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彼女へのプレゼント②

「今日はよろしくね、マオ」


 約束通りに来たらカイルだけでなくキリカもいることにマオはカイルへと視線を向ける。

 そうすると視線を背けられ、どういうつもりかと更に強く睨む。


「マオ、私もパーティに入れてくれても良いでしょう?足手纏いにはならないわ」


 キリカの言葉にキリカなら確かに大丈夫かもしれないと考えるマオ。

 最低限の実力はあるだろうと考え受け入れた。


「………わかった。それじゃあ三人で……。三人だよな?」


 マオはキリカを受け入れて三人でダンジョンに挑もうとするが、直前で考え直す。

 他にも一緒に挑む奴がいるんじゃないかと想像したせいだ。

 もし、そうなら絶対にダンジョンに挑むのは辞めようと決意する。


「他には連れてきていないし一緒にパーティを組む気も無いから安心してくれ。いやキリカを連れてきて言うことじゃないと思うけど断り切れなかったんだ」


「はぁ……。これ以上、増えないなら別に良いよ。それよりもさっさと挑もう」


 マオももう気にしていないという言葉にカイルは安堵の息を吐く。

 信頼を失ってパーティを組めなくなるのは嫌だった。


(まぁ、姉弟でカイルは下の方だしな……)


 マオは家族関係で弟が姉に勝てるイメージが湧かないから、本当に気にしていなかった。

 姉の我がままに付き合わされて可哀想にしか思っていない。

 どうせキリカが我が儘を言ったのだろうと予想していた。


「さて……と。確認だけどカイルの回収しようとしている物は結構奥の方よね?」


「うん。だから気を引き締めないと……」


 ダンジョンは奥に進めば進むほどモンスターも強くなる。

 だから気を引き締める必要があった。

 ダンジョンの入り口に近いとモンスターは弱く油断しそうになるが気を付けないといけない。


「そういえば……」


「どうしたマオ?」


 気になったことがあるのかマオは二人に視線を向ける。

 それに対してダンジョンはさほど進んでおらず、まだ余裕をもって行動できることで二人はマオの疑問に意識を向ける。


「ここのように破壊しないことに決まったダンジョンって、どれだけあるんだ?」


「さぁ……。キリカは分かる?」


「かなりの数があるとしか知らないわね。ここもそうだし、ダンジョンでしか回収できない貴重な道具とか多いもの」


 想像しているよりも破壊しない様に指定されているダンジョンはかなり多そうだとマオは考える。

 おそらくはデートスポットとしても扱われているダンジョンもあるんだろうなと想像する。


「デートスポットとして扱われるダンジョンもありそうだな……」


「たしかに……。モンスターがいるから危険だけど、ある程度以上の実力者になるとデートに使われそうだな」


 カイルはそう言いながら今、自分のいるダンジョンを見渡す。

 辺り一面が水晶で囲まれており、それらが光に反射して綺麗だった。

 モンスターさえいなければ絶好のデートスポットになるんじゃないかと考えてしまう。


「これでモンスターさえいなかったらね……。まだ、ここにいるモンスターは弱いけど一々相手をしないといけないから気が散って無理ね」


 キリカもモンスターさえいなかったら絶好のデートスポットだと認める。

 だがダンジョンである限りモンスターは襲ってくる。

 今後もデートとしては使われないかもしれないと思っていた。


「それにしても意外とバランスが良いな……」


 マオは自分達の現在のパーティメンバーを見てそう思う。

 それは他の二人も同じだ。


「前衛に俺。中衛にキリカ。後衛にカイル。見事に別れている」


 マオの言葉に確かにと頷く。

 綺麗にパーティの役割が別れている。

 マオもそうだが他の二人も別の役割をこなせるが一番得意な位置で実力を発揮できるのは有難かった。


「本当にね……。といっても、ほとんど貴方がモンスターを倒しているけどね」


「別に良いだろ?前衛としての仕事をしているだけだ」


 マオの言葉も事実だった。

 襲い掛かってくるモンスターを全てキリカやカイルが対処する前に殲滅している。

 何のためにパーティを組んでいるのだろうと二人は思ってしまう。


「私達にも仕事をさせて………」


「奥に近づいたら普通にお前たちも頼るだろうから、それまでは任せて置け」


 マオの言葉にそれなら、と出来るだけ自分を納得させようとする。

 絶対にマオより活躍してやろうと考えていた。




 そうして目当ての物がある階層までたどり着く。

 ようやく自分達も気合がいっぱいだ。


「それじゃあ、ここから手を貸してもらうぞ」


 マオの言葉にカイルたちは頷く。

 ここからはマオでもソロで相手をするのも難しいのだろう。

 そうでなければ頼まないだろうと考えていた。


「「マオ!」」


「「「「「「「キシャ………」」」」」」」


 そして早速とばかりに襲ってくるモンスターたち。

 一番前にいたからかマオに襲い掛かるモンスター。

 それにカイルたちは間に合わないと焦る。

 そして次の瞬間、モンスターたちはズタボロになっていた。


「「は?」」


「弱い」


 カイルたちもマオが襲われた瞬間をしっかり見ていた。

 モンスターの攻撃が当たる瞬間にマオは腕を一度だけ振るい、その衝撃で奇襲をしたモンスターを皆殺しにしたのをあまりにも圧倒的な力の差だった。


「もしかしてマオにとって、このダンジョンは何も障害にならない?」


「否定はしないけど油断するなよ。俺だってお前らを完璧に護れるわけじゃないし。自分達の身は自分で護れないと死ぬぞ?」


「言ってろ!」


「貴方の護りなんて必要ないわ!」


 マオの挑発に護ってもらう必要は無いと言い返す二人。

 そんなこと情けないことをされたくなかった。

 

