表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

プロローグ-ある一人の眠り-

「―――リーティアッ!」


僕の叫んだ声がこだまする。


その音に驚いた鳥たちが一斉に飛び立ち、小気味の良い羽ばたきがあたりの空を舞う。


朧気な頭をなんとか起こし、あたりを見渡す。


僕の眼前に広がる澄んだ湖も、それを取り囲む穏やかな木々も、僕が寝転がる柔らかな草地も、遠くに薄らと見える街のようなものも、そのどれも、やはり見覚えはなかった。


ここは、とても……一言で表すなら、のどかだ。


この世界なら僕でも、楽しく暮らせそうだとなんとなくそう思えた。


体を起こし、しばらくの間、何も考えずにただ景色を眺めた。


僕のこの目覚めた場所が、人の暮らしから幾分か切り離された土地だからなのだろうか、時の流れさえ緩やかに感じる。


僕の暮らした元の世界から見れば、ここは異世界。


異世界というからにはやはりモンスターなどいるのだろうか。


まるでイントロを数秒聴いただけでその曲の全貌も分かりやしないのに惹きつけられるように、僕はすでにこの世界に心を奪われていた。


「うぅん…」


僕はゆっくりと立ち上がり、伸びをする。


初めに向かうなら遠目に見えるあの街だろうか。


この世界に困る人がいるのなら僕は助けてあげたい。


そしてリーティアが言っていた黒衣の男も探し出してみせる。


そのためにはリーティアから授かったギフトというものが、一体どんなものなのかを知らなくてはいけない。


そのとき。


僕の後ろから草を踏み分ける音が鳴る。


重く踏みしめられ、地を蹴りつける音までしっかりと聞き取れた。


突然のことに僕は驚き、肩が跳ねた。


そのせいで、僕は振り返る間もなく、いや、視界の端に見えたその"者"はあまりに疾かった。


それは理由付けなどすることも愚かなくらい、どうであれ結果は同じであっただろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