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5/8

0:昔の妹と違うので理解するのが大変です(5)

今回は、いつもより少し長いです。


それでは、どうぞ!



「お兄ちゃん。相談部って、具体的にどういったことをするの?」


学校の校門を出たところで、相談部についての質問をしてきた。


「まぁー、場合によるけど、学校の職員室の前に相談箱があるから、そこに『合って相談したい』と記述されている相談者にだけ、週に何回か相談するって感じだな。」


「へーなるほどね。」


「後、様々な先生の雑務の手伝いやイベントでの雑用とか雑用とか。」


「なるほど、雑用なんだね。」


相談部は、雑用ばかりである。

たまに来る相談者は、恋愛話が多数であり、重い話はこれまで一度もない。


また、今日の相談部は、顔出し挨拶だけだったので、早めに解放された。


「他人に対する人見知りを直すのには、良い練習になるんじゃないか?」


「うん。そうだね。お兄ちゃんは、大丈夫なんだけどね。」


「日本文化的にも対人恐怖的な心性を持っている人多いし、あんまり気にすることないと思うぞ。」


「ありがとう。でも、変えたいんだ。私自身のためにも……」


自分を変えるか……俺は、普通になりたい。

中学時代から、思い続けている俺の信念みたいなものである。

皆に共通する普通意識みたいな世界を見つけられさえすれば、普通になれるのかなー。

でも、そもそも普通なんてあるのだろうか?


