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王都の勇者たちと③

「街のみんなよりは強いな………」


 それでも弱いとマオは思う。

 客観的に見ても、それは間違いないはずだ。

 なぜなら結局マオ一人に対して勝つことが出来なかったからだ。

 王都の冒険者だから期待していたが、これでは期待外れだ。


「ぐっ………」


 そして、それを理解できない冒険者たちではない。

 マオの思ったことを完璧に理解して悔しがる。

 そして実際に勝てなかったせいで否定することはできなかった。


「あぁ、そういえば俺の実力は理解したか?」


 マオはそういえばとどうして闘うことになったのか思い出して質問をする。

 マオの実力を確かめたいから勝負をすることになったのだ。

 テブリス達よりは圧倒的に上だと理解したのかと確認する。


「っ……!」


 マオの言葉に何も言えない冒険者たち。

 そしてマオはそんな冒険者たちの内、自分を王都に連れてきたパーティを運ぼうと持ちあげたり担いだりした。


「え?」


「お前らが俺を王都に連れてきたんだ。泊める場所とかちゃんと考えているよな?」


 マオからすれば強引に連れてこられたのだ。

 無いのなら街に戻ってやるとマオは思っている。

 それを理解したのか殴られたり蹴られたして出来た痛みを堪えて指示を出す。


「一応、私たちの家があるから。そこの空いている部屋に泊まって………。案内もするから頼むわ」


「………わかった」


 無いと言ってくれれば変えることもできた。

 だが、同時に王都で活躍できる冒険者がそんなミスをするはずがないだろうなと考えていた。


「それと道案内は他の皆に頼むから、そっちに聞いて」


「は?」


 そう言って倒れてしまう。

 あとはマオを王都に連れて来たパーティで残っているのはアズだけだった。


「え?」


 そいつに頼んでもらおうとマオは視線を向ける。


「え?」


 ついでに意識が失ってしまわないようにマオは回復魔法をかける。

 残った彼女も意識を失ってしまえば休める場所がわからなくなっていた。


「それじゃあ案内を頼む」


 マオの言葉にアズは頷くことしかできなかった。




「次はこちらです」


「ありがとう」


 アズの案内にマオは従って歩いていく。

 背中にリュミ、両肩にテブリスとアード、両脇にカレンとウィンを抱えている。

 さらに落としてしまわないように紐などで固定していた。


「あのわたくしも一人ぐらいは運びましょうか?」


「心配してくれるのは有難いが意識を失った者は通常より重いから遠慮する。それよりも案内をしてくれる方がありがたい」


 実際にマオも見た目はともかく表情からして辛そうには見えず思わず甘えてしまう。

 一人ぐらいは運ぶことはできるが、案内も同時にこなすと体力のことを考えるときつい。

 回復してもらったとはいえ怪我はある程度治っても体力までは回復しない。

 だから有難く感じてしまった。


「それにしても確認したいがテブリスたちは本当に本気だったのか?いくら何でも、たった一人に王都の冒険者たちが敗れるのは信じたくないんだが」


「は?」


 マオの言葉に苛立ちを覚え視線を向ける。

 そこには悲しそうにする男がいた。

 その姿にアズは悔しさよりも申し訳ないという気持ちを抱いてしまった。

 マオは寂しそうな表情をしており、本当に孤独なんだとアズは直感してしまった。


「あの…………?」


「何?」


「そんなに強いと孤独なんですか………?」


 アズのその質問にマオは微笑んで返す。

 それがまるで自分たちをか弱い存在を見ているようかの笑みで悲しくなる。

 先の戦いも自分たちは本気だった。

 だがマオもそうだったかと問われると違うだろう。


 だってマオは戦いが終わっても体力が余裕があるしリュミたちを一人で運んでいる。

 そもそも、ほとんど無傷で怪我も一つも負っていない。

 圧倒的な数の差があるのにあり得ないことだ。

 だから、きっと本気を出していなかったのだろうと考えることも出きる。


「………マオさんにとって私たちは、どれだけか弱い存在なんですか?」


 そのか弱い存在を見るかのような視線にアズは気になってしまう。

 自分はマオから見たらどれだけ弱いのかと。


