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召喚勇者④

 城に戻りハニルと秀一は早速、城の図書室に潜る。

 目的はこの世界にある料理を調べるためだ。

 そして秀一の世界の料理とどれだけ同じものがあるのか確認しようと考えている。


「あとはこれも必要ね」


 ハニルは料理の写真が乗ってある本以外に様々な料理の歴史ついて詳しく書かれている本や国の歴史書を持ってくる。

 いつ頃に料理が開発され、そして同時に誰がいたのか確認できれば異世界からの料理だということも理解る。

 なにせ、異世界から来たという歴史上の偉人はこの国にも結構いる。

 もし異世界から来た偉人がいる時代と同じ時期に料理が発祥したとしたら異世界の料理の可能性が高くなる。

 他に同じことを調べている者はいないだろうし、自分たちが一番乗りだとテンションが高くなっていた。


「歴史書?」


「はい。異世界から来たという偉人も世界に各地にいるんです。彼らがいた時期に発祥した料理があるとしたら、それは異世界の料理の可能性が高くなると思いまして」


 秀一はその説明を聞いて納得した。

 たしかに、その可能性は十分にある。

 どれだけ異世界から来て帰ったのか、そして残ったのか調べるのに丁度よいと秀一は考えた。




「……………やはり異世界から来た者たちは皆がこの世界に新たな影響を与えていますね」


 異世界から来たという偉人の時代を調べると必ず一品は新しい料理が発祥されている。

 中にはそれの開発に並々ならぬ熱量を掲げていた者もおり、自分たちのソウルフードなのだろうと察することが出来る。


「料理の他に異世界人について調べているけど誰もが特殊な力を持っているのか………」


 モンスターが決して近寄らなかったり、どんな相手でも攻撃を無効化したり、無双の怪力があったりと他には無い特殊な能力を持っている。

 そして自分ももしかしたら持っているんじゃないかと秀一は自分の手のを見る。


「そうみたいですね………。基礎能力も大事ですけど、自分が何の能力を持っているのか確認するのを優先しますか?」


 どんな能力を持っているか知らずに爆発してしまったら怖い。

 早急にハニルは秀一の能力を知りたい。

 特に洗脳のような力だとしたらあまりにも危険で殺す必要がある。


 そして秀一もそれは同じだった。

 自分でも条件がわからず無自覚に能力を発揮して危害を加えてしまうよりは遥かにマシだ。

 能力を知られることで危険視されるよりは良い。

 もし洗脳のような力でも無自覚に扱うほうが自分にとっても危険だと考えていた。


 それに確信もある。

 自分の能力は洗脳ではないと。

 むしろ相手の能力を上げる気がする。


「さて、どうやって調べましょうか?」


「多分、今からでも大丈夫だと思うけど、やってみるか?」


「わかるんですか?」


 自分の能力がどういったものなのか理解るのかと疑問をハニルはぶつけるが頷かれる。

 早速、人を呼んでみようかと図書室を出ていった。


「あっ…………」


 それがあまりにも早く秀一が止める間もなかった。

 ハニルからすれば、もし洗脳だとしたら二人きりでいるのが危険だ。

 出来る限りの洗脳の対策を施した上で能力について試そうと考えていた。

 当然、ハニルの他にも何人か帯同させる予定だ。



「………………」


 秀一は訓練場に連れてこられてから感じる周りの視線に気後れする。

 あまりにも警戒と危険視の圧力が強すぎる。


「何で言わなかったんだ?」


「いや、俺もどんな能力か正確にはわからないからだが!?何となく使い方が理解るだけで使ったことは無いし!?」


 秀一の言葉に本当かと疑うハニルや帯同している者たち。

 能力によっては危険視されて、この場で殺されるんじゃないかと秀一は予想する。


「それじゃあ使ってみてくれ」


 その言葉に秀一は頷きハニルへと掌を向けた。

 そこから発射された光がハニルを纏い光り輝かせた。


