

 

「いや、最初からノート書いてないでしょ!」

 

 

 わたしは、いろんなものを抱え過ぎた。

 今、本当のホンモノの鋤園さんは、この全てを鋤柄さんに相談したい!!

 

 わたしが鋤柄さんと、もしあんな風に出逢えていたら、こうやって、桃華のように次の約束を取り付けることができたんだろか。もう、ノートを介さずに……。

 それとも、ノートを使って、いつもあのラーメン屋で落ち合うのだろうか。

 いや、約束しなくても、行けば逢える素敵な関係になるのだろうか。

 

 一瞬、鯖男が頭をよぎってしまった。

 あんな鯖と毎週会える人生は求めていない!

 

 大河原さんが少し羨ましくも思えてしまった。

 わたしは、結局、一度も鋤柄さんと一緒にドラマを見られなかった。

 でも、大河原さんが信じている鋤園さんはニセモノだ。

 もし、真実を知ってしまったら……。

 わたしが、ニセモノの鋤柄さんをホンモノだと思い込んで逢うようになったとしたら、真実を知った時、膝から崩れ落ち、ラーメンは伸び、シャリは喉に詰まり、絶望から立ち直れない気がする。

 それなら、逢いたいと思い続けて、逢えなくて、でもずっと鋤柄さんの“文字”を見つめていられる方が幸せなのではないだろうか。

 人は求めすぎると、最後に絶望が待っている。

 どうにもならないほどに落ちていく気がする。

 今がこれからも続き、何もないことの方が、幸せなのは間違いなかった。

 

 “文字”だけで幸せでいられるくせに、それでも逢いたいと思う愚か者だった。

 鋤柄さん、わたしにもあなたは見えますか?

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― 新着の感想 ―
[一言] かなえさん振り回されてばかりで大変そう!
2022/02/01 19:01 退会済み
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