「どうしたの?」


「いや、俺もできる限り協力するからな。」


「お兄ちゃんは優しいね。」


手で、口元を押さえながら小さく微笑む真結を見て、これから共に学校生活を送れる嬉しさが湧き上がってきた。


「そう言えば、人見知りはいつからなんだ?」


そう言うと、真結は困ったような顔をし、「いつからなんだろうね?」と答えた。

少しの沈黙の後に、また真結が発言する。


「多分なんだけど、お兄ちゃんと別れた後だとは思うよ。理由は、あまり覚えてないかな……」


うつむいて、目を合わせようとしない。

親しい人だからと言って、話したくないことくらいあるよな。

無理に言うことでもないし、ここらで別の話をしよう。


「そうだ、教員からこの学校に入れた理由とか、なんか言ってたか?」


「うーん、私が学校の試験と面接を受けたのが、水曜日だったってことかな。」


「水曜日?」


「うん。私にその記憶はないから、前のお兄ちゃんの考えの通り、多重人格の線が怪しいかな。」


やっぱり、多重人格障害の可能性が高いか。

もしかすると、水曜の真結は、また別の真結になるのかもしれないな。


「あっ、後、試験は、私の得意な絵だったらしいの。」


なるほど、特別試験では、真結の得意な絵を使ったんだな。

昔から、良く家に帰ってきては、紙とにらめっこしてたしな。

納得である。


「昔から得意だったもんな……どうしたんだ?」


真結は小走りで、自分の前にやってきた。

こちらの顔を覗き込むように、後ろに手を組み見上げてきた。


「少し寄りたいところがあるんだけど、付き合ってくれないかな?」


「どこだ?」


「秋葉原なんだけど……」


「何か、欲しいものでもあるのか?」


真結は「それもそうだけど……」と言い、大きく深呼吸をし、恥ずかしそうにこちらをまた見上げてくる。


「お兄ちゃんと……一緒に……デートしたいな///」


秋葉デートなんて、オタクにとって最高のシチュエーションである。

俺は、あまりの可愛さに軽く頷くことしかできなかった。


これは、シスコンルート確定である。



***


久しぶりの秋葉原に来た。


時刻は、午後16時。

現在は、ラジ館でグッツや本を閲覧中である。


もう来てから2時間は経つが、真結は真剣な眼差しでBLコーナーを徘徊している。

そう、腐女子だったのである。


何かを買うことに決定したのか、嬉しそうにこちらにやってくる。


「初めて来たけど、こんなに種類があるんだね!なかなか、地元だと買えなかったから……」


喜んでくれて何よりだが、俺はこの場が気まずい。


「この本とこれ買おうと思うけど、どうかな?」


裸の男同士の表紙を見せられても困るのだが……


当たり前だが、俺にこっちの趣味は持ち合わせていない。


「てか、いつからそういうのにはまったんだ。」


「うーん、2,3年前ぐらいからだと思うよ。」


「そうなのか……分った、買ってきて良いぞ。金あるのか?」


頷いて、そそくさとレジに進んで行く。

まさか、BL探索デートだとは思わなかったが……本当に5年もすれば人は変わるんだな。


そう考えていると、会計を済ませた真結は、こちらにやって来た。


「良い買い物ができたよ。付き合ってくれてありあとう!」


満面の笑みである。

まぁー、喜んでいるなら良いか。


「少し早いが、飯にしないか。上手いラーメン屋さん知ってるんだけど……」


「いいよ。お兄ちゃんがおすすめする場所なら何処でも」


「おけ、じゃー、行くか。」


そう言って、エレベーターに向かおうとすると、後ろから引っ張られたような感覚になり進めなかった。

後ろを確認すると、俺の服の裾を、真結が白く透き通った手で掴んでいることに気づいた。

真結は、言いづらそうに、こちらを見上げてくる。


「どうしたんだ?」


「手を繋ぎたいな……嫌ならぜんぜん大丈夫だよ!」


「いや、別に……」


ふと、目の前を見ると、楽しそうに話しながら手を握るカップルが目に入った。

妹は、俺の視線の先に気づいたのか……


「そういう分けじゃないよ!そういう分けでもあるんだけど……どう……かな?」


この可愛すぎる純粋な反応は、童貞殺しである。

俺は、「良いよ」ともう一度承諾し、手を握る。

迷子になられても困るしな。


嬉しそうにする真結を見て、自分も少し照れくさくなる。

俺が、兄でなかったら、勘違いマンに代わり果てていただろう。


にしても、この純粋さが恐ろしい……いつか、教育した方が良いかもな。

変な奴に狙われないためにも……


真結の柔らかな手を握りながら、そして、周りからの痛い視線を受け流すように、エレベーターの方角へと向かうのであった。



***


「とても美味しかったね。」


「だろ!ここの豚骨は絶品だ!」


アニメやゲームの話、妹の趣味の話などで盛り上がってしまったため、かなり長居してしまった。


時刻は午後18時。

この時間あたりになると、飲食店を出入りする人が増え出した。


早くに行って正解だったな。


ブゥーブゥー……

自分のポケットから、スマホの振動が足に伝わる。

取り出し確認すると、真結のおばさんからであった。

何かあったのだろうか?


「悪い真結のおばさんからの電話だ。少し、待っててくれるか?」


そう言うと、真結は「えっ」と驚いて、暗い表情になってしまった。

しかし、すぐに、笑顔で「電話してきて、待ってるから」と言った。

少し真結の挙動がおかしい。

何かおばさんとあったのだろうか?


「ありがとう。」


俺は、人気の無い場所へ移動し、緑のボタンをタップし、スマホを耳に当てた。


「はい。おばさんどうしたんですか?」


「悠翔さん、真結の調子はどうだい?」


「真結は元気ですよ。今は、一緒に買い物に出かけているところです。」


「そうかい。それは良かったね。」


なぜか他人行儀である。

こんな人だったか?

5年ほど合ってなかったが、もう少し明るい人だったと思うのだが……

長い沈黙が流れる。


「はぁー、そろそろ本題に入るよ。黙ってても仕方がないことだしね。」


なんでちょっとキレ気味なんだろうか……


「あの子は小学5年から中学2年までいじめられていた。障害が原因だろうね。」


障害のことを知っている!


「いじめられていたことは知っています。確か、それが心配でこちらの学校に転入させたんですよね。」


「いや、それは詭弁きべんだよ。」


どういうことだ?

