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教え子と弟子 王都で①

黎の奇跡Ⅱとフェアリーフェンサーエフrcをプレイして遅れました。

今週から再開していきます。

「あなたがマオ殿の弟子ですか?」


「うぇっ!?ひゃい、そうです!」


 シュナはマオが王都に行く日に一緒に連れてこられた。

 そして城の中まで案内されて教え子の者たちと顔合わせをされてしまう。


「うぅ………」


 マオの弟子なのかという確認にシュナは頷くと視線が集まり身動ぎしてしまう。

 悪意は無くても一斉に向けられたせいで緊張をしてしまう。


「今日は俺の弟子と戦ってもらう。シュナも準備をしておけ」


「え」


「お前らも準備をしろよ」


「あの………?」


「じゃあ鍛錬所で先に待っているから」


「待ってください!」


 シュナの言葉が聞こえていないのか無視してマオはシュナたちの目の前から消える。

 その様子に騎士たちは思わず同情の視線を向けてしまう。

 いくら師匠といえど、こちらの話を全く聞かず勝手に決めてしまうのだ。

 しかも事前に何をするのかも教えもしなかったのだろう。

 急に戦うことになって酷く動揺していることに弟子になっても大変だと考えていた。


「あー、とりあえず鍛錬所に向かいませんか?ずっとここにいても何にもなりませんし。おそらくですが、来なかったら無理矢理に連れて行かれると思いますし」


「………はい」


 鍛錬所に行かなくても目の前の騎士たちに連れて行かれるのが想像できるし、逃げようとしても師匠であるマオに連れて行かれるのが想像できる。

 そして騎士たちと戦わせられるのからは逃げられのだと予想し諦めて鍛錬所へと向かった。


「あの?」


「どうしましたか?」


「本当に戦うことになったら手加減してくれませんか?」


 だが鍛錬所に着くまでには、まだ時間がある。

 その間にシュナは騎士たちへと手加減を頼む。

 なにせ相手は王都でもエリート集団。

 対してシュナはマオに選ばれたといっても王都に比べれば田舎から選ばれた存在。

 田舎のエリートは王都では凡才でしかないのはシュナも知っている。


「は?」


 それに対して騎士たちはシュナに単語一つで聞き返す。

 マオほどの実力者に弟子として認められた相手が手加減を望んでくるのだ。

 自分たちは望まれなかったのに、ふざけるなと思ってしまう。


「ぴぃ」


 その剣幕にシュナは怯え、騎士たちも涙目になっている彼女に少しだけ落ち着く。

 ほんの少し思うことがあっても相手は自分たちよりも年下の少女だ。

 本来なら、もしかしたら護るべき相手かもしれないから冷静になれた。


「あ……あの?」


 それにいくら見ても強そうには見えない。

 もしかしたら素質があるからこそマオが弟子にしたのだと考えると、今はまだ弱い可能性がある。

 それなら手加減を望むのもあり得るのだろうと考えると騎士たちも納得できた。


「………わかった」


 実力差がありすぎても鍛錬にならない。

 それにマオへと運を売れるのなら悪くないと騎士たちは考えていた。




「来たか。準備運動をしたら戦ってもらうけど騎士たちも手加減しなくて良いからな」


「もしかして話を聞いていたんですか!?」


「いや単純に注意をしただけ」


 鍛錬所に着くと開口一番にマオに注意を受け顔を青くするシュナ。

 話を聞かれたのだと思い、どこで聞かれたのかと視線を右に左に落ち着き無く振り回す。

 それは一緒に来ていた騎士たちも同じで落ち着き無く、自分たちの周囲を確認している。

 彼らからすればマオなら自分たちが気づかないところで隠れてみていても不思議ではないと考えている。


「本当ですか?」


「嘘はついていない」


 正直に言って信じられないと騎士たちとシュナはマオは見る。

 だがどんな視線を向けられても全く堪えることない姿に何も言えなくなる。


「そんなことよりも戦うぞ。誰と戦いたいか決まっていないなら俺が適当に決めるがどうする?」


「なら俺がやります」


 向けられた怪しむ視線を無視してマオは誰が最初にシュナと戦うのか確認する。

 それに対して若い騎士が一歩踏み出して答える。


「まぁ良いよ」


 マオは踏み出した騎士を一目見て微妙な気持ちになる。

 シュナと比べても格の差が大きい。

 勝負にもならないだろうと考えたからだ。

 だが少し考えてむしろ丁度よいかもしれないと考える。

 実際にシュナと戦えば実力差も理解できるだろうとマオは思っていた。




「二人共準備は良いな」


「はい」


「はいぃぃぃ」


 二人が自分たちの準備を終えて鍛錬所の中心に立ち、最後の確認をする。

 その際の返事は片方は余裕を持って答え、もう片方は情けない表情で頷く。

 マオから見れば実際の実力とは正反対の反応をしていることが少しだけ面白かった。


「それでは始め!「がっ!」………え」


 始めの合図と共にシュナと相対していた騎士が吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

 持っていた剣も手からこぼれ落ち意識を失ってしまったのだと把握できてしまう。


「え」


 そして全く予想できなかった実力にシュナの方へと視線を向けるが彼女も困惑の表情を見せている。

 その姿に彼女も予想外なのだと理解できてしまう。

 だから原因であるマオへと一斉に視線を向けた。

 騎士たちも気絶させたシュナもだ。


「ん?そいつはお前ら騎士と五角以上に戦えるぞ」


 そして当然のように教えられる事実。

 どうして最初から教えてくれなかったのだという疑問が胸に浮かぶ。


「お前らにびびっていたし実際に見ないと言っても信じられなかっただろう?シュナも自分の実力を理解していないから必要以上にびびって弱く見せていたし」


「………それは」


 否定できなかった。

 自分たちと戦うということにびびっていたし、弟子として認められたとしても素質だけでまだ弱いのだと判断してしまっていた。


「だから睨むなよ。弱く見せたとしても彼女の一挙一足を見て実力を計れなかったお前らが悪い。もしこれが暗殺者だったらお前ら全員役立たずだぞ。そもそも弱いからと言って油断すること自体がバカバカしいし。それで隙きを突かれて王族に傷をつけてしまったらどうするつもりだ」


