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王都の勇者たちとダンジョンへ①

「昨日は色々と話を聞けて良かったな。………それにしても、やはり勇者たちはそれぞれの専門家に一歩劣るか」


 キリカとカイルの話を聞けてマオは充実していたが、それとは別に話を聞いていた。

 そして、それぞれの専門家よりは勇者は劣ると聞いていて思っていた。


「私たちが何に劣るって言ったのかしら?」


「専門家には劣るって言った」


 それが聞こえたアズは少しだけイラつきながら聞き返す。

 だがマオが当たり前のように即答してクールダウンする。

 全く言い返せない内容だからだ。

 それに、それぞれの専門家に劣るのは自分たちのパーティは理解している。


「そういえばダンジョンに行くために俺を王都に誘ったんだよな?いつ挑むんだ?」


「さぁ?リーダーはリュミですからね。彼女に聞かないと……」


 急に話しかけられたことにも驚かずマオは当然のように会話を続ける。

 実際に戦って実力差を理解させられたこともあってアズも当然のように受け入れている。


「そうか………。起きている?」


「いいえ、まだ寝ていますね。私は何となく起きて風を浴びに来ただけですし」


 起こしてしまったのかと心配して確認するが否定される。

 マオはそのことに少しだけ安堵して教会の中に入る。

 昨日は過去の話で盛り上がり全員で教会へと泊まっていた。


「まだ寝ているのか………」


 それなら起きるまで待つしかないかとマオは考える。

 キリカやカイルの話は聞けたし、もう王都に用はない。

 あとはダンジョンに挑むだけだ。

 さっさと終わらせて街に戻りたかった。


「もしかして早く街に戻りたいと思っていますか?」


「当然だろう?」


 アズの疑問にマオは当然だと答える。

 マオは早くキリカと会いたかった。

 そのためにはダンジョンの挑戦も早く終わらせる必要がある。

 勝手に戻っても王都に連れ戻されるだけだろう。

 それでは戻る意味がない。


「まぁ、良いか」


 最悪は力付くでダンジョンに挑ませれば良い。

 ダンジョンに挑むために王都まで連れて来られたのだ。

 それなのに、いつまでも挑まないリュミ達が悪い。


「えっと何がですか?」


 マオの言葉に疑問を持つアズ。

 だがマオはそれに答えることはせずに笑って誤魔化す。

 それがアズにとって背筋を奮わせてしまう。

 ただでさえマオは王都の冒険者を何人も相手取って勝ったのだ。

 不快にさせて攻撃されたくない、

 なにせ拒否していたのを強引に連れてきたのだ。

 十分にマオが自分たちに攻撃する動機はあった。


「あの?ダンジョンに挑戦はしますし終わったら戻しますので………。許してください」


 アズはマオへの恐怖に頭を下げて許しを乞う。

 まだ死にたくなかった。

 例えマオに殺す気はなくても、それを出来るだけの圧倒的な実力差があった。


「殺す気なんて無いから安心しろ。最悪はおまえらを無視して帰れば良いだけだし」


「…………はい」


 アズはリュミたちが目覚めたら直ぐにダンジョンに挑むことについて確認しようと考えていた。





「おはよう………」


「ふぁ〜。おはよう」


「二人共、おはようございます。早速ですがダンジョンにいつ挑むか話し合いましょう?いい加減に挑まないとマオが不穏です」


「ふおん?」


「勝手に街に戻るか、それでもまた連れて行かれるのなら私達を殺してしまいそうな雰囲気です」


「へぇ〜。………ん?」


「マオが私達をころす?」


 リュミとカレンがマオの実力を思い出す。

 そして十分にそれを成すだけの実力があると認める。


「「なんで!!?」」


 だから二人は冷や汗を流してアズへと問い詰める。

 マオが殺す気で襲ってきたら逃げ延びる気がしないせいだ。


「もともとダンジョンに挑むためとはいえ強引に連れてきましたからね。そのせいで早く街に戻りたいそうです」


「………そういえばキリカが恋人なんだっけ」


 恋人に何か言う暇もなく連れてこられたマオ。

 そう考えるとかなり迷惑をかけてしまったと反省する。

 だが、それにしてもだ。


「キリカが羨ましい」


 その言葉に女性陣は深く頷く。

 自分たちに恋人がいないからこそキリカに対して羨ましく思う。

 テブリスといった何人かの男性と同じパーティを組んでいるが、男女の中だというわけではない。

 むしろ、そんな対象だとも思っていない。

 だからこそ王都の外に出て恋人をつくったキリカが羨ましい。


「私達も王都の外に出れば恋人が作れるのかしら?」


「どうだろ。恋人ができたとしても王都の平均的な男性よりは劣っている可能性はあるし………。耐えられる?」


「別にそのぐらいは………」


「能力とかは私達のほうが上なのよね………」


 そのぐらい気にしないという者と自分より確実に劣っている相手はさすがにと分かれる。

 意見は分かれているが互いに気にした様子は無い。

 あくまでも相手の好みの問題だと文句をつける気はなかった。


「そういえばリュミってテブリスとはどこまで進んでいるのよ?」


「え」


「傍から見ても両思いですよ?気づいていないのはあなた達だけです」


 カレンとアズの二人は互いに頷き合ってリュミに文句を言う。

