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0:昔の妹と違うので理解するのが大変です(1)



「ごめんなさい。私が悪かったの……すべて」


俺の妹である〇〇は、手で顔を覆いながら泣き崩れていた。


真実を模索することが本当に正しかったのか分らなくなる。


確かに人格は、以前の妹である。しかし、それでも、自分の行ってきたことがただの自己満足な思い込みによるものとしか思えない。


好きだから、大切だから、嫌いだから、苦しいから、知りたいから…でも、その思いは複雑に絡み合って触れてはいけない悪夢に繋がってしまった。


俺は、妹の手を取り、目を見つめて、沈黙の間に思いついた言葉を伝えた。


「ありがとう。ここから先は、本当の〇〇探しをしないか?」


ー------------------------------------



4月に入り、少し温かい春風が心地よい季節に、俺は妹(真結)を東京駅前で待っていた。

時刻は午後13時。かなり緊張している。


「もう、5年か……」


丁度、今日から5年前の小学6年になりたての頃、つまり、12歳の時に実家の火事で両親を亡くした。

あのときは、妹と共に学校に行っていたため、報告を受けたときはショックで倒れたのを今でも思いだす。


その後、キッチンコンロの切り忘れから火災が起こったと警察は判断し、事件性がないことが確定した。

忘れっぽい母親のことだ。おそらく、十分な確認をしていなかったのだろう。

今は、そう思うことで自分を納得させている。


ふと、葬式の際の妹の表情を思い出した。

横顔しか見れなかったが、唖然とした顔で泣いてはいなかったように思う。

驚きすぎて、言葉にできないとは正にあのようなことを言うのだろう。


あの火事から、俺たち兄妹は親戚の家に別々に拾われた。

それから5年だ。長くも感じる。


「そろそろ、到着かな。」


駅の方から、何かに焦っているサラリーマン、腕を組みながら歩くカップル、子供連れの家族などが、塊となって出てくる。

その中に、1人だけ異質な格好をする存在に気づいた。


黒髪ロングで黒のドレスに身を包み、タイツと靴も黒で揃えている。

小さな身体をほとんど覆い隠す無駄に巨大な荷物を持って、周りを見渡している。

こちらに気づいたのか、笑顔で近づいてきた。


ん? 顔に見覚えはあるが、妹ってあんな感じだったっけ?

もっと、今時女子的な服装だったような……俺の見間違いかな?

そのような考察をしていると……


「お兄様!お久しぶりです。良いお天気で、日曜の休日でもありますし、荷物をどこかに預けてデートでもしませんか?」


数秒の沈黙、つまり、自分自身の思考停止である。


「どうされましたか?お兄様?」


大混乱である。お兄様?そんな呼び方をする奴だったか?

確か、名前呼びだったような気がするのだが……それよりも服装がゴスロリだと?!

そんな格好になる奴は秋葉辺りでしか見たことないぞ!


