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3/8

0:昔の妹と違うので理解するのが大変です(3)



「お兄ちゃん、おはよう!」


目の前には、呼び方の異なる少しおっとりした妹が座っていた。

部屋の時計を見ると、丁度2つの針が12を指していることに気づいた。


そう言えば、24時になれば私ではなくなるってこと言っていたような……


そんなことを考えていると、真結が自分のはだけたバスタオル姿に気づいたのか、顔を赤らめてこちらを見てきた。


「お兄ちゃん/// 私が寝ている間に何しようとしてたの?!」


「いやっ、違う! 真結が別の真結になっていて、それで襲われて……///」


「何言ってるの?」


きょとんとしている。

まじで、自分でも何言ってるか分らん。

嘘はついていないが、どう伝えれば良いのか……てか、


「真結、さっき俺を襲おうとしてたこと覚えてないのか?」


「まったく覚えてないし、お兄ちゃんを襲うことはしないよ。襲われるような格好をしてた私が悪いのかもしれないけど、そういうのはまだ早いような…」


早口で慌てているのが分る。

昨日の真結と比べると、全くの別人にしか思えない。


「俺が悪かったところもあるからな!寒いだろ、何か服を着た方が良いと思うぞ。」


こくりと頷くと、俺はそれを合図に立ち上がり、逃げるように廊下へ出て、着替えるのを待つことにした。



***


「入って良いよ」


そう言い、ドアからちょっこんと顔を覗かせる真結。

ピンク色のパジャマで揃えた服装、正直に言って自分の妹ながら可愛いと思ってしまった。


本当に、昨日の妹とは打って変わって顔以外、特に、あの丁寧口調が標準的な口調に変化している。


後、かなり暴走的なところもなく、雰囲気からも分るとおり、おっとりとしている。


「あまり、じろじろと見ないで……恥ずかしよ……///」


「すっ、すまん///」


後、恥ずかしがり屋なのかも知れない。

妹でなければ、容易に惚れていただろう。


「さっきは、すまなかった。いろいろ聞きたいこともあるだろうけど、まず、俺の質問に答えてほしい」


「全然大丈夫だよ。分った。」


了解を得られたことを耳にしながら、ふと壁一面と机を見ると、俺の写真とアウトなグッズは片付けられていた。


思春期の女の子の秘密だしな、それよりも……


「もう一度聞くけど、本当にさっきのことは覚えてないのか?」


「私が襲おうとしてたことだよね? 覚えてないよ。そんなにひどかったの?」


覚えてないか。

24時になったら、変化する性格……昨日の真結は「私ではなくなる」と言っていた。

再現性はないが、もしかすると、日付が変わると同時に人格が変化するのかもしれない。


「いや、大丈夫だよ。ちょっと、カッターナイフで斬り合いごっこしてただけだから。」


そう言いながら、昨日の真結に傷つけられた頬に手をやる。

かすり傷だけど、やっぱい痛いな。

後で消毒でもしておこう。


「えっ? ていうか、お兄ちゃん! 頬、怪我してるよ。大丈夫?」


上目遣いで、心配そうに頬を見つめてくる。


「大丈夫、大丈夫。後で、消毒しておくから」


すると、妹は立ち上がり、鞄を開けてポーチを取り出した。

その中から、絆創膏と消毒液などを手に取り、こちらに近づいてきた。


「ダメだよ、ちゃんと手当てしておかないと……ちょっと痛むかもしれないけど、我慢してね。」


「おう……///」


良い香りがする。女の子特有の匂いだ。


意外に深い傷だったみたいで、消毒液をコットンに浸し、俺の頬にぽんぽんと軽く当て、絆創膏を貼ってくれた。


「ありがとう。」


「いえいえ。」


ニコッと微笑む。

俺の妹は天使だったらしい…


妹は消毒液を片付けて、カッターナイフを手に持ちやってきた。


「そういえば、2本あったんだけど、お兄ちゃんの物?」


「いや、違う。どちらか分らないが、そのナイフで頬を切られて、襲われそうになったんだ。」


「そうなの?!ごめんなさい!」


深々と頭を下げてくる。

まじのほうで、覚えてはなさそうだ。


「大丈夫だって! 真結がやったんじゃなくて、昨日の真結がやったことだし……手当もしてくれたしな。」


「ごめんなさい。でも、そう言ってくれると助かるな……。でも、やっぱり……」


肩を落としている。

何か言いたくないことでもあるのだろうか。


「どうしたんだ?」


予想通り、少し言いにくそうにする真結は、自分のポケットから薬の入った小さな袋を取り出した。

そこには、精神安定剤と記述されていた。


「5年前からかな?目を覚ますと、1週間前の記憶がない状態なんだよね。いつも、起きると長い眠りについていた感覚があるの。そのことをおばさんに相談して、精神科を進められたんだけど、怖くて行ってないの……でも、手元には薬がいつもあるの……」


自分の両親が死んだときからなのか?

