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文字だけの、見えない君を探してる。  作者: 佐藤そら
第2章 見えない君を探してる
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白紙

 金曜日、かなえは、やはりあの店へと向かっていた。

 しばらく歩いていると、一軒の店が見えてくる。

 店の戸には、のれんがかけられており、そこには『おあいそ』とある。

 奇妙な寿司屋は、今日も同じ場所に存在していた。

 かなえは、店の戸を開けた。

 

 数人の男性客が黙々と回転寿司を食べている。かなえに目を向ける者はおらず、店内は異様な空気が漂い静まり返っていた。

 奥では店主らしき人物が寿司を握っている手が見える。

 かなえは、あいているカウンター席に座った。

 

 回転レーンに乗った寿司が目の前を通過していく。

 かなえは流れてきた寿司を手に取り、食べ始めた。

 しばらくすると、回転する寿司レーンの中に一冊のノートとボールペンが乗った皿が現れた。

 やがてそれは、かなえのもとへと回ってくる。

 そこには、『書いたらお戻しください』とあった。

 かなえは動いているレーンから、ノートとボールペンを手に取った。

 ノートを開くと、“鋤柄直樹(仮)”からの続きの“文字”は書かれていなかった。

 

「鋤柄さん!!!」

 

 かなえは凍り付いた。

 

 書いてない……!

 いつも来た時、必ず返事が書かれている。

 なのに、なのに今日は返事がない。

 嘘でしょ……

 鋤柄さん、そんなの嘘でしょ!!

 ノートから、鋤柄さんが消えた……

 消えてしまった……

 わたしが、消してしまった……

 

 “わたしはいつも、鋤柄さんに聞いてばかりです。鋤柄さんは、何かわたしに聞きたいことはありませんか?”

 

 その答えは、“白紙”だった……

 

 あれからこのお店に来れてなくて、このノートをまだ見てないだけかもしれない!

 そう思いたい気持ちもあった。

 けど、鋤柄さんはそんな人じゃない。

 そうやって、消えてしまう人だ。

『ことだま』の時もそうだった。

 

 “鋤柄さんは、いつこのお店に来ていますか?”

 

 そう尋ねてから、鋤柄さんは消えてしまったんだ。

 そして交換日記は、わたしの日記になってしまったんだ。

 やってしまった。

 調子に乗り過ぎた。

 わたしは、同じミスをしでかした。

 

 

 突然、店の戸が開く音がした。

 

 まさか、鋤柄さん!?

 

 かなえは慌てて戸の方を振り返った。

 しかし、現れたのは小鯖だった。

 小鯖は、かなえを見つけると当たり前のように隣に座った。

 

「そんな、あからさまにがっかりした顔しないでくださいよ」

 

「……」

 

「少しは僕のこと、待っててくれたんじゃないんですか?」

 

「……」

 

 やっと小鯖は異変に気がついた。

 

「かなえさん? 何かあったんですか? 食欲ないんですか? 今日はまだ3皿しか食べてないじゃないですか! しかも、わ……わさびなすばかり!?」

 

「知ってました? 青や紫は、食欲がなくなる色らしいですよ。ダイエットに最適ですよね……」

 

 かなえは、わさびなすの皿を手に取った。

 

 

 鋤柄さんは、わたしに興味なんてなかった。

 わたしの交換日記に仕方なく付き合ってくれている人だった……。

 苦しい……

 

 かなえは、何も書かずに、回転するレーンにノートとボールペンを戻した。

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