 いつまでも惚気を見せられるのは目に毒だ。

 それなのに付き合っていないというのだからもやもやとしてしまう。

 二人を含めたパーティのみんなからすればさっさと付き合ってほしかった。


「そ、それよりもダンジョンに挑む話し合いをしよう!」


「………はぁ、そうね。男連中も呼んで話し合うわよ。それで問題ないのなら今日から早速挑むことにするわよ」


 カレンの言葉に頷く二人。

 それで文句はなかった。



「男どもは起きてる?」


「起きているけどノックぐらいはしろ。着替えていたらどうするんだ?」


「着替えとか持ってきてたっけ?持ってきていないから大丈夫だと思ったんだけど?」


「それもそうだな。すまない」


 本来は教会に泊まる予定はなかったから着替えなんて持ってきていない。

 一度、パーティで使っている家に帰って着替えたかった。


「あといい加減にダンジョンに挑みたいから、そのことについて話し合うわよ。問題がなかったら今日から挑もうと思っているし」


「………そうだな。お前たちも文句はないか?」


 テブリスの言葉にうなずく二人。

 そのことに満足するが、マオがいないことに気づいて首を傾げる。


「マオは?」


 その言葉に泊まった部屋を確認するがどこにもいない。

 昨日は男女に分かれて部屋を借りて泊まったのは覚えているがマオがいなかった。


「あいつはどこにいるんだ?」


 王都に来たのも初めてらしいのだ。

 先に起きて散歩に出ているにしても迷子になったんじゃないかと心配になる。

 正直に言って昨日もそれで心配になって、それなりに本気で探したのだ。

 そして、まずは過去の話を聞ける教会に向かったんじゃないかと考えて正解だった。


「起きたのか?それでいつダンジョンに挑むんだ?」


 どこに向かったのか考えているとマオが入って来る。

 片手にはパンを持っていて美味しい匂いが漂ってくる。


「それ、どうしたんだ?」


「買ってきた」


 昨日買ったパン屋では無いが開いている店があり、そこで買ったらしい。

 起きたばかりで腹が減り自分も食べたいと思ってしまう。


「それくれないか?」


「………別に良いがダンジョンにいつ挑むのか、直ぐに決めろよ。今日中に決めないとお前らの骨を折ってから街に戻るからな」


「…………………わかっている」


 マオに脅されての結果だが、直ぐにパーティの家に戻って話し合おうとテブリスは決める。

 それは他のマオの言葉を聞いていた仲間たちも同じ気持ちだった。


「それじゃあ早速、話し合おう。リュミたちはどこにいる?」


「私達の部屋に部屋にいわよ。早速、呼んでくる?」


「頼む」


 リュミの確認にテブリスはうなずいた。




「今日はなにか予定があるのか?」


「はい。もともとマオは一緒にダンジョンに挑むために王都に連れてきたので。準備もパーティで使っている家に戻れば直ぐに終わりますので」


「そうか」


 テブリスは神父に捕まり予定はあるのかと聞かれて頷く。

 神父もダンジョンに挑むと聞かれて納得をしていた。

 今日も予定はなかったら見習い勇者たちの相手をしてほしかったから少しだけ残念に思う。


「わかっていると思うがダンジョンでは油断するなよ」


「当然です」


 神父の言葉に深く頷くテブリス。

 その様子に油断して痛い目にあったんだなと神父も察する。

 一度痛い目にあったからこそ同じような目に合わないように徹底するだろう。

 それで死なずに経験として積めたことは運が良いと感心していた。


「わかっているなら良い。それじゃあ、またな」


「はい」


 神父の言葉にテブリスは頭を下げて目の前から去っていく。

 その方向にはリュミたちがいた。



「それで結局はどういう事になったんだ?」


「とりあえず家に戻って準備をしてからダンジョンに挑むつもりだ。どういうダンジョンなのかは家に戻ってから資料を渡すから見てくれないか?」


「良いぞ」


 マオはテブリスの言葉に頷く。

 本当なら資料よりも既に挑んだ者の情報を聞いたほうが価値があるが、事前知識として資料も必要だ。

 それにもしかしたらテブリスたちもまだ挑んだことが無いかもしれない。

 それを確認するためにマオは質問をする。


「既に挑んだ者からの情報も聞きたいけど、それは無いのか?」


「それも含めて書いてある。あと予想はしていたかもしれないが俺たちも挑むのは初めてだ」


 予想通りの答えにマオは納得する。

 情報だけでなく直接聞いた情報も含めて資料にあるだけ、かなりマシだった。


「あとマオの分の準備はしてあるから何が入っているのか確認だけはしてくれ」


 続けられた言葉に頷く。

 最低限、自分の持つ道具は確認すべきだから問題ない。

 それに本来なら自腹で準備をしないといけないのだ。

 それを考えると、その分だけ費用は減っているから有り難い。


「そういえば何日ダンジョンに挑む予定だ?それだけでも確認はしたいんだが」


「そうだな………。最長でも一週間はかかると覚悟してほしい」


 かなり深いダンジョンに挑むことになったなとマオは思う。

 本来ならふざけるなと怒り街に戻ろうとしていただろう。

 だが、ここまで来てしまったし最後まで付き合おうと諦めていた。

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