「…………はい」


 弱そうだと思って油断するのは間違いだと言われ、騎士たちは素直に反省する。

 事実だからだ。

 そして、こんな当たり前のことを言われ実行できなかったことが恥ずかしく顔を赤くしてうつむく。


「あのぉ………?」


「あぁ、シュナ。お前はもともと王都の騎士団と五角以上に戦えるぐらいには強いから。そこを自覚して行動しろ」


「………王都の騎士団ですよ?」


「だから何?」


 目の前の現実が信じられないという顔をしているシュナにマオは自覚を促す。

 王都の騎士団だろうとシュナが五角以上に戦えるのは変わらない。

 それに今更だ。


「俺だって、ほとんど王都に行かないし。そもそも関わったのも最近だ。それでも、こいつらより強いんだ。

他にいてもおかしくない。お前が思っている以上にこいつらは、そこまで強くない」


「……………っ」


「え……。いや……、それは………。貴方だからでは?」


「他にも俺みたいなのがいないと考えるのはおかしいだろ」


 マオの言葉に騎士たちは悔しさに歯を食いしばり、シュナは強くないのは言い過ぎだと否定しようとする。

 だが続けられた言葉に否定することができない。

 マオが特別だからといって他にいないと考えるのはおかしいしダメだというのは理解ができた。


「とりあえず今回の目的はシュナ、お前の経験を積むためが一つ。もう一つはお前の戦い方は珍しいから騎士たちに経験させるためだ」


 そう言ってマオは手を叩いて話を切り上げようとする。

 先程は一瞬で終わってしまったのもあるが、まだまだ時間はあるのだ。

 シュナの体力を見て休憩させながら、次々と戦わせていこうとマオは考えている。


「休憩……の必要はないな。次に戦いたい奴は前に出ろ。ばんばん戦っていくぞ」


 マオの言葉に顔を見合わせる騎士たち。

 シュナもまたマオへと視線を向ける。


「一応言っておくがシュナはそのまま相手をしろよ。何度も言うがお前の経験を積むのに丁度よいから体力が尽きるギリギリまで戦ってもらう」


「…………はい」


 容赦のないマオの言葉にシュナは死んだ目でうなずき、騎士たちは同情の視線を向ける。

 自分たちもそうだが鍛錬のことになるとマオの指示には従いがちになる。

 それはマオの圧倒的な実力によるもので、それ自体が強くなれるのだという実績になってしまっている。


「それで誰が次に戦う?決められないなら俺が勝手に決めるが文句はないな?」


 だが、それはそれとして一人の少女相手に護る者である自分たちが次々と挑むのは躊躇してしまう。

 まだマオに選ばれたほうが、指示されたのだと自分ではなくマオの責任にしやすくてやりやすい。

 だから騎士たちは頷いてマオに決めてもらおうとしていた。


「そうか。じゃあお前からだ」


 マオもそれを理解して次にシュナと戦わせる者を決める。

 ちなみにマオは弱い者順で更に戦い方がかぶらない者を選んでいる。

 まずは王都の騎士団と戦っても勝てるのだとう自信と経験を積ませることが目的で騎士たちのことは二の次だ。

 あくまでも優先するのはシュナだと決めていた。


「はい!」


 騎士が自分の言葉に従ってシュナと向き合うのを確認してマオは満足し、次は誰と戦わせるか選んでいた。



