王都の勇者たちと①
「君がマオ?」
ギルドが普段よりも騒がしい中、マオに話し掛けてくる集団がいた。
装備が明らかに今まで見た者たちの中でも優れている。
騒がしい理由も彼らのせいだろうと理解することが出来た。
「誰?」
「私の名前はリュミ。こっちはテブリス。それで………」
「何の用?」
自己紹介を始めようとする目の前の女性にマオは口を挟んで要件を聞く。
どうせ内容は予想できるし断るつもりだが確認だけはしたかった。
そのマオの態度に呆れ、感心し、そして普段と変わらない様子にため息を吐く。
「貴方、私達を誰だと思っているの!?そんな態度を取って……!?」
集団の中にいた一人がマオの態度に声を荒げるが、リュミと自己紹介をした女性が手の合図だけで抑える。
その行動に彼女がこのパーティのリーダーだとマオは判断する。
「もう一回聞くけど何の用?」
そしてもう一度確認する。
マオとしては断るためにも早く話を聞きたかった。
「そうね。私達とパーティを組まない?」
「断る」
予想通りの言葉にマオは否定する。
その言葉にリュミ以外の全員は眼を吊り上げる。
そして話を聞いていた者たちもマオの強さは知っているが勿体ないと口を零す。
「もしかして私達だと不満。ある程度以上の実力があれば受け入れてくれると思ったけど?」
自らある程度というリュミにテブリス以外は自分の実力を過小評価し過ぎだと思う。
たしかにマオは話を聞いただけでも仲間に入ってもらいたい実力者だが、パーティを組んだ際のコミュニケーション能力や連携が不安だ。
それに、もしかしたら本来の実力はそこまでないかもしれない。
「俺は必要ないだろ?………なぁ?」
最後の確認にマオはプレッシャーを同時に放つ。
プレッシャーの威力にリュミたちは無意識に後ろに一歩引き、その事実に笑みを浮かべる。
噂通りの実力者だと分かったのが嬉しかったからだ。
マオの態度に不満を持っていたパーティも不満はある程度解消される。
「それでも私たちは君とパーティを組みたいわ。貴方と一緒なら更に色んなダンジョンに挑戦できると思うし」
リュミの言葉に全員が頷く。
実際の実力はまだ見ていないが浴びせられたプレッシャーに実力者だと確信する。
「…………基本的にソロだから連携が苦手だ。だから拒否する」
「関係ないわ」
マオの言葉に否定をする理由に納得するもリュミはマオの肩に手を置き、それを見たテブリスも手を置く。
そしてマオを巻き込む形で魔法を発動する。
「これは……!」
「マオ!」
「面倒くさいな………」
こちらに駆け寄ってくるキリカを見てマオはため息を吐いて消えて行った。
「ここは………?」
そしてマオの視界から光が消えると見たことのない空間が目の前に広がる。
多くの者がいるが誰もが見たことのない者たち。
どこかに転移させられたのだと察してここは何処なのだと疑問をぶつける。
「あまり驚いていないわね……。まぁ、良いわ。ここは王都よ。一度だけ一緒にダンジョンに迷宮に挑んでくれれば返して上げる」
「…………」
マオはリュミの言葉にため息を吐く。
王都から住んでいた街への道は分からないが、地図があれば分かる。
それに馬車に乗れば良い。
だから問題は無いのだが、無理矢理に連れてきた理由が気になってしまう。
最悪、街に戻ってもまた王都に転移をさせられたら戻る意味が無い。
「わかった。だけど何で俺なんだ?」
他にも一緒にダンジョンに挑むのに相応しい相手はいるはずだとマオは思う。
その中で何故自分なのかと質問する。
「ソロでダンジョンに挑むような者は数少ない。そして、その中でも特に凄まじい実力を持っている者として有名なのがお前だ。だから興味を持ったんだ」
その質問にテブリスが答える。
マオはその内容に、だったら実際に戦った方が良いかと考える。
その方が相手にも実力を実感できるはずだ。
「俺の実力を知りたいのなら実際に戦ってみるか?」
「え」
その言葉にテブリスやリュミたちは目を光らせる。
実際に一度戦った方が実力は実感できる。
だが問題は誰がマオと戦うかだ。
