1.プロローグ
私は、"神代 零" 24歳。この春防衛医科大学を卒業し、任官される予定だった。
私の華麗なる経歴を紹介しよう。神代家は代々続く地方領主の家系であり、古武術の宗家でもあった。父は現市長で、祖父も市長を務めた。父の弟つまり叔父さんも古武術を修め、その技の一部を駆使して柔道でオリンピックの金メダリストとなり、現代風の柔道場を営んでいる傍ら、父の古武術道場の"裏"の師範代も務めている。
母方の祖父も江戸時代から続く剣術指南の家系で、現在も大きな道場を構えている。祖母は、華道の家元の娘であったが、堅苦しい仕来りを嫌い、フラワーアレジメント教室を起こし、今では、全国に幾つもの教室を持つ実業家である。
厳格な祖父と、柔軟な思考とどこかのんびりとした祖母に育てられた母は、なぜか女医となり、地元の総合病院の院長兼理事長をしている。なかなか有名な小児科医で、かなりの美人でもあった。ちなみに、父方の祖母も茶道の大家の娘であった。
そんな文武両道を地で行く超セレブな家庭の嫡子として、厳しくも温かく育てられた私は、幼い頃から、武術に学問にと頭角を現し、神童として地元で持て囃された。
中学では、剣道部に所属し日本一にもなった。中学生で身長は179cmと高く、中学3年生になっても、女性に間違われる端正な容姿で、アルバイト感覚でモデルとしても活躍をしていた。
高校進学後は、熱烈な剣道部からの勧誘を断り、叔父との約束でもあった為に柔道部に入部し、1年で全国を制し、三年間その座を護り通した。
学問でも、全国模試は常に2桁代を維持し、友人に頼まれて出演した自主製作映画が、ネットで大きく話題になり、一躍、時の人として世間をも騒がせることとなった。
女性の様な容貌、類稀なる運動能力と学力、そして由緒正しい家柄までもが全国に知れ渡ってしまった。そして、柔道では世界大会で優勝し、オリンピックの金メダル候補としても期待された。バイト感覚で芸能活動をしていた私は、多くの大手芸能事務所からも、専属契約をとの声が掛かったが、その全てを断り防衛医科大学に進み、特別職国家公務員となった。
当然、アルバイト感覚の芸能活動も辞め、オリンピックを目指すことも無く、訓練と学業だけの6年間を過ごし、世間からも忘れ去られた。
そして、任官を控えたこの春の掛かりに、私は再び世間を騒がせた。訓練中の銃の事故で、華々し私の24年間の人生は、秘かに幕を下したのだった。
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私は、"神代 零"だった。意識を取戻した私は、なぜか動けなかった。頭に掛った靄が晴れる様に、色々なことが、頭に浮かんで来た。
どうも、私は転生して"レイナール"となったらしい。多少、ラノベの転生ものアニメ知識はあるが、これが転生なのかは良く解らない。"零"としての意識はある。知識も記憶もある。しかし、"レイナール"としての、記憶と知識もある。そして、"レイナール"の意識までもがある。
私は、レイナールの5歳の誕生日の朝に、レイナールの目覚めと同時に転生?したらしい。どうも、自分の状態が、良く理解出来ない。私はあくまでも"神代 零"である。しかし、私の身体はレイナールの身体でレイナールの意識で動いている。決して私"零"の意識では動かない。私は、レイナールに転生したのでは無く、レイナールの中の二重人格にでも転生してしまったか、若しくは、レイナールに取り込まれてしまった様だ。幽体離脱の様にレイナールの身体から離れることも出来ない。そして、"レイナール"は自分の中の私"零"に気付いていないようだった。
5歳児の意識や知識がどの程度の物か、私には良く解らないが、レイナールはかなり優秀と思う。それが私の知識によるものなのかは、良く解らない。
私の中の"レイナール"の記憶と知識を整理すると、レイナールの父親は、レオナールと言い、貴族の三男坊で、冒険者であったが、レイナールが生まれて直ぐの邪竜討伐中に仲間を庇い、命を落としている。当然、レイナールに父親の記憶は無いが、母親マリナの話から、強烈な憧れを抱いている。