「これは?」


「少しその状態で自由人に動いて貰っていい?多分、結構な能力が上がっていると思う」


「わかったわ」


 秀一の言葉にハニルは屈伸をして、周りにいた騎士たちは少しだけハニルから距離を取る。

 それを確認するとハニルも訓練所を動き回った。


「おぉ…!」


「素晴らしいな……!」


 それだけで秀一の基本的な能力のことがわかり見ていた者たちは称賛の声を上げた。

 おそらく秀一の能力は他人の能力を底上げすることが出来る。

 弱い者に掛けても効果はあるだろうし、それが強者相手なら比例的に効果が上がる可能性がある。


「ハニル!もう少し効果を強くしても大丈夫か!」


「えぇ!大丈夫です!どんどん強くしてください!」


 秀一の言葉にハニルは目を輝かせて頷く。

 訓練場を自由自在に動き回り、急ブレーキも急転換も全く負担なく出来ることに楽しそうにしている。

 普段は全くできない行動が出来ることが嬉しそうでたまらない様子だ。


「はっ!」


 秀一が気合を入れるとハニルの輝きが更に増す。

 そして動きが更に加速した。


「素晴らしいですね……。普段の倍以上の動きになっているのにちゃんと思考が追いついている」


 普段との差を比べて自由に動き回れるハニルにかなりサポートに優れている能力だと感心する。

 普通は普段との動きの差があると身体の感覚が追いつかない。

 途中で来るってまともに動くのも難しいはずだ。

 だが、それでもハニルは普通に動き回ることが出来ている。

 ハニルの動体視力が優れているだけの可能性があるが、そうでない場合は感覚も引き上げることも出来る可能性もある。

 絶対に逃したくなかった。


「って、あれ?」


 そしてハニルの輝きが薄れていくと自由に動き回っていた速度もキレも失っていく。

 そのことにハニルは残念そうにしながら終わりかと思って秀一に視線を向ける。


「ってシュウイチーーー!!?」


 そこには辛そうに地面に手をついている秀一の姿があった。

 顔を青くして今にも吐きそうだ。

 自分と違って全く動いていないのに、この状況になっていることにハニルたちは思い至る。


「もしかしなくても魔力の使いすぎか?」


 まだ数分しか経っていないのに、魔力が尽きかけているのはそれだけ強力な能力だからだろう。

 魔法でも強力な魔法を撃とうとすると、かなりの魔力が減る。

 そして秀一の能力は他人の能力の底上げをするという単純だからこそ強力な能力だ。

 しかも後から追加で効果を強化することも出来る。

 だから魔力の消費も激しいのだろう。


「………すいません。誰か魔力を分けてくれませんか?」


「え」


 息を途切れさせながら言われた言葉にハニルたちは意味がわからないと困惑する。

 魔力を回復させるなら薬を飲ませることが必要だ。

 そして秀一については魔法のことについては詳しく教えていないし、そのことは知るはずもない。

 それなのに魔力を分け与えるなんて、どうしてそんなことが思いつくのか疑問だ。


「………もしかして他人から魔力を吸収できるの?」


「?あぁ」


 そしてハニルのもしかしてという直感に従った言葉に秀一は頷く。

 そのことにハニルは秀一はこの世界の者にとって、もしかしたら天敵の可能性があると判断する。


 何故なら魔法が使えない者がいたとしても、それは魔力が少なすぎて使えないだけで誰もが持っているものだ。

 強引に魔力を奪うことができれば魔力を枯渇状態にして誰でも無力化することが出来る。


「それって強引に誰でも奪うことは出来ますか?」


「……………無理そう」


 嘘だ。

 秀一は少し実際に出来るか試そうとした素振りを見せて否定する。

 もし強引に奪うことが出来るとバレたら何をされるかわかったものではない。

 今の自分が魔力に枯渇した状態で、それを相手にも強制することが出来るとバレたらどうなるかわかったものじゃない。


「そうなのですか」