「あ」


「…………きっと本気を出したら少し力を込めただけで死んでしまいそう」


 アズはマオに首を絞められる。

 普通の相手でもちょっと力を込められただけで苦しくなり、そして強く力を込められた死んでしまいそうになる箇所だ。

 そしてマオの言葉通りだとすると少し力を入れられただけで死んでしまう。

 心臓が激しく鳴る。


 ちなみにいつの間にか運んでいたリュミたちは地面に置かれていた。

 アズは首を触れられていることに意識を割いていて気づけないし、触れられていることに少しづつ顔を赤くする。

 心臓が高鳴っていることも原因だ。


「あの…………」


「本当に少し力を込めただけで殺してしまいそうだ」


 自分の全てを握られている感覚。

 そのせいで力が抜けて地面に座り込む。


「やべっ………」


 マオは脅かし過ぎたとその状態を見て反省をした。

 顔を赤くして座り込んでいる姿に、こちも運ばないといけないのかと面倒くさくなる。

 だが、しょうがないとマオはアズを背中に抱える。

 リュミも落としてしまわないように自身の体に縛り付けてアズの首を軽く触る前の状態に戻った。


「じゃあ道案内をお願い」


「は………はい」


 アズはマオに背中に背負われたことに顔を赤くしてうなずく。

 そして、その状態でマオを道案内をすることになった。


「そこを右に回ってください………」


 道案内をしながらアズはマオの背中の感触を味わう。

 何人も同時に運んでいるのに全くふらついていない。

 ガッシリとした感触に男なのだと理解できてしまっていた。


「すごいですね………」


「急にどうした?」


 そして思わず言葉をこぼしてしまいマオに反応される。


「あ………。そのよくこれだけの人数を一度に運べるなって………」


 本当は違う。

 マオのガッシリとした背中に思わず凄いと口に出してしまっただけだ。

 だけど本当のことを言うの恥ずかしいから咄嗟に誤魔化す。


「魔法を使えば誰でもできそうだけどな」


「そんなことはないと思いますよ。私は多分無理ですし………」


 アズの無理という言葉にマオは首を傾げるが、本人がそう思っているのなら無理なんだろうと考える。

 何事も実際にできると思って行動しないと経験も積めないし、実際にできない。


「まず私は魔力で強化しても、身長などのせいで一斉に運べませんね………」


 そういって自分の体を見るアズ。

 マオはそんなアズの身体を思い出す。

 確かにテブリスたちのパーティの中では小さいほうだ。

 運ぶにしても引きずってしまいそうだと予想できてしまう。

 それを気にしてしまいそうだから無理なのだと納得できた。


「それもそうか」


 マオがいなかったらアズは他のみんなが起きるまでコロシアムで待っていただろう。

 もしかしたら何時間でも待っていたかもしれない。


「うぅ………」


 それにしてもと思う。

 歩いている度にマオたちは視線を向けられていた。

 そのせいでアズは顔を赤くしており、マオも見られていることに納得する。


 何せマオが何人も同時に運んで歩いているのだ。

 しかもその対象は王都でも最強クラスのパーティ。

 誰もが注目をしてしまう。


「早歩きになるけど大丈夫か?いつまでも見られるのは俺も少し嫌だし」


「はい。お願いします………」


 マオの提案に頷き、アズは落ちてしまわないように更に力を込める。

 そのせいでさらに体を密着させていることを思い出したが、ずっと見られているよりはマシだと恥ずかしいのを我慢した。




「…………アズさん、あの人と付き合っているのかな?」


「………あんな風に触られていたしね」


 当然だがマオたちを見ていたものはアズが首を軽く触れられていた所も見ていた。

 遠巻きに見ていたから会話は聞こえなかったが何かを話していて顔を赤くし地面に座り込んだのは見ていた。

 イチャ付いていたるのかと考えている者もいた。


「それにしてもリュミさんたちはどうしたんだろう?王都でも最強クラスのパーティなのに運ばれているなんて」


「そうなるぐらいには強い相手がいたのか?もしそうならかなり大変じゃないか?」


「でも話には聞いていないし………。それに歩いてきたのはコロシアムの方。もしかしたら、これまで表に出なかった実力者たちでもいるのかもしれないな」