その母親のマリナはハーフエルフの元巫女で26歳であるが、10代後半にしか見えない。金髪のかなりの美人である。ハーフエルフと言っても本来はクウォーターであるがこの世界では混血であればハーフと言い、血の濃い種族を主としマリナは種族的には半人族となる。
本来、聖女は純潔を強いられ、結婚は認められず、レオナールとマリナは所謂、駆落ちである。その為、今も人里離れた森の中で、ひっそりとほぼ自給自足の生活を送っている。
箱入り娘であったマリナが独りで生きていくことが出来るはずも無く。レオナールの親友であり、従者であり、冒険者仲間でもあった。ダインとその妻のタニーが従者として仕えていた。ちなみに、ダイン夫婦にはアニーと言う。レイナールと同い年の可愛い娘がいた。
レイナールたちが暮らすこの世界は、ファランジアと言い魔法が存在し、亜人や精霊、神獣や魔物・魔獣、そして神様や邪神までもが存在するらしい。
文化水準は中世ヨーロッパや日本の鎌倉・室町時代程度と思われるが、魔法や魔道具がある為に、生活水準はそれ程、低くは感じない、戦前の日本ぐらいではないかと思う。しかし、レイナールは、森の中のこの家と隣り村しか知らないので、はっきりとは解らない。《閑話休題》
「レイナール、ぼぉ~っとしてどうしたの?まだ、寝ぼけているのかしら?」母、マリナが、不思議そうに問いかけてきた。
「今晩は、あなたとアニーちゃんの誕生日祝いでご馳走だから、楽しみにしててね」と、ニコニコ笑いながら、台所へと消えて行った。
マリナは、たまに昼食を作る程度で、基本的にはタニーが調理をするのだが、今日の夕食は二人で作る様である。レイナールとアニーは1日違いで生まれ、アニーの誕生日は、明日であるが、今日一緒に祝うことにしたらしい。そもそも、この世界ファランジアでは、誕生日を祝う風習自体はない。1年の初め"聖の日"を迎えて1歳、そして次の"聖の日"で2歳と全ての人が同じ日に齢を取る、数え齢の様な習慣があっただから、レイナールはこの世界では、既にこの年の初めに5歳になっていた。
ダインが鹿を狩ってきたので、ご馳走の言い訳程度の誕生日祝いであった。後付けの誕生祝いであったが、マリナは、レイナールに父レオナールの形見の短剣形見の短剣を贈った。
当然、5歳児には早い贈り物である。高級品と解るその剣は亡きレオナールの身分の高さを示すのに、十分な品物であった。そして、その剣の柄頭は、丸い棒状に少し伸びて、先端には鞘にも刻まれた紋章が、まるで印章の様に施されていた。
優しさに包まれた食事の後、レイナールは居間で"邪斬りの剣"を夢中で弄っていた。自分の背丈の半分に近い長さもある短剣を掲げたり、ひっくり返したり、抱き着いては撫でまわして、まるでペットでも可愛がるかの様に、ニコニコしながら短剣を弄り回していた。普段なら、アニーと戯れている時間なのであるが、今日は短剣に夢中であった。短剣にレイナールを取られたアニーは、タニーの膝の上で、少し拗ねていた。
アニーはダインの青髪とタニーの白髪を合わせた様な薄い青い色の髪をし、瞳の色は翡翠色で、美人のタニーさん似で天使の様に可愛らしく、少し拗ねて甘えた表情は、更にその可愛らしさを引き立てた。
レイナールは、父親譲りの銀髪と母親譲りの琥珀色の瞳をしていて、良く女の子と間違えられていた。偶に出掛ける隣り村の人々は、姉妹と思い込んでいる人がほとんどであった。
その頃、家の裏手では、ダインが、鹿の皮や角、骨などを、素材として売る為に手を加え、ついでにあまった肉を干し肉にする為の作業をしていた。そのダインの背中に広がる森の中には、ダインの背中に近づく5対の赤い眼が闇の中に静かに光っていたのであった。
書き方、文法が少しの間、定まらないと思います。(私の文章力では少し表現が出来ない難しい設定をしてしまいました。)
頑張って、書きたいこと(イチャコラ)を中心に書いていきたいです。誤字、脱字、出来れば表現方法を指摘していただけると嬉しく思います。よろしくお願いします。