薬と病気②
「おっ、二人も来たか」
マオとキリカが街の外に出ると先にカイルが先に街の外にいた。
そして二人を見つけるとようやく来たのかと声を掛けてくる。
「時間には間に合っているから問題は無いでしょ。それよりも忘れ物はしてないでしょうね」
「当然だろ」
キリカとカイルは互いに言い合いながら確認している。
どちらも問題は無いようだ。
「それでデートはどうだった?」
そして顔を寄せ合ってカイルはキリカにからかうように質問をした。
「なっ!?」
カイルの疑問にマオはやはり狙って二人きりにしたんだと確信する。
もともと予想はしていたが、ありがたくも余計なお世話に思えてしまう。
人のことよりも自分の恋愛を心配すべきだろうとキリカは考えていた。
「あんたねぇ……」
正直に言えば、二人きりで行動できたのは嬉しかった。
だけど今じゃなくても良かった。
出来れば互いにオフの日とか。
そうすれば、もっと一緒にいれた。
「正直に言えば二人きりでいれたのは嬉しかったけど、色々と縛りがあったから心の底からは楽しめなかったわよ。やはり二人きりでいるときは互いにオフの日が良いわ」
「そうか……」
折角の気づかいだったが効果は薄かったとしてカイルは残念そうだ。
たしかに、たった一時間の時間制限だと時間も気にして楽しめなかったのだろう。
「今度から似たようなことがあったら、私達に関しては二人きりにしなくて良いからね?」
キリカの言葉にカイルも頷いた。
その言葉通りに今度からはオフの日にだけに二人きりにしようと思っていた。
「いい加減にいくぞー」
マオはカイルとキリカが顔を寄せ合って話しているのを見ていて、マオは声を掛ける。
二人の会話の内容は聞いていないが、結構な時間を使って話している。
そろそろ終わらせて目的の場所へと行きたかった。
「えっ。あっ、ごめん」
「悪い今すぐに行く!」
マオの声に反応して振り向くと少し離れた所にマオはいた。
距離が離れていることに会話に集中し過ぎたかと反省する。
二人は駆け足でマオの元へと急ぐ。
「私も悪かったけど、少しは待ちなさい!?」
「ほんとだよ!距離が開く前に声を掛けてくれよ!」
二人はマオのもとに駆け寄ると一番に文句を言う。
気付かなかったら一人で自分達を置いていくつもりだと考えたせいだ。
マオから誘ってきてパーティを組んだのだから、もう少し自分達を大事にしてほしいと考える。
「距離を開けてから声を掛けた方が当初の目的を思い出せると思ったからな。実際に距離が離れていることを認識してからお話より目的のことを思い出しただろ?」
「「うぐ……」」
二人はそれを言われると何も言えなくなる。
たしかに当初の目的よりも話に集中していたのは二人だ。
だけど、他にやり方は無かったのかと思う。
置いて行かれるのかと思うと、かなり心臓に悪い。
「文句がそれだけなら、さっさと行くぞ」
時間が惜しいと歩いていくマオ。
二人もマオの後ろについて歩いて行った。
「そういえばマオって解毒剤を作れないのか?」
「無理だな」
カイルは歩いている途中、マオに解毒剤を作れないのかと質問する。
手先が器用だし作れれば、その分の金額も節約できると思っての疑問だ。
「マオは魔力回復薬しか作れないらしいわよ。作り方に興味が無いから調べてないんだって」
「調べて無いから作れないのか……」
理由を答えたのがマオでなくキリカだが、その理由を聞いて微妙な表情を浮かべる。
その面倒なことを我慢すれば、お金が浮くのに勿体ないと思う。
「調べて作った方がお金も節約できると思うんだが……」
「解毒に関しては最悪魔法を使えば良いだろ?その薬も俺専用だから他人に効果があるかは分からないけど」
それはたしかにそうだとカイルも納得する。
最悪は魔法を使えば回復できる。
だからキリカもカイルも他の薬は作らないのかと想像した。
「あとキリカにはいったけど、俺以外には飲ませられないからな?」
「何でだよ」
「俺専用だから副作用が出る可能性が高い。他の者にも飲めるように考えて作ったわけじゃないし」
マオ以外には毒なのだとカイルは理解する。
