7.レイナールの力(4)
兎に角投稿を続けます。
「結局、僕は魔法を使えるの?」レイナールの言葉にマリナとタニーは戸惑った。
何だかんだで、結局レイナールの【適正】鑑定をしていない。レイナールに膨大な魔力があることは間違いが無い。ただ、レイナールとまた魔力循環を行うことは今はまだ躊躇われた。決して嫌な訳でなく、自分がどうにかなってしまいそうで怖かったのである。
そこで、タニーは何となく妖精たちに、虹色のオーラについて聞いてみた。妖精たちはあれこれ、言い合っていたが、最後は言い争いになってしまった。ただ、妖精たちが言うことを纏めると、基本的にオーラの色は【適正】を表す色で、複数の【適正】を持つ場合は、通常その時点で一番活性が強い色になると言い、虹色の 【適正】は聞いたことが無いとのことだった。 益々、不安になった、マリナとタニーは、【適正】鑑定を諦め。レイナールにも諦める様に諭した。
「レイナール様、【適正】鑑定をする為には"精霊石"にレイナール様の魔力を流して頂かなければなりませんが、今はそれをする手立てがありません。残念ですが今は、鑑定を諦めましょう」タニーが申し訳なさそうに言った。
「多分、僕は独りで魔力を流せると思うょ」と可愛らしく返すレイナール。
あまりに、レイナールが瞳をキラキラさせて見つめてくるので、マリナが折れて鑑定をすることになった。レイナールの右手の上に"精霊石"を置き、魔力を流す様に促した。レイナールは静かに目を閉じ、静かに息を吐いた。すると"精霊石"が光り出し、その光は虹色に変わった。
「やはり、虹色ですかぁ~」諦めた様に呟くマリナ。
「すっご~い!綺麗!綺麗!!」アニーは、声を出して喜びはしゃぎ廻った。
はしゃぐアニーの廻りで、妖精たちが不思議そうに騒ぎ出し、飛び廻った。そして、イグニがレイナールの頭の上に乗った途端に、"精霊石"は赤色に変わった。次にウェンが乗ると"精霊石"は緑に光り、アクアが乗ると青くなり、フムスでは黄色に変わり、フムスが下りると、また虹色に戻った。一旦、鑑定を止めて、妖精たちに話を聞いた。
「さっきは、イグニちゃんの魔力で"精霊石"は赤くなったのですか?」とタニーは尋ねたが、イグニの答えは少し意外な答えだった。
「ちがうょ、私は、レイの魔力を貰っていたんだょ」とイグニは答えた。
「わたしも」「あたしも」「僕もだょ、レイの魔力は優しいと言うか美味しい」ウェン、アクア、フムスの順で答えた。
「イグニが乗った時に何となく、イグニに流れ出している魔力が解ったから、その魔力だけを循環させてみたけど、それで良かったみたいだねぇ」嬉しそうにレイナールが言った。
「「「「うん!そうだょ」」」」4人の妖精は、声を合わせて楽しそうに笑いながら答えた。
「レイナール様は、魔力の違いが解るのでしょうか?」問いかけたのだがその答えは飛んでもないものであった。
「うん、虹色の他に12色あるかなぁ?それと良く解んないのが6つあるょ」首を傾げながら、レイナールは答えた。
レイナールの答えは全12の【適正】があり他にも6つの魔力があり、更にメインの虹色があるとのことだった。その為にタニーの言った色の魔力を流して貰うことになった。やはり、基本属性は全て問題なく、上位属性も確認出来た。そして特殊属性の【光】の白色の魔力を流している時に、異変が起きた。"精霊石"の輝きが一層と強くなり部屋の中が、白い光で包まれた。そして、その光は徐々に小さくなり、白い光の玉となって、レイナールの廻りを飛び廻った。その、光を見たイグニたちは、慌ててアニーの背中に隠れた。
「レイナール、その光も精霊様ですかぁ?」不思議そうに尋ねるマリナ。
「違うよ、この娘は妖精さんだょ ねぇ、ルーメちゃん」答えながら、妖精の名前を呼んだ。