「ならカイルの欲しいものを探すか……」


 そうして全員が気合を新たに入れなおしてダンジョンに挑み始めた。



「思ったよりも、このダンジョンは厄介ね……」


 キリカの言葉に頷くカイル。

 ここは確かに厄介だ。

 ダンジョン全体が水晶だが、モンスターも水晶に輝いているものが多く紛らわしい。

 何度奇襲を受けそうになったか数えきれないぐらいだ。

 気付かなかった時はマオに教えてもらうことで何とかなっているが、それがなかっただ奇襲を受けていた。

 予想以上に危険なダンジョンだ。


「綺麗だけど危険だな。どこも奥に行くほどダンジョンは危険になっていくけど、ここはその中でも危険度の差が大きすぎる」


 その言葉に二人は深く頷く。

 ここまで、えげつのない差は初めてかもしれない。


「カイルが欲しい物を見つけたら帰還しましょう?もう少しモンスターとただの水晶を見分けられるようにならないと危険だわ」


 今はマオがいるから何とかなっている。

 だが、これは一時的なパーティだ。

 解散した後に自分達のパーティに見分けられる者がいるか確認する必要があった。


「そうだな。でも、その前にどうやってマオは見分けているのか教えてくれないか?」


 見分けられる本人が目の前にいるのだから質問した方が良いと言うカイルにキリカも頷く。

 たしかにコツがあるのなら教えて欲しい。


「………俺はただ単純に目の前のものが生きているか生きていないかでしか判断してないからな。正直、聞かれても教えるのは難しい」


 マオの言葉に感覚的なもので判断しているのだろうと理解する。

 聞かれても教えるのは難しいのは、そういうことだと考えていた。

 だが、それでも教えてもらおうと二人は考える。


「難しくても良いから、出来る限りで教えてくれないか?俺たちも見抜けるようになりたいんだ」


「そうよ。こういうのを見抜けるようになったら、それだけで生き延びれるようになるし」


 二人の言葉にマオも確かに、説明が下手でも教えるのが難しくても教えるべきかもしれないと考える。

 だが、正直に言って自分よりシーフの職業に就いている者に教わった方が良いと考えていた。

 罠などを見抜く専門の職業。

 独学の自分よりは確実に上だと思っている。


「ごめん。やっぱり俺じゃなくてシーフの職業に就いている人に教えてもらった方が良いと思う。俺は独学だからそっちの方が絶対に良い」


 マオの言葉を聞いて二人は顔を見合わせる。

 そしてマオに対して顔を向ける。


「それでも俺はマオに教えてもらった方が良いと思う」


「全体的な能力についてはたしかにシーフの方が上かもしれないけど、隠れた敵を見抜くという点ではマオの方が上だと私は思っているわ。だから私もマオから教わりたい」


 二人の答えはシーフに教わるよりもマオに教わりたかった。

 シーフの技能は隠れた敵を見つけるほかにダンジョンの罠を見抜いたりと様々ある。

 それも教われるなら便利かもしれないが今は見抜く方法を教わりたかった。


「えぇ……」


 マオはプロではなく独学の自分に教わりたいと言う二人に引いてしまう。

 そこは普通、自分ではなくプロの方に行くだろうと考えていたからだ。

 何で自分に教わろうと考えているのか理解できないでいた。


「本当に俺じゃないとダメ?」


「シーフの人から教えてもらった方が良いとマオは考えているかもしれないけど、正直シーフになるつもりも無いのに教わるのはちょっとね?」


 キリカの言葉にマオを頷く。