自分以外の誰かが薬を飲むことは考えずに作ったせいだとカイルは予想する。
その代わりマオが服用した際は効果が高そうだと考えていた。
「マオが服用した場合、どれだけ回復できるんだ?」
「六割ぐらい?」
マオの言葉にキリカはマジかと視線を向ける。
カイルもマオに引いた視線を向けた。
普通は魔力を回復しても一割から二割ぐらいだ。
それを六割も何て信じられない。
普通では考えられない材料を使っているんじゃないかと想像してしまう。
「それって本当に普通の魔力回復薬を調べて作ったのか?」
「当り前だろ。………ちょっと手を加えまくった結果、かなり回復するようになっただけで。それに超過した分の魔力は溢れて直ぐに使わないと爆発したりと悪影響を与えてしまうけど……」
爆発とか悪影響と聞いて視線を向ける二人。
効果はかなり高いが、かなり危険だと認識を強くする。
少なくとも、本当に危険な時以外自分たちの目の前では使ってほしくない。
今度からはマオが自分の作った薬を飲む前に自分達で用意した者を服用してもらおうと考える。
回復する間でさえ、ハラハラドキドキしたくなかった。
「お前、絶対に使うなよ」
「嫌だ」
カイルの服用するなという言葉にマオは即拒否をする。
六割も回復するのだ。
かなり有用な薬だから使わないのは勿体ないと考えていた。
「お前が爆発するところとか見たくないんだが?」
「安心しろ。ちゃんと気を付けて服用すれば問題ない。それに六割も回復するんだから、それぐらいの副作用があっても、おかしくないだろ?」
「いや、そもそも副作用がある方が危険だと思うんだが?」
「どの薬にも副作用ぐらいはある。使い方さえ間違わなければ良いんだって」
マオの言っていることは分かるが、心配しているのを理解して欲しかった。
何でそれを理解しようとしてくれないのか不満を抱く。
「そういえば思ったんだけど、お前らってどんな風にパーティを組んでいるんだ?」
「どういうことだ?」
途中、マオが二人に質問するが意味が分からずに二人はマオへと視線を向ける。
「お前らってパーティを奪われたりと有名だろ?それなのに何で何度もパーティを組めるのか謎なんだが?普通は距離を置かれると思うんだが……」
「………勇者だからじゃない?」
「勇者だからってパーティを組むか?」
「…………」
マオの疑問に二人は答えることが出来なかった。
確かに何度もパーティを解散しては組んでいる。
いくら自分達が勇者でも噂になっていてもおかしくない。
何で組むことが出来るのがマオたちも疑問に思う。
「もしかして噂にはなっているけど相手が誰なのか伝わっていないとか?」
「有り得そうだな……。後は自分達なら大丈夫だと慢心したりしていた結果とかか?」
三人して考え込む。
ある意味、二人が裏切れられる原因を知るより難しい。
「あっ、そうだった!?」
そんな時にキリカはマオを指差す。
その視線は怒りに満ちており、急になんなんだと疑問に思う。
「こいつ、私に対して軽薄な男でもパーティを組んだら裏切られるって言ったのよ!」
「言いたくないけどキリカも女だし身体狙いの目的を達成したら捨てられるんじゃないか?」
「…………それもそうね」
「ちなみにカイルも同じ相手でも裏切りそうだと俺は思っている」
「へぇ?」
キリカはカイルの言葉に納得し、カイルはマオの言葉に眼を細める。
軽薄な男らしいし、相手の誘いを蹴ったりしての結果になるだろうと予想する。
この場合の誘いは女性を襲ったりすることだ。
むしろカイルは邪魔をするだろうな、と考える。
「そいつらって軽薄な男って言っていたけど、女を無理矢理襲ったりしそう?」
「そういえば………」
確認したらキリカに肯定され、むしろ一緒に行動すると思われていた方がカイルとしては不満だった。
「偶にだけど言葉を抜けていることが多いよなお前」
今回もそうだ。
無理矢理襲いそうな奴らだと言えば怒りを抱かれなかっただろうにと考えてしまう。
「そうか?」
「そうだって!」
マオの疑問に二人は頷く。
それでマオに対して不快に思ったのだ。
理解して欲しい。
「それで話を戻すが、どういう風にパーティを組んでいるんだ?」