その理由が嘘だったってことか。

おばさんからのメールには、心配と記されていたはずだ。

まさか……


「心配じゃなくて、障害で面倒くさかったからですか?」


「それもあるが、少し違うね。」


また、少しの間、沈黙が流れる。


「私が、引き取った理由から話すと、それは世間体を気にしていたからだよ。あのとき、引き取らなければ、様々な知り合いから責められた。君の死んだ父母、そのまた祖父母さん達にも世話になっていたからね。」


何を言っているんだ。

おばさんは、進んで真結を預かると言っていたじゃないか……


「そして、引き取った後……それからだよ。あの子はおかしくなり始めた。初めは、思春期の影響だと思っていたが、どうもそうじゃないらしい。あの変わり様は異質で恐怖だったよ。」


「それで、精神科に連れて行った。」


「そうだね。そこで、多重人格障害だと知った。」


「いつ、行ったんですか?」


「真結から聞いてないのかい? あのときは、月曜だったはずだよ……」


月曜日……

真結は、自分の障害がなんであるか知らないはずだ。

嘘をついてたってことか……でもなんでだ?

また、数秒の沈黙が流れる。


「その反応の無さだと知らなかったみたいだね。あのころころと性格が変化していく、あの娘は呪われているんだろうね。もう、関わる人間じゃない。暗くなったかと思うと、いきなり元気になったり、引きこもりだしたり、本当に恐怖でしかない!」


発言が攻撃的になっていく。


「あの子は、悪魔の娘だよ。悠翔さんにも分る日が来る。」


誰が聞いても分る。

もう、おばさんは見捨てたんだ……いや、あの時からもうすでに真結のことを……


「だから、もうこれ以上、私達に関わらないでくれ! 私の夫も怯えている。」


そうか……真結は学校だけでなく、家庭にも居場所がなかったんだ。

1人で5年間も、耐え抜いてきていたんだ。

それに、比べて俺は……


「今日は、これを伝えるために電話したんだよ。」


「分りました。真結の荷物、書類とか……まとめて、送ってきてください。」


「それは、もうすでにしている。」


なんなんだろう。この怒り感情は……

俺の人生に対してなのか、それとも、真結のおばさんに対してなのか、真結の嘘に対してなのか……


「それでは、連絡先などは削除してくれても構わない。もう、連絡も会うこともないだろうから……」


俺は、この冷め切ったおばさんの声を聞き、何かの線が切れた。


「もうっ、これ以上頼るわけねーだろ!今まで、預かってくれたことには感謝するが、あんたは真結に謝るべきだ!それで、それで最後にしろ!」


「はぁはぁ」、こんなに大声で叫んだのは何年ぶりだろうか。

かなり、喉が痛む。

周りの人達は、俺を見て「彼女にフラれたのか?」、「頭おかしくなったのか?」などと発言している。


俺は、周りからの視線を気にすることなく、息を整える。

少し経っても声がしないので、スマホを見ると、もうすでに通話は終了していた。

まじで、なんなんだよ。


「お兄ちゃん!どう……したの?」


周りの空気を気にしながら、真結がやってきた。

俺は、すかさず手を取り、歩き出した。


「痛いよ……何かあったの?」


手の力を緩める。

頭の中が、まだ混乱している。

いろいろ整理もしたいが、今はここから退却する方が先だ。


「真結、家に帰ったら話したいことがある。」



ここまで読んで頂きありがとうございます!


早速ですが、読んで頂いた方に謝罪しなければなりません。


1つ目は、金曜の21時投稿なのですが、遅れてしまったことです。


2つ目は、今回でハズデレ型人格の真結ちゃんの話を終了する予定でしたが、次回になりそうです。


これからは、予定通りに進めて行きますので、暖かい目で応援よろしくお願いします。


次回で、ハズデレ型人格の真結のことが少し明らかになります。お楽しみに!


さて、今回のお話など、良かったと思った方は評価とブックマークをよろしくお願いします!


*謝辞:真結ちゃんがテストを受けた日は火曜日→水曜日です。もう、すでに訂正しています。


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