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薬と病気①

「さてと、どの依頼を受けるかな」


 マオはギルドの依頼を見て悩む。

 討伐の者もあれば採取の者もある。

 そして何故か病気の治療まであった。


「病気の治療は医者にいけよ………」


 マオはそれを見てため息を吐く。

 冒険者より医者に見せた方が確実だ。

 少しぐらい高くても専門に見せた方が良いと考えている。


「医者に診せるときの金額よりも低いし金が無いのか、それともケチっているのか……」


 前者ならまだ理解は出来る。

 病気に関して知識がある者もいるかもしれないから、それに賭けているのだろう。

 それに偶に医者が原料を採取するために冒険者として活躍している者もいる。

 だが金額が低くて受ける者はいないだろう。

 依頼を受けるよりも病院で診た方が稼げる。

 だが、医者の見習いなら経験として受ける者もいるかもしれない。

 そこに賭けているのかも


 だが後者はダメだろうと思っている。

 金があるのなら多少高くても金を払って診てもらった方が遥かに安全だ。


「マオ?」


「よう。一緒に依頼を受けないか?」


 ギルドの依頼を眺めているとキリカとカイルが声を掛けてくる。

 どちらも一人でおり、もしかして二人ともパーティが解散しているのかと想像してしまう。


「何だ。お前ら二人揃ってパーティが解散しているのか?」


「ぐっ」


「………それは」


 マオの言葉に二人とも顔を逸らしながら答える。

 マオはそれに対して相変わらずだと呆れてしまっていた。


「まぁ、良いけど」


 マオが自分達とパーティを組んでくれることに二人はホッと息を吐く。

 ソロでいたいからと断られる可能性もあったから、安心していた。


「どの依頼を受けるつもりだったの……」


「まだ考え中」


 マオの眺めている依頼を見ると、ほとんどが怪我や病気に関する依頼だった。

 たしかに受けるべき依頼だと二人は思い、積極的に受けようと考える。


「どれも必要な受けるべき依頼だと思うけど、何に悩んでいるのかしら」


「どれもこれも受けれないから、何を受けるべきかなって……」


「………どれでも良いの?」


「まぁ……」


 キリカの確認にマオは頷く。

 マオとしてはどの依頼を受けることになっても問題は無かった。

 キリカやマオが受けたい依頼があるなら、それでも良かった。

 今、眺めている依頼じゃなくてもキリカやカイルが選んできた依頼でも構わなかった。


「ふぅん。それじゃあ、この依頼を受けないか?」


 差し出されたのは病気の治療に使う薬の原料の採取。

 採取する際に行く必要のある場所は毒に溢れている場所だ。

 毒で動けなくならない様に対策しないといけない。


「別に良いけど毒が溢れているから対策しろよ。でないと直ぐに動けなくなって死ぬぞ」


「わかっているわよ」


「お前こそ」


 マオの言葉に二人は真剣な表情で頷く。

 毒で動けないところをモンスターに殺されるなんて二人も嫌だった。

 マオの忠告もあって、いつも以上に毒に対する対策を取ろうと考える。


「それじゃあ一時間後に街の外で集合な」


「え……」


 マオの言葉にキリカは驚いた声を上げた。

 一時間後というのは毒に対する準備も含まれているのだと想像できる。

 どうせなら一緒に準備をしたいとキリカは考えていた。


「どうした?」


「一時間ってどうせ解毒剤とかの準備でしょ?それなら一緒に準備しても良いじゃない?」


「…………」


 マオはキリカの言葉にそれもそうかと頷く。

 待ち合わせをするより一緒に行動した方が待つことも待たせることも無い。

 キリカの反論に従おうかと考える。


「そうだな。それじゃあ三人で行こうか」


「「え」」


「え?」


 キリカの反論に従おうかと考えて口に出したら、今度はキリカとカイルの二人が驚いた声を上げた。

 キリカの意見に従っているのに、何で驚かれたのかマオは不思議に思う。


「いや………。悪いけど俺は一時間後の待ち合わせに集合させてもらう」


 それだけを言ってカイルはキリカとマオの前から走り去る。

 まるで逃げるかのように走り去った姿にマオはキリカを見てしまう。


「何?」


 ニッコリとした笑顔を向けられながら、マオはもしかしてキリカが無言で追い払ったのかと考えていた。

