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弱点を探す①

「それじゃあ皆、集まったわね」


 キリカの問いかけに集まった全員が頷く。

 全員が冒険者であり、当然のようにカイルもそこにいた。

 逆にこの場にいないのはマオだけだった。

 それも当然だろう。


「私達全員でマオの弱点を探すわよ!」


「「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」


 この場にいる全員はマオの弱点を探るために集まったのだから。

「それでどうやってマオの弱点を探るんだ?正直、遠くから観察しても直ぐにバレる気がするんだが?」


「遠くから観察するのは決まった者にするわよ。そうじゃないと大勢に探られていることがバレるわ。固定だと参考にするためにと言えば誤魔化せると思うわ」


「…………まぁ、決まった者だけなら誤魔化せるか」


 キリカの意見に納得する集まった者たち。

 次はだれが観察することにするか決めようと考える。


「じゃあ観察する奴はマオと同じように拳で戦う者にしない?」


「それなら確かに信憑性も出て来るな。拳で戦う奴はどのくらいいるんだ?」


 その質問に手を挙げたのは一人しかいなかった。

 普通は武器を持って戦うから少ないのは納得だが、それでも観察をするのに一人なのはダメだと思う。

 最低でも二人は欲しい。

 他に一緒に観察したい者はいないか確認する。


「なら私が一緒に観察します。私なら遠くから観察することが出来る魔法も使えますし、バレてもそれが使えるから協力を頼まれたと言えます」


「わかった。じゃあ二人に頼む」


 最初に手を上げてアピールしてきた者に頼むことにする。

 自分からアピールするのだ。

 それだけやる気があるのだと期待すらしてしまう。


「あとはマオにパーティを組むことを頼んで近くで観察する者も必要だな………。マオのことだから断るかもしれないが、それでもパーティを組むのを頼まないというのはあり得ないしな」


