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挑戦と誘い②

「ここがテブリスたちが暮らしている家ですか……」


 翌日の朝、ハニルは護衛を連れてテブリスたちが住んでいる家の前にいた。

 朝早い時間で外に出ている者は少ないが、ほとんどの者は起きている時間だ。

 多少は迷惑をかけてしまうかもしれないが許して欲しいと家の鐘を鳴らす。


「はーい!誰で………」


 家の扉を開けたのはアズ。

 そして目の前にいる者を確認して固まる。


「ハニル様…………」


「あら?私のことを知っているのですね?」


「はい……。遠目で見たことがあるのですぐにわかりました………」


 声を震わせながらハニルに答えるアズ。

 雲の上の相手を目の前にして緊張で身体を震わせていた。


「そうなのですね。ところで皆さんに提案したいことがあるのですが今は大丈夫でしょうか?」


「はい!少々お待ち下さい!」


 お姫様の言葉に逆らうことは出来ないとアズは慌てて家の中へと戻る。

 話を聞くための準備とパーティの皆にお姫様が来たことを伝えるためだ。

 寝起きとはいえ、だらしないところ見せられない。


「皆、お客様が来たから準備!だらしないところは見せられません!」


「何よー。こんな朝早くに来たんだから追い返せば「相手はハニル様です!お姫様!」………は?」


 アズの言葉に何を言っているんだと思うが、同時にそんなつまらない嘘を言う奴ではないと皆が知っている。

 まじで来たのかと隠れて玄関を見るが、そこにはお嬢様らしき者とその護衛のような者がいる。

 本当にお姫様かどうかわからないが確実に貴族とかのそれだ。


「いつまでも玄関にいてもらうのも悪いからリビングに入ってもらえ!その前に朝食とかは全部、別のところに運ぶぞ!流石に他の部屋に入ることはないだろうか一旦はそこに置け!」