ただ、そんな素振りは無かったような……それに、一週間分の記憶がないこと、自分が薬を貰った記憶もないことは気になる点ではあるが……考えていても分らないな。


「俺の推測だと、日曜、つまり、昨日の真結と今日の真結は異なる性格になっているんだけど、複数の人格を持っている奴のこと何て言うんだっけ?」


「多重人格者のこと?」


「そうそう、それそれ。記憶がなくて性格が異なるって、それなんじゃないかと考えてる。例えば、昨日の人格の真結が、精神科に行っていれば薬は貰えただろうし、今の真結の記憶に薬の記憶が無くても当然だろ。」


「確かに、そうだよね。私もそうなんじゃないかって思ってたんだ……。」


「いや、分らないけどね……薬の話は、おばあさんに聞いておくよ。聞きづらかったんだろ?後、受診履歴があれば、こっちでも継続して相談して貰うことが可能になるから、一度、真結自身で行ってみるのも良いかもな。」


ただ言葉にした通り、あくまで多重人格や精神科の話は憶測に過ぎない。

つまり、本当か分らない。


まず、性格が変化したから多重人格者とは言えない。

統合失調症や認知症、記憶障害など、別の障害の可能性だってある。


また、薬に関しては、精神安定剤という文字を見る限り、精神科医が書いたものには見えない。

もしかすると、何処かで買ったものかもしれない。

何にせよ、一度、精神科に行くのは妥当だろう。


「ありがとう。そうだね。でも、他人と会うのは少し恥ずかしいし、怖いから一緒についてきてくれると助かるかな……」


恥ずかしがり屋みたいだし、そりゃ1人で他人に会うのは怖いよな。


「分った。一緒に行こう。でも明日、いやもう今日から学校が始まるから、来週の月曜で良いかな?休日だし。平日は部活の挨拶や活動とかで帰るの遅くなると思うから…」


「ありがとう!来週楽しみにしておくね。」


満面の笑顔である。そんなに、精神科の場所に行きたかったのか?


ああそうだ……もう一つ、


「薬は飲んでないよな?」


「うん。怖くて飲めなかったよ。」


わぁーと大きなあくびをし眠そうである。


「そうか。その方が、賢明だな。」


よし、そろそろ、夜も遅いから、今日はこのあたりで切上げた方が良いかもな。

まだ、聞きたいことは山ほどあるけど、追々聞いていこう。


「俺からは、以上だけど、何か俺に質問でもあるか?」


真結は少し悩んでから、何か思い出したかのように、頬を赤らめた。

もじもじとしながら、何かしらの決意をしたのか、質問を投げかけてきた。


「私の身体は良かった……かな?」


何か勘違いをしているようだ。

おそらく、バスタオル状態の時のことを思い出したのだろう。

ここははっきり言っておく必要があるな。


「昨日の真結には何もやってない。でも、確かに良かったとは思う。5年も立てば、人は成長するんだな……一部を除いてなっ!」


自分自身の胸に手をやる真結は、恥ずかしくなったのか、こちらを見上げて……


「エッチ……」


妹でなければ、容易に惚れていただろう(2回目)。



3つ目もご覧頂きありがとうございます!


最初、月曜は「デレデレ型」の性格のキャラを作成しようと思っていたのですが、ヤンデレ型よりになってしまうので辞めました。


そのため、新たに「ハズデレ」という、「恥ずかしがり屋でありながら、デレる(純粋な愛情表現を示す)」キャラを作成しました。


ツンデレと勘違いするかも知れませんが、「ツンデレ型」は「恥ずかしくなりながらも、それを隠し、純粋な愛情表現を上手く伝えられません。また、デレを純粋に表現するのも苦手です。つまり、よく怒ります(「~なんだからね!」)。」


7名も妹がいると、性格の弁別(区別)が難しいので、暖かい目で見て頂けると嬉しいです。


また、今回のハズデレ型人格が気に入って頂けたなら、評価などもよろしくお願いします。

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