「ぜぁ…はぁ……」


 そして日が暮れ始めるまで時折、休憩をはさみながら戦いシュナはマオが選んだ者たちに全勝した。

 その結果に騎士たちや王城で見ていた者たちは驚く。

 いくらマオの弟子とはいえ、たった一人相手に連続で挑みながら勝てなかったからだ。


「そいつらは騎士たちの中でも弱いほうだからなー。勝てたからと言ってあまり舐めないほうが良いぞ」


「わ……かっでま…げほっ、す」


「…………」


 マオの注意に返事をしようとするが息が上がっていてシュナは今にも倒れてしまいそうに見える。

 だからマオは無言でシュナに近づき肩に担ぐ。

 倒れて動けなくなるぐらいなら最初から運んだほうが良い。


「マオ…さん?」


「とりあえず部屋に運ぶから、そこで休め。明日も似た内容にするから覚悟は決めておけよ」


「え」


「待ってくれ……!」


 シュナを担いでからのマオの言葉にシュナだけでなく騎士たちも視線を向ける。

 たった一人の少女によってたかって連続で挑むなんて心苦しいなんてものではない。

 流石に止めてほしいと騎士たちから声が上がり始める。


「どうした?」


「頼むから明日も同じことをやるのは許してください!一人の少女相手に連続して挑むのは心苦しい!最初は万全の状態でも段々と疲労から不利になっているじゃないですか!?」


「その状態でも戦う経験を積めば確実に強くなれるだろ?その状態でも勝てるように無駄な動きが少しずつ減っていたし。確実に強くなれるから十分に価値はある」


「俺たちは?」


「珍しい相手と戦えて経験を得れるだろう?」


「差がひどすぎる!?」


 シュナは大多数の相手との経験、それに比べて騎士たちは珍しいとはいえ一人しか経験を積めない。

 あまりにも得られるものの差が大きすぎて不満の声も上がる。


「弟子とただの教え子に差があるのは当然。そもそもシュナはしっかりと俺自信の意思で弟子にするのを認めたけどお前らは王族方の命令で鍛えているに過ぎないからな。どうしても熱意に差がでる。とういうか王都を護る騎士なんだから自分でどうにかしろ。王都と街では教育にも差があるだろうが」


「それはそうですが………」


 教育の差もあると言われれば否定できなくなる騎士たち。

 話が聞こえていた他の者達もそれを聞いてズルいとは言えなくなる。

 実際に王都とそれ以外では実力に差があるのだ。

 その理由の一つに教育が関わっているのもわかっている。


「だいたい騎士は基本行動が中心なんじゃないのか?個人の技術ならともかく集団行動の基本は俺は教えられないぞ。もっと言えばお前らのほうが得意だ。俺に学ぶだけでなく自分たちで練り上げていったらどうだ」


「それは………」


 マオの言葉に黙り込む騎士たち。

 たしかに護るためなら個人だけで強くなっても意味は薄い。

 それよりも連携を練り上げて確実性を上げたほうが良い。

 一人では限界があるが、集団で協力し合いながら乗り越えた経験は数多くある。

 それならと、まずはマオから技術を盗んでいって連携も練り上げていこうと考える。

 そして目指すのは打倒マオだった。

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