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文字だけの、見えない君を探してる。  作者: 佐藤そら
第2章 見えない君を探してる
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不安

 金曜日がやって来た。完全に疲れた。

 でも、あのノートを見ずにはいられない。

 わたしは何故、こんなにも系列店を掛け持ちしているのか。

 

 しばらく歩いていると、一軒の店が見えてくる。

 店の戸には、のれんがかけられており、そこには『おあいそ』とある。

 奇妙な寿司屋は、今日も同じ場所に存在していた。

 かなえは、店の戸を開けた。

 

 数人の男性客が黙々と回転寿司を食べている。かなえに目を向ける者はおらず、店内は異様な空気が漂い静まり返っていた。

 奥では店主らしき人物が寿司を握っている手が見える。

 かなえは店内を見回したが、まだ小鯖の姿はなかった。

 かなえは、あいているカウンター席に座った。

 今日も、回転レーンに乗った寿司が目の前を通過していく。

 

 いつもよりレーンに乗っている鯖の数が多い気がする。

 鯖ばかりが回転している。たぶん、気のせいではない。

 あの鯖男は、鋤柄さんに裁かれたのか!?

 

 しばらくすると、回転する寿司レーンの中に一冊のノートとボールペンが乗った皿が現れた。

 やがてそれは、かなえのもとへと回ってくる。

 そこには、『書いたらお戻しください』とあった。

 かなえは動いているレーンから、ノートとボールペンを手に取った。

 

 わたしはいつも、このノートを疑問符『?』で終わらせている。

 でも前回は弁解することに必死で、わたしは鋤柄さんに疑問を投げかけていない。

 そもそも、質問できる状態ではなかった。

 果たして、狂気の鋤柄さんから続きの“文字”は書かれているのだろうか?

 鋤柄さんが消えてないか、不安になった。消えてしまうことが一番怖い。

 

 かなえは、恐る恐るノートを開く。

 そこには、“鋤柄直樹(仮)”からの続きの“文字”が書かれていた。

 かなえはホッとした。

 

『わたしも見えないものが鋤ですね。しかし、見えないものは見ようと思えば、いつか見える気がします。』

 

 わたしは愚か者です。

 見えないあなたを見つめていたい……

 あなたの今の心の中が見たい……

 そして、ずっと探している。

 いつか見えるって、あなたは絶対姿を現さないじゃないの。

 わたしをどこからか、見ているかもしれないくせに。

 鋤柄さん、自分だけずるいわよ。

 

 ノートにある“鋤柄直樹(仮)”の“文字”に返信でもするように、かなえは続きを書いた。

 

『鋤柄さん、わたしにも見えますか?』

 

 かなえはノートを閉じると、回転するレーンにノートとボールペンを戻した。

 

 

 今日は、いつまで経っても小鯖が姿を現さない。

 わたしは何度も時計を見ている気がする。たぶん、気のせいではない。

 来るとめちゃくちゃ鬱陶しいのに、来ないとそれはそれで気になってしまう。

 そんな自分にも、なんか腹が立つ。

 会いたいわけではない。心配しているのだ。

 まさか本当に、鋤柄さんに河原で煮込まれた!?

 わたしのせいで煮込まれていたらと思うと震えが止まらない。

 

 かなえが帰ろうとした時だった。

 店の戸が開く音がした。

 

 まさか、鋤柄さん!?

 

 かなえは慌てて戸の方を振り返った。

 現れたのは、今日は遅めの登場、小鯖だった。

 小鯖は、かなえを見つけると当たり前のように隣に座った。

 

「あれ? かなえさん、僕を待ってた感じですか?」

 

「まさか。そんなこと、あるわけないじゃないですか!」

 

「またまたー。おっ、なんか今日、鯖が多いですねぇ? 小鯖フェア実施中か?」

 

「とりあえず、ご無事なようで何よりです。生きていたみたいで」

 

「へっ? 何がですか?」

 

「わたしは帰ります。これ以上勘違いされるわけにいかないんで」

 

「そうだ、かなえさん! この前、『ことだま』に行って来たんですよ」

 

 かなえは帰ろうとしたが、足を止めた。

 

「ラーメン屋だったんですね。『ことだま』って」

 

 こいつ、『ことだま』にも行って来ただと?

 またわたしの居場所が荒らされたではないか!!

 こんな鯖に、『ことだま』を知ってるかなんて確認するんじゃなかった。

 あっちは“鋤園さん問題”で手一杯なんだよ!!

 

「ここの系列店みたいですね。回転寿司にラーメンとは幅広い。他にもまだあるのかなぁ? どこか知ってます?」

 

「そんなの知りませんよ。では、失礼します」

 

 知ってても鯖に教えるわけがない。実際知らないし。

 待てよ、他に系列店って本当にあるんだろうか?

 もしあるとしたら、その店にも鋤柄さんは通ってる?

 もしそのお店にもノートがあったとしたら、鋤柄さんは他の人ともこんな“文字”のやり取りをしてるのか!?

 ライバルがいるってこと!? 嫌だ! そんなの嫌!!

 わたしだってわけあって、今二つのノートを掛け持ちしている。

 なら鋤柄さんが、各ノートに沢山いたっておかしくない!!

 鋤柄さんは、わたしじゃない相手だったら逢っているのだろうか。

 わたしだから、逢ってくれない!?

 そんな……。

 小鯖の生存確認ができたが、もっと不安な気持ちになった。

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