「あぁ………。パーティとしてはともかく個人としては実力が上の者もいるしな。それでも王都でもトップクラスの実力ではあるんだが」


 もしかしたら運んでいた男もその一人かもしれない。

 あれだけの人数を一人で一気に運んでおきながら、全くふらつく様子が見えない。

 多分だが、倒したのは運んでいた男かもしれないと予想する。

 アズも案内していたし、もしかしたらテブリスたちの新しい仲間かもしれないと期待していた。


 もしそうなったら更にテブリスたちのパーティが強くなる。

 そうなれば今までよりも王都も安全になる。

 彼には是非テブリスたちのパーティに入ってほしいと思っていた。




「…………そういえば、ここって王都なんだよな」


 マオはテブリスたちのパーティが使っている家にたどり着くと思い出したかのように口に出す。

 その内容にアズは今更といった風に視線を向けていた。


「まぁ、今は良いか。それよりもこいつらはどこに置いた方がよい?男はともかく女の部屋にははいらないほうが良いだろ?」


「えっ?あっ、はい!中に入ってすぐにリビングですので、そこに適当においても大丈夫です」


「わかった」


 マオは家の中を進むとリビングがあったから言われた通りに適当に置いておく。


「待って」


 だがマオの行動にアズは腕をつかむ。

 それも当然だろう。

 マオは男女問わず適当に置いたのだから。

 しかも何人か重なってしまっている。


「冗談だ」


 マオもさすがに冗談だったのか重ねていたのを直ぐに持ち上げて横に並べる。

 ちゃんと男女を重ねることなく少しだけ間をあけて寝かせていく。

 その行動にアズは何でわざとそんなことをしたのかと白い眼を向けてしまった。


「なんでわざと重ねたりしたのよ?」


「客でもある俺にわざわざ運ばせたんだ。少しぐらいは起きた時の反応を楽しませてもらおうと思っただけだ」


「っ……」


 客と言われて否定できないし、そもそも強引に連れてきたのも自分たちだとアズも記憶にある。

 運んだのもマオの意思だが助かったのも事実だ。

 だから否定できない。


 それにマオの言葉に注意したことを少しだけ後悔をする。

 アズも意識している者同士が重なり合った状態で起きた皆を見たくなった。

 注意してしまったせいで戻すこともできない。


「そういえば、さっき王都だということに思い出していましたけど何か気になることがあるんですか?」


 だから自分から話を逸らす。

 さっさと忘れて、このどうしようもない後悔を忘れたかった。


「うん。王都っていえば勇者を育てる教会があるんだろ?」


「えぇ。私たちもここの教会に鍛えられました」


 私たちという言葉にマオは少しだけ違和感を持ったが、それを無視する。

 目の前にいる女も勇者だということが分かればよい。


「知り合いに双子の勇者がいるんだけど、そいつらをからかうために色々と話を聞きたいんだよな。さっき自分のこと教会で鍛えられたって言ってたし勇者なんだろ?頼むことってできないか?」


「双子の勇者ってキリカとカイルですよね!?懐かしい!!あの街にいたのですか!?」


「そうだけど………」


 テンションを高くして聞き返してくるアズにマオはもしかしたら仲が良かったのかもしれないと想像する。

 だとしたら都合がよかった。

 目の前にもキリカやカイルの昔の話を聞ける相手がいるのだから。


「良いですよ!その代わりに私たちにも二人のことを教えてくれませんか!?」


 マオは共通の知り合いがいると本当に話が進むと思う。

 こんなに楽しいのだから、それも当然だろうとも考える。


「何をそんなに話しているのよ……。というかいつの間にそんなに仲良くなったの?」


「あっ、起きたんですね。マオさんはキリカとカイルと仲が良いみたいで話が弾んだんですよ。皆も混ざりませんか?」


 意識が戻った者たちも懐かしい名前を聞いて目を輝かせる。

 そしてキリカとカイルの話で盛大に盛り上がった。


 そして―ー。


「……………すごいもりあがったな」


 あまりにも盛り上がったせいで日付が変わってしまった。

 その上に最後は皆で寝落ちして終わってしまう。

 この一日ですごく仲良くなかったなとマオたちは自負していた。

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