「わかったわ!」


 お姫様が玄関にいるのを確認して朝食を別の部屋に運ぶ。

 それを確認してアズはリビングへとハニルたちを案内した。



「本当に男女関係なく共同で生活しているんですね………」


 ハニルはちらっと見えた男女が共に生活している姿に軽くショックを受ける。

 城の近くにある寮でも家族以外は男女は別れて暮らしているから驚いている。

 いくらパーティの仲間でも血の繋がらない男女なのに襲われないか疑問だ。


「まぁ、そんなこともあるんでしょう。それに学生時代からの知り合いだと聞いています。中には恋人同士もいて無理矢理襲うなんてことは出来ないのだと思います」


「そういうものなんですね………」


 護衛の言葉に学生からの知り合いだと襲うことはないのだと聞いて、そんなものなのかとハニルは納得しようとする。

 だが、やはり信じられなかった。

 本当はこの家に住んでいる者たちで爛れているんじゃないかと考えてしまう。


「それで何のようでしょうか!?」


 だが、今はそんなことはどうでも良い。

 本来の目的を離そうとハニルは決める。


「私達はマオに挑もうと思っています。そして勝つための方法もあります。私達に協力してくれませんか?」


「「「「「是非」」」」」


 話を聞いていた全員がハニルの誘いを受ける。

 どんな形でも良い。

 一度だけでも勝ちたいのだ。

 卑劣な手段を使わずに勝てるのなら、どんな誘いにでも乗る。


「どうしたんだ?急にそんな大声を出して」


「マオに勝てる方法があるから一緒に組まないかだって」


「…………毒でも盛るのか?」


「しません!」


 色々と片付けていたテブリスがリビングに戻り大声で聞こえてきた言葉に内容を聞くと毒でも盛るのかと疑問をぶつける。

 マオにはまず一人では勝つことは出来ないし自分たちも誘うとなると、親しい自分たちが事前に毒を盛るとしか考えられなかったせいだ。


「詳しい方法は参加すると決めたら教えます」


「…………わかりました。急なことですし、少し話し合ってからで良いでしょうか?」


「構いませんよ。ただし答えは出来るだけ早くお願いします。決まったら、これを持って城へと来てください」


 そう言って渡されたのは城へ入るための許可証。

 王家の紋章も記されており、これを見せれば最優先で案内されるはずだ。


「それでは。出来るだけ速い返事をお願いします」


 そう言って頭を下げるハニル。

 そのことに慌ててテブリスたちも頭を下げようとするが、そのまえに立ち上がり家から去っていく。

 それを見送ることしかできなかったテブリスたちは自然と集まり、どうするか話し合いを始めた。



「それで、どうする?」


「俺は参加したい。そして一度でも良いからマオに勝ちたい」


 テブリス以外の全員がハニルの誘いに賛同したが、それでも念の為に意見を合わせる。

 毒を盛るなどの卑怯な手段は使わないと言っていたが参加すると決めないと教えられないと言われて警戒をしてしまった。

 だから少し話し合うと言って時間を稼がせてもらった。


「だけど、どんな手段を使うのか不安じゃないか?」


 その言葉に頷くパーティメンバーたち。

 だが、一度だけでも良いから勝ちたいとも思っている。


「………卑怯な手段を使いたくないと言うけど、そもそも数の差で利用して挑んだ時点で今更じゃないか?」


「あ…………」


 その言葉に否定できないと目を逸らすテブリスたち。

 あれはマオが強すぎたから問題にもならないだけで普通はリンチになってもおかしくない。

 そして、マオはやはり強すぎないかとその強さを思い出していた。


「いや、でもあれはマオから挑んで来いって言ってたし………。つまり万全の状態で、それと毒を盛るという不意打ちはやはり違うだろ」


「まぁ、たしかに。それに毒を盛るっていう言葉には思い切り否定していたし………」


 もしかしなくても大丈夫かもしれないという空気が流れ始める。


「それにもし毒を盛り始めるとなったら止める位置にいた方が安全」


 その言葉に深く頷くテブリスたち。

 そして全員が参加することに決めた。


「それじゃあ、まだまだ時間はあるし早速行く?」


「そうだな。どういう風に戦うのか早めに確認したい」


 そうと決まれば落ち着いた時間に城に行くことに決める。

 だが、その前に別の部屋に運んだご飯を食べるのが最優先だった。



「すいません。大丈夫でしょうか?」


「どうしましたか?」


「返事が決まったら来てくれと頼まれたのですが……」


 そう言って見せられたのは王家の紋章入りの招待状。

 そのことに驚きながらも兵士は城の中へと案内する。

 よく見ると王都でも最強クラスのパーティで彼らも戦力に入れるなんて本気だなと思う。

 ちなみに兵士たちの殆どは誘われても参加しないことを決めていた。

 魔力がカラになり動けない状態で事件が起きたら対処することもできない。

 そのことは王様達も理解しているため許可を得ている。


「わかりました。ついてきてください」


 そんなことを考えながらテブリスたちを案内する兵士。

 彼らを見ていて思うことは噂通りに戦闘能力に関しては最強クラスだということ。

 魔力も多くシュウイチの能力も十分に発揮できそうだった。


「ここですか……?」


 そして案内してたどり着いた先は部屋の中ではなく城の中にある訓練所。

 そのことにテブリスたちが不思議そうな表情を浮かべているのを確認するが、構わず兵士は中へと入った。



「ハニル様。テブリス殿たちがいらっしゃまいました」


「あら?わかりました。ここまで案内してくれてありがとうございます。仕事に戻ってください」


 ハニルは兵士に仕事に戻るように指示を出すとテブリスたちの元へと移動する。

 