 ハニルは秀一の言葉を信じたわけではないが、その言葉を今は受け入れる。

 もし、それが嘘だったら王家を騙した罪で幽閉すれば良い。

 それだけ価値のある能力だ。


「かなりサポート的な能力ですね。最低限は動けるようにして後はパーティでの立ち回りを優先して鍛えましょう。魔力消費は激しいでしょうが、十分に切り札になりますし」


 秀一の教育係は能力を見て、これからの鍛え方を口にする。

 変に鍛えて前に出て戦わせるよりは、いざというときに切り札を発揮してくれた方が戦力にはなる。

 有能な能力を宿してくれて有り難くはおっ持っていた。


「…………お願いしますから、早く回復させて……」


 秀一の言葉に慌てるハニルたち。

 だが、どうすれば魔力を回復させるのか方法はわからない。


「あっ、ごめんなさい。どうすれば回復できるんですか?」


「魔力を込めた込めて触れてくれないか?その上で魔力を渡す意思を込めてくれたら吸収できる気がする」


 秀一の言葉に従ってハニルが魔力を込めた腕で触れる。

 だが渡す意思は込めていない。

 秀一の言葉が嘘か本当か見極めるためだ。


「ふぅ……」


 そして渡す意思を込めていなくても秀一は魔力を吸収して顔色が良くなる。

 そのことに、やはり嘘だったかとハニルは考える。

 これで、もしもの時は王族に嘘を吐いたとしてシュウイチを監禁することが出来る。

 そのことに気分が良くなってハニルは早く魔力を回収してくれないかなと思った。


「おぉ!」


「へっ?」


 その瞬間、秀一の魔力の吸収量が跳ね上がる。

 先程まではとは圧倒的な速度の差だ。

 どうやら秀一の言っていたことは嘘では無かったらしい。

 少し残念だが最悪は冤罪を仕掛ければいい。


「………試しに渡すつもりもなく触れていたらゆっくりしか回収しなかったのに、渡すつもりで触れたら一気に吸収しましたね」


 渡す側の意思次第で吸収量が変わるのかとハニルは面白く感じている。

 それに渡す意思が無かったらとの速度の差を比べて、これなら強引に奪われようとしてもその間に殴り倒せれる。


「もしかしたらモンスター相手にも発揮できると思いましたけど吸収する相手の意思次第なら難しいですね。もし巨大な魔力を持っていたり頑丈な相手なら吸収している間に反撃される姿が目に映ります」


 ハニル以外にも同じことを思った者がいたのか口に出し、そして聞いていた者たちも頷く。

 だが、それでも有効活用しようとしたのか議論をぶつけ合う。


「でもそれって反撃できなければ攻撃手段としては使えますよね?」


「うまく行けば魔力の回復も出来るからパーティの皆を回復することも出来るんじゃないか?」


「魔力の回復量では微々たるものかもしれませんが持久戦も行けるのではありませんか?」


 秀一よりも色んなことを話し合う帯同してきた者たち。

 警戒したし線を向けていた者たちも、今はどう有効活用しようか話し合っている。


「もしかしたら生まれつき魔力が低いけど技量が高い者に、魔力が高いが技量が低い者の魔力を与えることも出来るんじゃないか?」


「そういえば……。魔法が使えないほど魔力が低い者たちの魔力をかき集めて誰かに付与したり、普段から魔法を使わない者から常に魔法を使う者に譲渡させて回復させることも出来るな」


 やいのやいのと話し合う者たちに秀一は会話に参加することはせずに話を聞く。

 異世界に来て、まだ数日も経っていないのだ。

 話を聞いても全然理解ができない。


「シュウイチの能力について話し合っていますけど参加しないんですか?」


「異世界に来て数日だから、何を話しているのか全く理解ができない………」


「ごめんなさい」


 秀一の能力について話しているのに参加しない理由を聞いてハニルは謝罪する。

 そりゃ話を聞いても理解できないよね、無理解なのに強引に参加させようとしたことに反省していた。

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