交易都市メルロディン-夜-
しばらくしてメルロディンへと辿り着き、俺たちは街へ入るための門に立つ守衛に入門許可証を見せる。
「…ふむ、夜分遅くまでご苦労」
全身をプレートアーマーに身を包む守衛が、くぐもった声で話し、門に吊りかけられたリストから許可証にある俺たちの名前を探す。
「……ロズウェル・サーヴラム、レイム・レイラ。両名通ってよし」
がしゃがしゃと音を立てながら、門の脇につけられた小さな扉を俺たちはくぐる。
「そんなに血塗れなのに、尋ねられさえしないんだ」
すでに火の魔法を消したレイムがどうでも良さそうに言った。
「いい街だ」
と俺もどうでもよさそうに答えると、
「……ふーん」
と、やはり彼女も、どうでもよさそうに相槌を打った。
「とりあえず、腹が減った。この時間だと酒場になるがいいか?」
レイムはこくりと頷く。
シルバー・ライオンと書かれた大きな看板を掲げた酒場へ俺とレイムは入り、手頃な席に腰掛けた。
夜が深まりつつあるこの時間。とはいえ、ここは酒場。盛り上がりは今からが絶頂というところだろうか。
席に幾つかの空きはあるものの、人も多く、繁盛しているのだろう。ウェイトレスがあちらこちらで忙しそうに駆け回っていた。
「何を食うんだ?」
と聞くと
「あんたのおごり?」
と笑う。
「……。」
無言を貫いていると、はいはいと言わんばかりに、何もない手のひらを開げシリング銀貨をころころと何枚か転がした。
「偽造がバレたらバルディオン地下牢行きだな」
「大丈夫、だれもわたしを捕らえられないし、捕まってもあんたを置いて私は逃げるから」
やたら出来のいい銀貨を小さな手のひらで玩ぶレイムは楽しそうに笑う。彼女はおれをからかうのが好きらしい。
「ははっ、そうか」
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