「もしかして、もう決まりましたか?」


「はい。全員が参加します」


 テブリスが代表して答え全員が頷く。

 それを確認してハニルは嬉しそうな表情を浮かべた。


「それは良かったです。それじゃあ早速教えますから今、鍛えている彼を見てください」


 ハニルに指示され走り込みをしているシュウイチを見る。

 テブリスたちは彼がどうしたのだろうと首をかしげてしまう。


「今は基礎体力の訓練をしていますが彼の持つ特殊な能力が鍵です。すいませんが彼の能力を説明したいので一旦ストップしてもらえませんか!?」


 ハニルの言葉に走り込みを止め膝をつく秀一。

 そして教官はそんな秀一を担ぎ上げてハニルたちの元へと近づいていく。


「………なるほど。彼らのうちの一人がマオと戦うことになるのですね」


「えぇ。そうなります」


 マオと戦うことになるのはわかっている。

 だが一人という言葉にテブリスたちはどういうことだと首をかしげる。


「一人と言いましたよね。とりあえずシュウイチ。彼らの中の一人を強化してくれませんか?あと魔力も彼らの中から分けてもらって、それで強化してください」


「…………すいません。魔力を分けてください。魔力が減るだけで何も影響はないので安心してください」


 疲れた様子の秀一に握手を求められて流されるままに応じると確かに魔力が少しずつ減っていく。

 そして秀一がテブリスに掌を向けて強化するとテブリスの身体が光り輝く。


「その状態で動きまわって下さいませんか?普段よりかなりの身体能力が強化されていますので」


 そしてハニルの言葉に従いテブリスが軽く動くと一気に訓練所の端まで移動してしまった。

 いつもより身体が軽く感じるし今なら普段できないことも問題なく出来る気がしていた。

 例えば仲間たちに接近して驚かせてやろうと思った。

 だが誰も反応することができなかったせいで気づけない。

 やはり普段より、かなり身体能力が上がっている。

 それなのに全く自分の動きに違和感が無いことに、あまりにも優れた強化能力だとテブリスも理解する。


「すごい………」


 思わずこぼした言葉にハニルは満足げに笑みを浮かべる。

 そして更に強化をするように秀一に指示を出す。


「え………」


「え?じゃなくて強化ですよ。そうですね。次は貴方の魔力を使わせてもらっても良いでしょうか?」


 有無を言わせずテブリスの別のパーティの手を引いて来るハニル。

 秀一は誘われるがままに魔力を吸収して、更に吸収した分を強化する。

 動きながらも話を聞いていたテブリスは更に強化されている事実に興奮する。


 秀一の能力を理解したのもある。

 魔力がある限り無限に強化できるのだ。

 これならマオに勝てるんじゃないかと期待することが出来る。


「これは本当にすごいですね………」


 その状態のまま少し動いてからテブリスはハニルたちの元へと戻る。

 もう十分理解したせいでもある。

 あとは誰がこの強化を受けて戦うか確認するだけだ。


「もう良いのですか?」


「はい。十分に理解できました。あとは誰がこの強化を受けて戦うか。そして誰が彼を隠し護るかわかれば十分です。どうせ彼の意識が途切れたら、この強化も切れるんですよね」


「はい。そのとおりです。戦っている最中に彼の意識が強化は途切れます」


 だから彼自身の鍛えているのだと理解する。

 おそらくは特殊な能力を持っているが為に鍛えてこなかったのだろう。

 隙きを突かれて攻撃されたら一撃で意識を失われかねない。

 そうなったら強化も解かれてしまい負けることが予想できてしまう。


「あとはそうですね。まだ誰がマオと戦うことになるかは決めていません」


「………」


 それなら是非とも推薦したい相手がいるが目の前の相手が受け入れてくれるかテブリスは疑問を抱く。

 正直に行ってパーティのみんなからも正気かと疑われる自身があった。


「もしかして推薦したい者がいますか?自分でも良いですよ?」


 その言葉にテブリスは甘えようかと思い、そして首を振って一度落ち着いて考えてから提案しようと決めた。

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