光の玉は、"ぽんっ"と弾けて、イグニたちと同じ様な小さな羽をもつ可愛い女の子が姿を現した。ただ、イグニたちのフリフリ衣装と違い、花嫁衣裳の様な真っ白な着物の様な装いであった。
「妾は、ルーメと申すのじゃ。よろしくなのじゃ」なんかやんちゃな感じの挨拶だった。
「僕はレイナール、よろしくね」「私は、アニーよ。よろしくお願いします」
「よろしくなのじゃ」挨拶を交わす子供たちとルーメ。
「マリナです。この家の主でレイナールの母親でございます。よろしくお願い致します」また、優雅にカテーシーを決めた。
「ダインです。マリナ様に仕えております。アニーの父親になります。よろしくお願い致します」こちらも、騎士の最敬礼で挨拶をした。
「同じく、タニーと申します、アニーの母親です。よろしくお願い致します」と深々と頭を下げた。
「ルーメなのじゃ、よろしくなのじゃ」と言い、可愛らしく頭をちょこんと下げた。
「あのぉ~、お畏れながら、ひっ、姫さまでありましゅですか?」アニーの影からイグニが少し顔を出して恐る恐る声を掛けた。
「如何にも妾は、妖精女王の娘であるが気にすることはないのじゃ、よろしくなのじゃ」
「イグニと申します」「ウェンだょ」「アクアですゎ」「フラスでしゅ」
「「「「よろしくお願い致します」」」」と4人揃って可愛く頭を下げた。
その様子を見ていた大人3人の顔には、滝の様に汗が流れていたが、ルーメに気を遣う必要はないと何度も念を押されてどうにか平静を取り戻した。妖精姫の出現で、おかしくなってしまい、レイナールの魔力鑑定は9つの【適正】までの確認でお開きとなった。
私"零"の持つ"レイナール"の知識では【属性】の関係は八芒星の形で現わされている。正方形を90度回転させて重ねた形で、各頂点に【属性】が記されている。
全体の頂点に、【火】そこから時計廻りに、【雷】【風】【氷】【水】【木】【土】【金】となっている。関係性としては、基本属性の【火】【風】【水】【土】その間に上位属性が入るがその上位属性は隣り合う基本属性の合成された【属性】とされ、例えば【雷】は隣り合う【火】と【風】が合わさった【属性】とされている。そして、向かい合う【属性】は、反発される【属性】とされている。
また、【光】や【影】の特殊属性は別物とされている。"レイナール"の知識には残りの2つの特殊属性はない、実際先程妖精たちも特殊属性の話で言い争いをしていた。
この世界では、複数の【適正】を持つことはかなり珍しく、この国の魔法師長でも4つの【適正】、宮廷魔導師長でも3つの【適正】しか持っていなかった。
3つの【適正】を持つ、マリナやタニーはかなり稀有の存在と言える。そして相反する
【適正】を持つことは無いとまで言われている。それなのにレイナールは9属性を持ってているところまでは確定してしまっている。本来あり得ないことなのだが親たちは気付いていない様であった。《閑話休題》
翌朝、マリナとタニーは、レイナールに魔法を教えることにした。まずはタニーが手本を見せることにして、両の掌を上にして軽く胸の前で重ねて、小さなものを受け取る様な感じの姿勢を取った。眼を瞑りぶつぶつと小声で呟くと、掌の上に水の玉が浮かび上がった。【水】属性の魔法だった。その瞬間、何を思ったのか、アクアが飛んで来て、タニーの頭の上に乗った。タニーの掌の上の水の玉はみるみる大きくなり、タニーを飲み込んで割れた。当然、タニーはびしょ濡れであり、泣きそうな顔でアクアを睨んだ。
「これは、アクア様が為されたのですか?」明らかに怒っている。
「水が欲しいのかと思って、お手伝い・・・」明らかに落ち込んでしまっている。
「まぁ、申し訳ありません。ありがとうございます」アクアの気持ちに気付き謝るタニー。
着替えて、教育再開となったが、妖精たちに力を貸さない様にくれぐれも、お願いしてからの再開だった。