それなのに話を流して、元の会話に戻す。
キリカの不満から逸れていた話がもとに戻っていく。
「………私から勇者って紹介されたり、向こうから勇者と知って近づいてくれたりと色々よ」
「俺もそうだぞ」
キリカの答えにマオはカイルにも視線を向けるが、同じだと答えられる。
普通にパーティを組めることに呪いの内容に含まれているのかと想像してしまう。
何故なら裏切られるということは前提として仲間がいなくてはならないからだ。
「あぁ、裏切られるために仲間は絶対に組めるようになっているんだろ。………頑張れ」
マオの言葉に死んだ目になる。
確かにパーティを組むたびに二人は裏切られている。
それを防ぐ最大の手段はパーティを組まずにソロで挑むことだ。
それなのに懲りずにパーティを二人は組んでいた。
マオに指摘されて、ようやくそのことに気付く。
「気付かなかった………」
「私もよ………」
マオは二人の言葉を聞いて顔を引き攣らせる。
前世でどれだけ罪をおかしたのか疑問を抱く。
そうでなかったら、どれだけ恨まれているんだと思う。
「……………」
だがマオから見て、二人はそんなに恨まれてしまうような者には見えない。
あるとしたら実力差から生まれる逆恨みぐらい。
思わず同情の視線を向けてしまう。
「なによ?」
「お前らって前世でどれだけの罪をおかしたんだ?裏切らせるために仲間も作らせるって業が深い」
「止めろ……」
実際に口にされると、かなりキツイのか膝から崩れ落ちる二人。
それは自分達も知りたいと思っていた。
「後はどれだけ恨まれているのかも疑問だな……」
続けられた言葉にもう止めて……、と呟き始める。
これ以上は呪われていることを考えたくなかったし、恨まれているなんて考えたくもない。
「………恨みって?」
だが呪いの他に恨まれている可能性があると聞いて興味を抱いてしまう。
どういうことだと確認をしたくなる。
「お前らを裏切った奴らが、そこから辛い目に遭って逆恨みをしてきたり、優秀だからこそ嫉妬をしてきたりって有りそうだろう?」
「「…………」」
二人は心当たりがあるのか黙り込んでしまう。
たしかに学生時代は仲が良い友人だけでなく、こちらに敵意を持ってくる者もいた。
それを思い出すと決して否定できない。
「何だ?心当たりがあるんだ?」
「………いや。それでも私たちの先生はシスターだから嫌っていても、そんなことはしないはず」
「………そうだよな。やるはずが無いよな」
二人の言葉にマオは更に疑問をぶつけようとする。
それで考えがあっていたら信じるつもりだ。
「お前らって教会にいた頃、固定のパーティを組んでいたか?」
「………私たちはどんな相手でどんな時でも一緒に戦えるようになるために固定のパーティを組んだことは無かったわ」
キリカは何で、そんなことを質問するのかとマオの疑問に答えるが、本人は納得したように頷いていた。
だから教会に鍛えられていた時はパーティを組んでも裏切られなかったのだと。
「もしかして固定のパーティを組んでいなかったから教会にいた頃は裏切られなかったと思っているのか?」
「まぁ、そうだな」
マオの肯定に二人は何も言えなくなる。
否定できなかった。
そして同時にだからこそ、これまで教会にいた頃には気づかなったのだと理解できてしまっていた。
「まぁ、それしかないか……」
「だから裏切られなかったって言われると納得しかないしね……」
二人は教会にいたころにに裏切られなかったことに少しだけ残念に思う。
もしかしたら、そのころに裏切られていたら、もっと早く問題に気付けていたのかもしれない。
「まぁ、でも相手も勇者だしもしかしたら固定のパーティを組んでいても裏切るとは限らないか」
「そんなものか………?」
「まぁ、それはお前らでパーティを組んでからの結果だけど」
「同じ呪い同士で相殺している可能性もあるわよ………」
「………そうだな」
マオは二人に対して同情の視線を向ける。
自分だったら同じことを繰り返してしまったらパーティを組めなくなる。
それだけ心が強いのかもしれないが、だからこそ何度も裏切られるのを経験することになり不幸だと思っていた。