「そうね………」


 正直に言ってマオがパーティを組まないことが弱点を探りづらくなっている。

 だが、だからこそやりがいがあった。


「まぁ、だからこそやりがいがあるんだけどね………!」


「全くだ……!」


 マオの弱点を探すのが難しいからこそ、やりがいがあると考えている二人。

 その言葉に集まった者たちも同意するように頷く。

 マオは強い。

 だからこそ皆は挑み勝ちたいと思ってしまう。

 冒険者にとってマオは挑みがいのある相手だった。


「言っておくけど、分かった弱点は皆に情報は共有しなさいよ?」


「お前こそ。マオの恋人だからって隠すなよ」


「恋人って………」


 互いに釘を刺そうとするが恋人という言葉に顔を赤くするキリカ。


「あとは奇襲の禁止だな………。前はお前のデート中に奇襲をして殺された奴もいたよな?」


「まぁ………」


 更に続けられた言葉に顔を赤くして頷くキリカ。

 キリカは殺したことに関しては何とも思わない。

 何故なら先に殺しに来たのは相手だ。

 それに自分とのデートを邪魔されたから殺してしまうほどにムカついたことが嬉しかった。


「嬉しそうだな……」


 男はキリカが顔を赤くしたのを見て呆れる。

 人が目の前で殺されたのに、それよりもマオの行動に顔を赤くするところは狂っていると思っていた。


「それにしてもキリカも挑むのか?」


 この集まりにいるがキリカは一番マオに危害を与えられない存在だ。

 それなのに何で一緒に挑むのか疑問だ。


「当然でしょ。少しでもマオに近づくには実際に戦って経験を積んだ方が良いのだから」


 キリカはマオの恋人なのだから正直に言ってマオが危害を加えられない様に邪魔をするために来た可能性も捨てられない。

 前にはデートの邪魔をされていた。

 だから、それを防ぐために来たのだと考えてしまう。。


「それに私だってマオに挑戦したい気持ちもあるわよ。まぁ、他に不満をぶつけるのに丁度良い機会だしね」


 キリカの言葉にどういうことだと首を傾げてしまう。

 傍目からみて仲が良いように見えたが気のせいだったかと思ってしまう。

 何がそんなに不満なのか疑問だ。


「気付いたら崇拝者がいるし………。その中に女の子もいると聞いて私が何を思ったのか理解していないのよ!!」


 そういえば、この集まりの中にはマオに崇拝している者もいた。

 崇拝している理由はマオが強いから。

 そんな理由とはいえ崇拝しているのに何でマオの弱点を探る、この集まりに来ているのか理解できない。


「しかも崇拝者たちの中には恋人がいようが本気で奪おうとしている女も男もいるし……!!」


「へぇ……?え……?男も?」


「男も女もよ!」


 男に惚れられていると聞いてマオに同情してしまう。

 別に同性愛なんて好きにすれば良いと思うが、それとは別に恋人がいるのに、それを奪おうとするのは話を聞くだけで拒否感が湧いてしまう。

 そんな奴がいるのにマオの弱点を探るために集まったことに少し後悔をしてしまった。

 しかも男にも惚れられるなんて女よりも警戒しにくい。

 同性だから近づかれても、ふざけているだけだと考えてしまう。


「マオは私のなのに……!!」


 マオの不満よりも崇拝者たちの方へとキリカは怒りを向けている。

 崇拝者たちへマオへの不満もぶつけていた。

 キリカはマオの弱点を探るよりもキリカが他の相手に闇討ちをしないか不安になってくる。

 弟であるカイルに一緒に行動してもらってキリカが集まった皆に危害を加えない様に監視してもらおうと考えていた。




「はぁ………」


「何よ?」


 カイルはキリカと一緒に行動することになってため息を吐く。

 姉弟だからこそ一緒に行動されることには不満が出る。

 偶になら何とも思わないが、常に一緒にいるのはしまいだからこそ嫌だった。


「俺がお前とパーティを組むのはキリカが集まった皆を闇討ちしない様に監視してくれと言われたからなんだが?」


 カイルの言葉にキリカは目を見開く。

 その手があったかと思っていた。


「そうね。マオに近づけない様に後ろから撃てば良いじゃない……!!」


「………やべっ」


 カイルは余計なことを言ってしまったかと後悔する。

 キリカは後ろから撃つなんてことは頭の中にも無かったのに、カイルが口に出してしまったせいで手段の一つとして考えれるようになってしまう。

 頼まれたように後ろから撃たなように警戒しなくてはいけなくなった。


「なぁ」


「今度は何よ?」


「マオも相手が攻撃してから危害を加えているし、何もしない方が良いと思うんだけど……」


「だから?」


 カイルはキリカが後ろから攻撃しないように説得することにする。

 それが成功すれば監視する必要もなく、それでも念のため一緒に行動することになっても安心できる。


「だからって………」


「他人のモノに手を出した方が悪い。それに私は友人も何もかも奪われてもマオだけは絶対に奪われたく無い」


 そういったキリカの眼は奪った者は確実に殺してやるという意思に輝いている。

 もしマオが別の女を好きになったら殺しに向かうだろう。

 できればマオにはずっとキリカのことが好きでいて欲しいとカイルは祈る。


「それに向こうから手を出して奪われるくらいなら先に殺した方が安心できるわ」


「…………」


 もう本当に互いに呪いを掛けて互いのことしか好きにならないようにしてほしいとカイルは考える。

 そうすれば安心できるはずだ。


「カイル……。呆れているみたいだけど、マオは男も女も崇拝者がいて性的にも狙われているからね?いくら私たちが好き合っていても無理矢理ってこともあるんだから警戒するに越したことは無いわよ」