 色々と準備をする必要があるから一時間なんてあっという間に終わるのに無駄なことだとマオは思う。

 だけどカイルには悪いが、それでも少しでも二人きりになろうとしてくれているのは嬉しくなる。

 少しの間とはいえ、デート気分で楽しみながら解毒剤などを購入していこうと考えていた。



「ふふっ」


 そしてキリカは少しの間とはいえ二人きりでいることに笑みを零す。

 買うものは解毒剤などとはいえ、一緒に買い物に行くからデート気分だった。

 これで今日は絶好調で行動できるとキリカは思う。


「毒が溢れているということは解毒剤も購入するのよね?」


「まぁ、そうだな。……そう言えば魔法でも回復することが出来るか?」


「私もカイルも出来るわよ。解毒剤を購入するのは魔法の他にも解毒する方法を用意するためなんでしょう?」


「そういうこと。というより基本的に解毒剤を使うから。魔法で回復するのは解毒剤も無くなって最終手段」


 魔力の無駄遣いしないために解毒剤を使うのだろうとキリカは想像する。

 魔法は使えるのなら便利な力だ。

 魔力さえあれば万能と言って良い。

 だが逆に言えば魔力がなければ何も出来ない。

 何時でも使えるように少しでも魔力を節約する必要があった。



「それにしても魔力回復薬って高すぎない?」


「飲むだけで効果が得られるから当然だろ?」


 解毒剤を購入して魔力を回復する薬の値段を見るが相変わらず値段が高い。

 他の薬より数倍の金額だ。


「だからって……。安くした方がたくさん売れると私は思うんだけど……」


「むしろ安すぎて赤字になるんじゃないか?作れる者も数少ないだろうし」


 まぁ、そんなところだろうとキリカも思う。

 だけどもう少し安くしてほしいと思うのも本気だった。


「作れる者は数少ないというけどマオは無理なの?」


「無理だな。薬だから免許も必要だし、何よりも色々と難しい。作ったとしても絶対に他人には飲ませられないし、自分一人専用だな」


「作り方を知っているの!?」


「調べれば良いだろ?」


「それはそうだけど……」


 薬の作り方は調べれば良いと言われて、それで作れるのかとキリカは疑問に思う。

 だがそれを言ったのはマオだ。

 マオなら出来るとキリカは考えてしまっていた。


「ところで味は……?」


 魔力回復薬の味は全てが不味い。

 マオなら、なんとかできそうだと思っての発言だった。


「くそ不味い。ぶっちゃけ売られている薬の方がまだ味は良い。多分、あれでも気を遣っているんだろうなと想像できてしまう」


「マジ?」


「マジ。まぁ、食べさせる気は無いから証拠は無いけどマジで不味い」


 味を思い出したのか吐きそうな表情になるマオ。

 そんな薬はキリカも使いたくないと思う。


「何度も言うけど、どれだけ危険な状況でも薬は飲ませないからな?俺以外が飲んだら、どんな影響があるか分からないし……」


 どこまで素人でしかないマオが作った薬だ。

 自分が飲む分には良いが、他人には絶対に飲ませられない。

 飲んだ場合の責任何て取れない。


「貴方は大丈夫なの?」


「今のところは何も問題は無いな」


 今のところ何も問題は無いと聞いてキリカは安心する。

 もし何か異常があったら病院に連れて行かなくてはならない。

 正直に言ってキリカはマオが作った回復薬について不安になってきた。

 もう作るのは止めて売られている薬を使って欲しくなる。

 気付いたら死んでいたのは想像するだけで嫌だった。


「もう薬を作って摂取するのは止めたら、どう?」


「効果はあるからヤダ」


 マオには効果があっても、やはりキリカとしては心配になってしまう。

 いつか効果が発揮できず、逆に悪影響を与えてしまいそうで不安になる。


「なら私も緊急時には使わせて」


「俺以外の奴が服用したら死ぬと思うよ?」


 更に不安になることを言うマオ。

 キリカはそのことに対して冷たい目を向け始める。

 そんな危険な薬をなんで服用するのか意味が分からなかった。


「何でそんな薬を服用しようとしているのよ……」


「俺にはちゃんと効果があると分かっているからだけど?」


 もう、その薬と一緒に病院へと連れて行って止めさせるべきじゃないかと考えていた。



「それでマオって、どれだけの薬を作れるの?」


「俺が作れるのは魔力回復薬だけで、他は作れないが?」