「いや……久しぶり、大きくなったな。いろいろといろんな意味で変わったことに、驚いているんだよ。」


「そんなにじろじろ見ないでください。恥ずかしいです。5年も立てば、女の子は変化していくものですよ。さて、デートに行きましょう!」


「いやいや、待ってくれ!今日は、疲れただろうから、家に帰ってゆっくり休もう。話したいこともあるしな」


その格好は、俺にも周りにも刺激が強い。今も、周りからの視線を感じる。何か写真を撮ろうとしてるやつもいるし……


「確かに、久しぶりですもんね。積もる話もありますよね。では、お家デートですね!」


顔を近づけて来る妹から、半歩ほど下がりたじろぐ。俺ら兄妹で家族だけどね。


「そうだな」


そう言って俺は、重そうな荷物に手をやり、嬉しそうに微笑む妹の顔を見て、やはり、昔と変わらない部分もあるのだと思った。

しかし、何がここまで妹を変えたのだろうか?甚だ疑問である。


まぁー家に帰って話せば分ることだし、とにかくこの周りの視線から逃げよう。



***


午後23時。


俺は、現在マンションの一室を借りて1人暮らしをしている。

俺の通う東京の私立校が親戚の家からは遠いのである。

そのため、食事や洗濯などはすべて1人でしなければいけない。

以外と大変である。


そもそも、妹がこっちに来たのは、自分の通う中学が合っていなかったかららしい。

つまり、引っ越しである。

中学1~2年の間は引きこもって、家庭教師を雇って勉強を真剣にしていたらしい。


このことから、勉強というより人間関係が上手く行かなかったのだ。

それに心配した妹の親戚のおばあさんは、俺の高校、私立心身支援しりつしんしんしえん高校に通わせようと思ったらしい。

ここは、中高一貫校なので、エスカレーター式に上がっていくことができる。

ただ、障害を持ち、それぞれの得意分野でのテストに合格した人限定で入学が許される。


つまり、俺は障害者なのである。

厳密に言うと、発達障害の中でも書字障害で、何かを書いたりすることができない。

今まで、漢字や英語の綴りを書くための練習をしてきたが、何度練習しても書けないものは書けない。

脳がそのようにできてしまっているのである。

はぁー、普通というものになってみたいものである。


ここで疑問なのは、俺の妹である真結がなぜ、この中高一貫校に行けるようになったかである。確かに絵は上手かったのを覚えているが、障害はなかったように思う。


おばさんからも何も聞いていないし、話の流れの中で少し妹に尋ねてみるか。


「このオムライス美味しいですね。」


そう言って、ダイニングテーブルの向かい側に座る妹が微笑みかけてきた。


いつも、特別な日にはオムライスを作るのが自分の掟みたいなもので、高校に受かったときも親戚のおばさんにお願いして作って貰っていた。

小さく刻んだタマネギとお肉、それに水分を含みすぎないご飯にケチャップをかけ炒める。

後は、トロトロ過ぎず固すぎない卵を添えれば完成!


「だろ! 安くできてお腹を満たせる。ただ、食べ過ぎには注意なんだよな。」


「昔から、変わらないですね。お兄様。」


ふふっと笑う妹を見て、声に出していた自分に少し恥ずかしくなる。

久しぶりの家族との食事に、舞い上がっているのかもしれない。


「そう言えば、その服装はなんなんだ?小学の時、そういう服を着なかっただろ?」


ハンカチで丁寧に口を拭く真結に対して、質問をする。

少し表情が暗くなった。何か、やばいことでも言ってしまったのかもしれない。


「ごめんなさい。私自身、良く覚えていないんです。自分の小さい頃の記憶……」


小さいと言っても、小学4年生時までの記憶なのに、あまり覚えていないのか?

小学高学年の時の服装カテゴリーレベルなら、完璧に覚えていなくてもある程度は覚えていそうなものだが……てか、なんで俺の昔のことは覚えているんだろう。


妹は、ごちそうさまでしたと言いオムライスを半分残し、席を立ち上がった。


「あっ、お皿なら洗っておくよ。後、部屋は掃除しているから、ベットのシートは自分で敷いてくれると助かる。」


妹は、もしかすると寝たいのかもしれないと考え、部屋の説明を少した。

まぁー、今日は部屋の片付けやらで疲れただろうから、自分の疑問は明日にでも聞くことにしよう。


「お皿ぐらい自分で洗いますよ。お気遣いありがとうございます。後、部屋に行くつもりはありませんよ。」


そう言うと、妹は残ったオムライスをタッパーに入れ、お皿を洗いながら俺に問いかけてきた。


「お兄様。駅で会った際に、私が変わったと言っていましたが、何処が変わったのでしょうか?」


謎の質問である。

自分から、服装とか喋り方とかを変えた訳ではないのか?

少しの沈黙の後、俺は自分なりの解答を出した。


「ああ、昔とは別人みたいに変わったように俺には見える。例えば、さっきも言ったけど、そんな服装は初めてだし、喋り口調だって、もっと今時女子みたいな感じだっただろ。」


「服装や喋り方はこうじゃなかったのですか……」


皿洗いを終えた真結は、少し残念そうに、そして悲しそうに述べ、元の席に座った。


「もしかして、俺の通う高校に来た理由と何か関係があるのか?」


おそるおそる自分のもっとも気になっていた点を指摘した。

しかし、真結は首を横に振り、俺の顔を見つめてきた。そして……


「そのことなのですが、私には分りません。他の私に聞いてみてください。24時になれば、私ではなくなっているみたいですから。」



読んで頂きありがとうございます。


ワンタンと申します。


これから、妹の7つの人格を書いていきます(全員魅力的な女の子達です)。


次回は、ヤンデレ型人格を持つ妹(真結)が、いろいろやらかす回になります。


最初の人格変化の回でもありますので、お楽しみに!


もし、面白いと思って頂ければ、評価とブックマークをよろしくお願いします。

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