 そしてキリカは逆にカイルへと説得をする。

 マオなら大丈夫かもしれないが、それでも同性にまで性的に襲われるのは精神的に疲れるはずだ。

 その精神的疲労のせいで出来た隙に襲われる可能性があると告げるとカイルは死んだ目になる。

 性的に狙っているのなら、どんな手も使ってきそうだと考えたせいだ。


「そうか………」


 もうカイルは何も考えたくなかった。

 だがマオの弱点を探るために、マオとパーティを組む必要があった。

 二人がパーティを組むのに選ばれたのは一番親しく、パーティを組むのに最も拒否されない二人だからだった。


「来た」


 その言葉にギルドの扉を見るとマオが入ってきた。

 早速キリカとカイルはマオの前へと移動する。

 パーティを組んでもらうためだ。


「マオ」


「…………うん?」


 キリカがマオへと声を掛けるが、聞こえていないのかマオは周りに視線を向ける。

 その視線の先はマオの弱点を探ろうと集まった者たち。

 そのことに全員が背筋を冷やす。


「まぁ、良いや。それよりも何?」


「一緒にパーティを組もうかと思って………。どう?」


「わかった」


 あっさりと受け入れるマオ。

 否定するかと思ったのに予想外の反応にギルドの皆は驚いてしまう。


「好きなだけ観察したら?」


「うえっ!?」


 そして続けられた言葉に皆が冷や汗を流す。

 もしかしたら弱点を探しているのをバレているかと考えると、もしかしたら皆が集まっているときも隠れて見られていたんじゃないかと思えてしまう。


「一か月間だけ時間のある限りパーティを組んでやるし、遠くから見られても我慢はしてやる。パーティを組むのは先着順だし、依頼の報酬も七割は俺が貰うけど」


 それで良いのならパーティを組んでやると言うマオ。

 報酬の半分以上を持っていくことには強欲にも思えるが、ずっと見られて生活をすることになるのならしょうがないのかもしれないと考え直す。

 少なくともギルドにいる皆は一ヶ月ずっと見られるのは嫌だった。

 

「わかった。私はそれで良いわ。カイルは?」


「そうだな………。俺もそれで良いよ」


 カイルとキリカはマオの条件に同意し、他の者たちも頷く。

 マオの受ける状況を考えれば、それでも欲が薄いんじゃないかと考える者さえいた。


「あっ、そうだ。お前らには悪いけど偶には街の依頼も受けるから。その時でも奇襲して、俺の機嫌が悪かったら殺すから気を付けろよ」


「「「「「「……………わかってる」」」」」」


 思わず真顔になるギルドにいる者たち。

 実際にデート中に奇襲を仕掛けたせいで殺された者もいる。

 マオの弱点を探ろうとしてはいても殺されたくはなかった。


「なら良いけど。キリカにカイル。どのモンスターの討伐依頼を受けるんだ?」


 ギルドの皆もわかっているという言葉に満足してマオはキリカとカイルの二入に依頼について確認する。

 どんなモンスターを相手にするのかは確認したかった。

 その上で戦ってみて勝てない相手だったら逃げれば良いと考えていた。


「はぁ……」


 マオはそれにしてもとため息を吐く。

 今から最低でも一か月間は見られることになると考えると憂鬱だった。

 一ヶ月と期間を設けたが、それ以上に観察していたら、観察していた者を攻撃しようと考えていた。


「どうしたのよ?」


「別に。それよりも受ける依頼は?」


「これとかどう?」


 そう言って見せたのはモンスターの中でも特に硬いゴーレムの依頼。

 たしかに硬いがマオからすれば一撃で壊せる自信がある。

 そのことはキリカもカイルも知っている筈なのに、なぜこの依頼を受けたのか疑問だ。


「まぁ、良いけど………」


 だが二人がそれを選んだのなら、それで良いやとマオは思う。

 二人の好きな依頼を受ければ良いと考えていた。


「じゃあ決定ね。それじゃあ早速今から行くわよ」


「わかった」


 キリカはギルドにいた者たちにウインクを送る。

 遠くから観察することにした者たちは、それに頷いて準備をする。

 マオはキリカが視線を向けた先に頷いた者たちを確認していた。


「………あ」


「マオ?」


「悪い。もともと街の依頼を受けるつもりだったから何も準備していないや。ちょっと待っててくれないか?」


「わかった。依頼はこちらで受けておく」


 マオは誰が見ているのか覚えてから依頼に行こうとして声を上げてしまう。

 モンスターに挑むための準備をしていないせいだ。

 それを聞いたカイルは依頼の手続きはこちらでするから先に準備して来いと送り出す。

 そしてマオがギルドから見えなくなったのを確認して全員を集める。


「あいつ、誰が観察するのか確認してなかったか?」


「え?」


「たしかに………」


 カイルの言葉に気付いた者と気付かなった者に別れる。

 だが共通してマオに対して怯えていた。


「とりあえず今回に限っては、奇襲でもしない限り大丈夫だろ」


「そうね………。腕試しをしたいなら事前に頼んでからにした方が良いわよね」


 じゃないと殺されるかもしれないという不安には皆が頷く。

 そして同時に事前に頼めば挑戦を受け入れてくれるかもしれないという言葉に集まった何人かは期待に目を輝かせる。

 挑戦したいとは思っていたが、殺されてしまうと考えると二の足を踏んでいた。

 だが頼めば大丈夫かもしれないと聞いて今からでも挑もうかと笑みすら浮かべている者もいた。

 いくら挑み甲斐があっても殺されたら終わりだ。

 だから生き残るためにマオの弱点を探ろうとしていた。

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