 魔力回復薬を作れるのだから他の薬も作れるだろうと思っての確認だが、マオは魔力回復薬しか作れないと否定する。


「そうなの!?」


「何で、そこまで驚く」


 魔力回復薬しか作れないと聞いてキリカは非常に驚く。

 マオのことだから他のくするも作れると思っていたせいだ。


「だって魔力回復薬を作れるんでしょ?」


「確かに作れはするけど、それは興味があったからだ。他の薬は作り方も調べてないから無理だ。それに他の薬の作り方まで興味は持てない」


 興味が持てないから調べないというマオにキリカは呆れた視線を向ける。

 魔力回復薬を作れるなら、他の薬も作れるはずだ。

 そして魔力回復薬は作れる者が少ないのなら、それほど作るのが難しい薬だ。

 他の薬も容易に作れるだろうと思う。


「もう薬剤師になったら?」


「無理」


 キリカの言葉に即否定するマオ。

 あまりにも否定のスピードが速すぎて何が嫌なのか想像させられてしまう。


「なんでよ?」


「薬を作る仕事なんて俺には荷が重い。どうせ引退してからも仕事をするなら他の仕事の方が良い」


 引退した後の仕事にも薬剤師としての道を選ぶ気はないらしいマオ。

 薬を作るというのはそんなに辛いのかと思ってしまう。


「そんなに薬を作るのは辛いの?」


「薬剤師の仕事を見ていればわかる………」


 マオの言葉にどういうことかと首を傾げるキリカ。


「薬が高いと不満を言われるわ、待ち時間が長いと言われるわ、同じ薬なのに他者と金額が高いと言われるわ、他に薬を併用していないと言ったのに本当は併用しているわ、それで悪影響が出たのに文句を言われるわ、あと「ごめんなさい」……そう」


 マオの言葉に何でそんなに詳しいんだとキリカは思う。

 本当は薬局で働いた経験があると言われても納得してしまいそうだ。


「何で、そんなに詳しいのよ………」


「見たことがあるだけだ」


 見たことがあると言われてもキリカは納得が出来ない。

 もし本当だったとしても、どれだけ薬局に赴いているんだと思う。

 本当は薬でも卸しているんじゃないかと想像する。


「はぁ………」


 だが、どれだけ疑問に思い問い質そうとしても話をはぐらかせられるのが想像出来てしまう。

 それに時間も近づいてきて集合しなければならない。

 答えを求めるのも諦めるしかなかった。


「それじゃあ時間だし集合するか……」


「わかっているわよ」


 それを認識していたのはマオも同じだ。

 マオの方から先に集合しようと声を掛けてくる。

 それに頷きキリカもマオの後ろを付いて行き、途中から手を繋いで歩く。


 その光景に微笑ましく見ている者もいれば、嫉妬の視線を向けている者もいる。

 特にマオには嫉妬と憎悪の目が向けられていた。

 可愛い女の子と手を繋いで歩いていることに男性たちはそれだけで殺意を向けていた。

 もし危害を加えようとしていたらマオも手痛い反撃に出るだろう。

 それを知っているから睨むだけで終わっている。


「おい」


 だけど知らない者もいる。

 可愛い女の子と手を繋いでいるのが許せなく、自分の方がイケてるだろうと絡みに行く者もいた。


「おい、そんな奴より俺たちとパーティを組もうぜ」


「そうそう。後悔はさせないぜ」


 マオはそいつらを見て、その次にキリカに見て哀れむ。

 本当にパーティを組んだら、こいつらにも裏切られるんだろうなと思ってしまう。


「何かしら?」


「いや、お前こいつらと組んでも裏切られるんだろうなと思って」


 マオの言葉にキリカは苛立ちを覚える。

 そして、こんな奴らにも裏切られるのかと思って悲しくなる。


「あぁ、お前ら何を言っているんだぁ?」


 自分らを無視して会話を続けるキリカとマオ。

 そのことに苛立ちを我慢できず掴もうとしてくる。


「邪魔」


「ぐべっ……」


 だけど触れられる前にマオは拳を腹に叩き込む。


「さてとお前もこんな風になりたい?」


 叩き込まれた相手は白目を向き、泡を吹いている。

 

「ひっ………」


 そして残された者は慌てて後ろに振り返って逃げ始める。


「うわぁ……。仲間を置いて逃げ去りやがったよ……」


 マオはその姿に呆れてため息を吐く。

 仲間だろうに見捨てて逃げるなんて情けなく、多くの者が冷めた目で見ていた。

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