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第三話 始まりの前夜3


夕飯を終えしばらく経った頃、洗い物を終えた百合が戻ってきた。


「くーくん、ゲームしよー?」

「おう、良いけどもう夜遅いから少しだけだぞ?」

「うん、分かったー!」


言いながら百合は意気揚々とテレビの下にしまってある携帯ゲーム機二台を取り出すと、黒一の隣に座り片方を手渡した。

プレイするのは今話題となっている協力プレイ可能のハンティングゲームだ。


「よし、頑張るぞー!」


ゲーム機片手に意気込む百合。

一方、黒一は百合のサポートが出来るように準備は万全である。


「今日はどうする?」

「うーんとねー、武器を作るのに素材が足りないからそれを集めたいかな」

「分かった」


方針を決めた二人は早速、目当ての素材を手に入れる事のできるモンスターをひたすら倒し始めた。

百合が楽しそうに「えい! やぁ!」とボタンを押して果敢に攻撃を仕掛けるのに対して黒一は後ろから冷静に援護をする。


「あー、やられちゃう~」

「今回復する」

「ありがとー!」


息のあった連携プレイで次々と襲いかかって来るモンスター達を倒していく二人。

しかし、それでもお目当ての素材は獲得できない。


「なかなか出ないねー」

「レア素材だからな。俺も丸一日やって一個が限界だった」

「えー、そーなんだ。うーん...厳しいなぁ...」


雲行きが怪しくなり始めるも二人は指を巧みに動かしゲームを操作し続ける。


「………」

「………」


時間が経過するにつれて次第に口数も少なくなってきた。


そして、ゲームをスタートしてから1時間程が経過したくらいからだろうか百合の操作するキャラクターに不審な動きが見られるようになっていた。

それは、壁に向かって走ったり無意味なジャンプを繰り返すなどだ。

次第に頻発していくそれにおかしいと感じた黒一は、ふと百合の様子を伺うと、百合は睡魔と戦いながらゲームを操作していた。

今にも閉じそうな(まぶた)を必死に見開きながら画面と向き合っている。


「おい、百合大丈夫か?」

「ふん…? だいじょーぶ? だよ…ふぁ…」


百合はかろうじて言葉を紡ぐが意識半分といった所で呂律が回っていない。

全身で船を漕いでおり、今にも倒れそうである。

その為、黒一はゲームの続行は難しいと判断し、切り上げる事にした。


「よし、もう夜も遅くなってきたし、今日はこの辺にしておこうか」


黒一のその提案に百合は少し不服そうに眉を釣り上げたが「はーい…」と了解を示した。


「じゃあ俺が布団敷いとくから百合は歯を磨いて来てくれ」


促すと百合は素直に「ん…」と眠そうに返事をしてふらふらと洗面所へと歩いていった。


それを見届けて黒一は、


「さてやりますか」


と、腕をまくって就寝の準備に取り掛かった。


まず初めに2台分のゲームのセーブを済ませ、次に丸テーブルを部屋の端へと置いてスペース作る。

そして、最後にそこへ2人分の布団を並べると支度は完了した。


それからしばらくスマホをいじっていると歯磨きへ行っていた百合がおぼつかない足取りで戻ってきた。


「くーくん、終わったよぉ…ふみゅ…」

「そうか、じゃあ俺も磨いてくるから百合は先に寝てていいぞ」

「うみゅ…おやすみなさぃ……」


言って百合はもそもそと布団の中へと入ると、眠気のピークを迎えていた様で、ものの数秒もしないうちに可愛い寝息を立てて深い眠りに堕ちていった。


「おやすみ百合」


黒一は音を立てないように部屋の明かりを消して静かに洗面所へと向かった。


◇◇◇


歯を磨いて就寝の準備を整えた黒一は気持ち良さそうに眠っている百合を起こさない様に自分の布団の中へと入った。


(ん、もうこんな時間か)


スマホを開くと時計は深夜1時を表示している。

少しネットサーフィンを楽しもうと思っていたのだがこれ以上の夜更かしは明日の仕事に差し支えるだろうと思い諦める。


そして、いつものようにアラームをセットして、瞼を閉じると、黒一は夢の中へと堕ちていった。


この日を境に自分達の運命が大きく変わろうとも知らずに……。



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