「レイナール様、先程、私がした様な姿勢をして下さい。ただ、あまり細かい事には、拘りませんので、集中しやすい姿勢で、掌に【火】の魔力を集めて下さい」微笑んでいたタニーの顔が引き攣り出した。
「やった!出来た!出来た!!」喜んだ瞬間に火は消えてしまったが、確かに手の中に火が灯っていた。呪文省略どころか、魔法名も唱えない本当の無詠唱であった。
タニーは魔力を集める方法を教えるだけのつもりで、その操作とは別に、呪文を教えるつもりでいたのだが、全てすっ飛ばされてしまった。それでも気を取り直して【風】【水】【土】の魔法を調べたが、全て無詠唱で発現した。かなり、タニーは戸惑ったが、マリナは開き直ってしまった。
続けて上位の【雷】【氷】【木】【金】も成功したが、【木】【金】属性魔法で、出現させた玉が、消えずに残ってしまっている。タニーのテンションはおかしくなってしまっていた。調子に乗ったタニーが自分の指輪をレイナールの左手に握らせて、【金】の魔力循環を行わせた。レイナールの右手には、金色に輝く玉が現れた。少し驚いたが、あまりにも輝きが強い為、金ではないと考えて、一旦、中断し昼食の準備に向かった。タニーが、昼食の支度を終えた時に、ダインが、レイナールとアニーを連れて戻って来た。アニーは、楽しそうに一生懸命ダインに話しかけていた。昼食中もアニーは興奮気味に話していたが
食事が終わると妖精たちと暖炉の前に遊びに行った。その様子を見ながらダインは溜息を吐き。
「タニー、アニーから色々聞いたが、なぜこの玉は消えずに残っているのだ!」とレイナールの出した3つの玉を取り出した。
「答え様が無いのですが・・・・・ 坊ちゃんですから・・・・・」と申し訳なさそうに答えた。
「「--;」」タニーの言葉に、マリナとダインは少し戸惑ったが、
「まぁ、そうだなぁ・・・・・でも、これは金ではないのか?」と諦めつつも、更に問いかけると、
「流石に金ではないのでは?金にしては輝きが強すぎるのでは?」と躊躇いながら、タニーに変わってマリナが希望を込めて答えた。
「はあぁ~、まぁ、そう言うことに『神金でしゅ』・・・」溜息交じりに肯定しかけた、ダインの前にフムスが飛んで来て恥ずかしそうに言った。
「「「神金 ・・・ **;」」」大人たち3人は、軽い眩暈を感じたが倒れることは踏み留まった。
しばしの沈黙の後、いつの間のか抱き合って昼寝を始めた、レイナールとアニーを優しく見つめながら、マリナはダインとタニーに頭を下げた。
「ダイン、タニー、お願いがあります。ダインは剣術を始めとした武術や馬術等を、タニーは魔法をレイナールに正式に教えてやって下さい」その眼差しはいつになく鋭く、強かった。
「「頭を上げて下さい」」頭を上げる様に促した後、二人も姿勢を正した。
「多分、今でも私より数段は強いと思いますが、駆け引きや裏の技まで、私の持つ全てをお教え致しましょう」
「私も、私では役不足ではありますが、全ての知識と技をお教え致します」ダインもタニーも強い決意を表して頭を下げた。
3人は、重い空気に包まれたが、それは嫌なものではなく、爽快感すら感じる張り詰めたものであった。その空間をマリナの天然爆弾が破壊した。
「色々と不思議なことが多いですけど・・・どうしてレイナールは魔力の数を数えれたのでしょうか?」
マリナは無邪気に首を傾げた。
「「そこですか!?」」声を合わせてダインとタニーは笑いながら突っ込んだが、心の中では二人とも『確かに』と頷いていた。
あまりにも、短い間に色々あり、レイナールの異常さばかりが目立ってしまっているが、その異常さをしっかり見切って、5人の妖精と楽しそうに遊ぶ、アニーの能力の高さに、私"零"は驚いているのだが、親たちは気付いていない様であった。
こうして、レイナールの、訓練の日々が始まることになった。
昨日今までの投稿見直しました。
色々申し訳ありませんでした。
それでもノーチェックで投稿します。
誤字脱字教えて下さい。