一番良いのはリュミかテブリスだろう。
この二人がパーティの中で最も強く、どれだけ戦えるのか比較しやすい。
「そうだな……。それじゃあ俺が戦おう」
だからテブリスがマオの誘いに乗る。
女性だからとリュミと戦うことになって手を抜くとは思えないが、どうせ戦うのなら同じ男の方が気が楽だろうと判断したのもあった。
「………分かった。で、何所で戦うんだ?」
マオはテブリスの全身を眺めて問う。
王都には来たことが無いから、どこに何があるのか分からない。
だからテブリスたちに任せることにする。
「それなら付いてきてくれ。問題なく戦える場所がある」
そう言って歩き始めるテブリス。
そしてマオやリュミたちのパーティも後を付いて行った。
「あっ、そうだ。自己紹介をしたのは二人だけだったわね。まず私の名前はカレンよ。短い間かもしれないけど、よろしく」
「そうだったな。俺の名前はアードだ」
「僕の名前はウィンだよ。よろしくね」
「わたくしの名前はアズです。よろしくお願いします」
まだ名前を聞いていなかった四人が名前を教えてくれる。
マオから見てテブリスやリュミと比べると一歩劣るが、それでもキリカ達よりは強く感じる。
やはり自分は必要ないのでは、と思う。
それなのに自分が必要な理由が思いつかない。
興味本位という理由だけではマオは納得できなかった。
「知っていると思うけど、俺の名前はマオだ。よろしく」
マオの言葉に頷く六人。
そして話ながら歩いていく。
「あっ、そうだ!どうせ着くまで少し距離あるし、少しだけ買い食いしていかない?おススメの店があるんだけど」
「………まぁ、そうだな。距離はあるし食べ歩きしても着くごろに消化しているだろうしな」
「そうそう。折角来たんだし僕のおススメを紹介したい!」
ウィンは歩いている途中に何かに思いついたかのように話し始める。
その内容もたしかに問題ないとテブリスたちも頷きおススメの店を紹介しようとしてくる。
そしてマオは会話の内容から思ったより歩くと聞いて王都は広いんだなと考えていた。
「これこれ!美味しいからマオも食べてみなよ!」
そう言って手渡されたのは肉汁がたっぷりの串焼き。
ピリッとした辛さと肉の旨味で食べるのを止められない。
あっという間に喰い終わってしまった。
「どうよ」
マオが食べ終わったのを見て自慢げに答えを聞いてくるウィン。
たしかに美味しかった。
「他にも美味しいものがいっぱいあるし、戦い終わった喰いに行こう?」
「………お願いします」
他にも美味しいものがあると聞いてマオは興味を持つ。
その反応にウィンは嬉しくなった。
「着いたぞ」
そして辿り着いた先はコロシアムだった。
始めて見て、そしてここで戦うのかと少しだけ困惑する。
「ここで戦うの?」
「よくわかったな。色んな者に見られるけど大丈夫か?最悪は貸し切りにするけど」
「そんなことも出来るの?」
「…………できる」
テブリスを始めとしたパーティたちは本当に自分達のことを知らないんだなと思う。
王都では自分達のことを知らない者はいないし、それはマオたちが住んでいた街でも同じだ。
だらかこそテブリスたちがいたことに騒がしくなっていた。
だがその中でマオだけは違う。
世間知らずと馬鹿に出来るかもしれないが自分達を本当に知らない態度に憤りよりも新鮮さを覚えたのが大半だ。
そして同時にマオのプレッシャーを受けて感心もした。
単純に誰かの情報よりも自分の実力を高める方に関心がなかったのだと想像出来た。
「それで、どうする?貸し切りにするか?」
「いや必要はないよ」
マオのその言葉にテブリスは頷きコロシアムの中へと入っていった。
中に入るとテブリスたちに向けて多くの者が頭を下げていて、下げられている方もそれを当然の者としている。
それを確認してマオはテブリスたちは王都でも偉い立場の者なのだろうと理解した。
「お前らって偉いんだな………」
思わず言ったマオの言葉にテブリスたちは苦笑し、それが聞こえた者たちは本気で言っているのかとマオを睨む。
「お前………!」