 シーフになるつもりも無いのにその道のプロに教わるのは抵抗があるらしい。


「まぁ、どうしてもダンジョンに挑む時に必要ならシーフをパーティに入れれば良いもんな。いるのに学ぼうとしても信頼していないのかと言われそうだ」


 マオの言葉に何度も首を縦に振って頷く二人。

 それもあるから望めなかった。


「わかった……。出来る限り教えるけど下手でも文句を言うなよ?」


 マオは感覚で判断しているのだと想像しているから教えるのが下手でも文句を言う気は最初からない。

 それでも二人は自分のモノしようと決意していた。


「じゃあ、まずは止まって」


 二人が頷いたのを確認してマオは動くのを止める。

 どうせなら今から教えようと考えていた。


「正面にモンスターがいると思う?」


 マオの突然の質問。

 その内容に今から教えようとしてるのだと二人は理解する。

 そしてたしかに今は丁度いい。


「いるんじゃないか?」


「そうね。マオがそんなことを聞いてくるんだし」


 二人の言葉を聞いてマオは両方の頭を叩く。

 マオが質問したからとか問題の答えになっていないからだ。


「「っつ~!」」


「俺がでなくてお前らだけの判断で答えろ」


 その言葉に二人はマオの思考ではなく正面を今度こそ見る。

 キリカの目には何か微妙に歪んでいるように見え、カイルには何もないように見えている。


「何かいる?」


「何もいないんじゃないか?」


 正反対の答えを出した二人。

 マオはキリカに関してはあっさり終わりそうだと予想する。


「キリカ正解。モンスターがいるけど数は分かる?」


「…………分からないわ」


「大体で良い」


「三体ぐらい……?」


 キリカの答えに笑みを浮かべるマオ。

 正解だった。


「正解。必要とあれば前に出て戦うからか?後衛のカイルより感が鋭いな……」


 もしかしたら前衛で戦う者がいたら直ぐに気付けるかもしれないとマオは考える。

 中衛よりも敵の前に出て戦うのだ。

 常に誰よりも命の危険を晒しており、突破されれば味方の危機。

 プレッシャーが半端でない。


「じゃあ次だ。ついてきてくれ」


 マオは正面にいたモンスターを殺して進んでいく。

 当たり前のように殺す姿に圧倒的な差を二人は感じる。


「個々の位置から右を見て。いるかいないか」


 二人はマオの指示に従い、それから何度もモンスターがいるかいないか。

 いたら何体いるのか繰り返し問題を出される。

 アドバイスを受けながら答えを出していったが、キリカは少しずつコツを掴んでいきカイルはコツをつかむのも難しそうだった。


 キリカにとってマオは感覚で把握しているから説明は難解だと思っていたが、予想以上に分かりやすかった。

 逆にカイルは少し難解だったらしい。

 前衛のように前に出て戦っているか、そうでないかで分かりやすさの差があるのかもしれない。

 結局、最終的にはキリカはコツを掴み、カイルはコツを掴めなかった。


 それでもカイルはコツを掴めなかったとはいえマオに感謝していた。

 モンスターを見極めている間、一度もモンスターがカイルたちを襲ってこなかったこともあって集中できたからだ。

 それもマオのお陰だと考えている。

 キリカもカイルも見極めるのに集中して周りの警戒を怠っていた。

 それでも無事だったのはマオが守ってくれたからだと二人は思っていた。

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