「何をしている?」
そんなマオに手を伸ばそうとした者もいるが、実際に掴まれる前にテブリスたち庇う。
それがまたマオに対して不満を強くする。
「はぁ………」
「何をため息………っ!?」
だからマオは相手を黙らせるためにプレッシャーを与えた。
あまり護ってもらえるのは好きじゃない。
それにこの件が終わったら会うことも無いだろうし貸しを作りたくなかった。
「えあっ………」
「ひっ………」
マオに不満を持っていた尽くが床に座り込んでマオを見上げる。
その視線には恐怖が宿っている。
「悪いけど俺は今から彼と戦うからコロシアムの中を使わせてくれないか?」
テブリスの言葉に頷き、座り込んだ者の一人が慌ててコロシアムの中へと入っていく。
恐らくはテブリスの邪魔にならない様に注意しに行ったのだろう。
テブリスはかなり慕われているのだなとマオは思った。
「今からテブリスが試合をするらしいから今すぐにコロシアムの試合場から出ろ!」
慌てて中に入ってきた者の言葉に多くの者が困惑する。
テブリスが戦うと聞いても戦うのがテブリスなら問題ないだろうと考えていた。
王都の中でも最強クラスのパーティ、更にその中でも特に強い者だ。
一々コロシアムから出なくても大丈夫だろうと思っている。
テブリスなら周囲に被害が行かない様に抑えることも出来るはずだ。
「多分、相手は今まで出てこなかった強者だ。もしかしたら互角かもしれない」
「………マジで?」
「じゃなきゃテブリスが戦うはずが無いだろう!?互角でもない限りテブリスやリュミが戦わないで、他のメンバーに任せているだろ!」
その言葉に今までのマオのことを思い出して納得する。
そして慌ててコロシアムの試合場から逃げ出した。
テブリスと互角の戦える相手との試合に巻き込まれたら、どんな目にあうのか分からない。
だが試合自体は興味があるせいか観客席に移動していた。
「有名なんだな………」
「まぁな」
マオがそれを見て零した言葉にテブリスは頷く。
テブリスからすれば王都でも最強クラスのパーティの一人だ。
有名で当然だった。
「あれが………あれ?」
「どうした?」
「あいつ見たことがあるような?」
「あいつ……!」
そしてコロシアムの試合場に入ったマオを見て驚く者が数名いた。
その数名は思い出そうとする者と睨む者ばかりだ。
「知り合いか?」
「さぁ?」
マオの噂を聞いてパーティに勧誘しようとした者、それについて行った者、そしてマオに勝負を挑んだ者たちだ。
勧誘しようとした者と勝負を挑んだ者はマオを睨み、ただ勧誘する際について行っただけの者は記憶になる思い出そうとしている。
ちなみにマオは睨んでいる相手のことは覚えていない。
街にいた頃に挑戦して来た者の数は多く、一人一人覚えきれなかった。
それに一戦だけして次は来ない者がほとんどだから記憶に残らない。
「テブリス、勝ってくれ!!」
「俺らの武器を奪われて売られた恨みを晴らしてくれー!!」
「折角のお気に入りの武器だったのに買い戻すのにどれだけの費用が掛かったと思うのよ!!」
聞こえてきた声にマオは記憶には無いが会ったことがあるのだと理解する。
挑んできた相手の武器などを迷惑料と挑戦料として売ったのは覚えている。
「そういえば、そういう話も聞いたことがあったな。………マジなのか?」
「急にダンジョンで襲い掛かってくるほうが悪い。殺してないだけ感謝して欲しい」
不満そうに文句を言うマオにそれが事実なのだろうとテブリスも予想する。
そうだとしたら確かに殺してないだけ感謝をするべきなのかもしれない。
そもそも文句を言うのなら襲うなとテブリスも納得を示す。
「そうか………」
だがマオの言っていることは事実確認はするべきだろうと考えてはいた。
そしてマオの言葉通りなら、このまま一緒にダンジョンに挑むつもりだ。
だが嘘を言っていた場合、パーティを組む自分達が危険だと判断し誘っておいて悪いが街に戻ってもらうと考える。
その結果、相手にどう思われようと優先すべきは自分達のパーティであるため後悔はなかった。




