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苦労するリーダーに苦悩する副

パーティーリーダーと副リーダーの話 @短編その35

「俺は馬鹿な奴が嫌いだ」


冒険者パーティー『カメヤ』のリーダー、キットに顔を見てきっぱりと言われた。

馬鹿とか。初対面に対していうかそれ。


「はぁ」

「なんだその間抜けな返事は。・・・男ならシャンとしろシャンと」

「男らしくないですかねぇ」

「『ねぇ』じゃない」

「はぁ」

「間抜けな返事をするな!!」

「うす」


と、ちょっといらっとする出会いだったけど、ボクは彼のパーティーメンバーに加わることにしたのだった。

だって強いし、自分の糧になるかな〜と。

ボクはメンバーになるために男装しています。ぼくはずっと、冒険者になりたかったんだよね。


キットさんは、キットというガキっぽい名前とは対照的に、本当強い人です。

一緒に活動するようになって思ったんですが・・・

ダンジョンでどう動けばいのか、野営の事とか、モンスターの狩り方や解体のコツなど・・

他にも色々、意外と面倒見が良く、ボクにしっかりと教えてくれた。


そのうち背中を預けて戦って、野営もお喋りして過ごして。


ボクの作るご飯を、


「良い飯係が出来た」


と言っておかわりして。


夏は暑いけど、ボクが服を着込んでいるのを見て、


「暑苦しいなぁ。ほれ、これで冷やせ」


おしぼりを手渡してくれたり。


秋は魔法で落ち葉を風魔法で掻き集め、芋を焼いてくれたり。


冬は寒いから、


「おい、こっち来い」


って、ローブの中に入れてくれたり。


出会った春には、


「また一年よろしくな」


って、花見しながらお酒を飲んだ。






そして三年。


いつのまにかボクは副『リーダー』と呼ばれるようになっていた。


「ねえキットさん」

「なんだ副」

「いや副リーダーですけど、ボクの名前で呼んでくださいよ。なんかボク、自分の名前忘れそうです」

「・・・」

「え?」

「・・・・・・・」

「うわっ!!名前!!忘れてますね?忘れてますね!!」

「い、いや・・・」

「じゃあ言ってくださいよ!!さあ!!」


ボクはこいこいと両手の指をクイクイと動かした。

キットさん、顔が赤くなっている。忘れていたら、殴ってやる・・


「ワイ、フュ」


ぼそぼそと自信なさげに言った。でも間違ってるじゃん!!


「ワイヒューです!」

「お、おう。でもいいじゃねーか、副で。すっと言えるし」

「うーーーー」


ボク達『カメヤ』はキットさんとボクだけのパーティーだ。

何人か入れ替わりで入ったり、辞めたりで、必要な時に数人加えると言ったスタイルに落ち着いた。


そうこうするうちに、パーティーランクがAランクまで上がった。





「もっと上を目指しますか?」

「いや・・これでいいんじゃないか?」


キットさんはボクの顔を見ないで返事をする。


ボクのせいだ・・・

ボクの力じゃ、A以上には上がれない。

キットさんなら、もうとうの昔にSランクにいってたっておかしくないのに。

なんか、申し訳なくて、しょぼくれてしまう。


「おい。馬鹿はつまんねーこと考えすぎだ。力があっても気が利かねー奴は多いから、お前で良いんだ」

「馬鹿じゃないですよぅ」

「つまんないこと考えた時点で馬鹿だ」


大きな手がばしっと脳天を叩いて、わしわしと握るように撫でる。


「痛いですよぅ・・馬鹿になったらどうするんです」

「もう馬鹿だからそれより馬鹿にはならん」

「くそおおーーー、キットさんの馬鹿ーーー」

「なんだとぅ」


さらにわしゃわしゃ髪を掻き回された。


「ぎゃあああ」

「あっはっは!!」


くそう・・はげたら許すまじ・・・




今日ギルドに行ったら、受付に呼び止められた。なんでもギルドマスターが呼んでいるそうだ。

で、行ってみると・・


「ドラゴン討伐をお願いしたい」


と、依頼されてしまったのだ。

最近ドラゴンの群れが何度も目撃されているのは知っていたが、ついに被害が出たそうだ。

ドラゴンの群れは、15匹とかなり多い。ドラゴンの中でも小柄で弱いブロンズドラゴンだが、15匹もいたら脅威だ。


「今君達以外に行ってもらえるパーティーがいない。頼めるか?」

「そうだな・・」


キットさんがボクを見た。

ああ・・これは、もう・・潮時かな。


「やりましょう!さあ、数人メンバーを募集しましょう!さっさと倒して来ましょう!」

「大丈夫か?ワイフュー」


キットさんがボクの名前を呼んだ。

なんだってこんな時に。

初めてだよ、キットさん。


「大丈夫!倒したら、箔もつきますよ!」


鼻がツンとして、なんだか目が熱くなって、慌ててボクは外に出た。

今回の募集メンバーで、強い人いたら・・交代しよう、そう思った。




決心したのに・・何故?解せぬ。

メンバー募集をしたら、女ばっかきた。

あ・・キットさん不機嫌。

ハーレムパーティー状態だけど、ブスッとして笑い顔にならない。


魔法使いを2人、僧侶を1人募集したら、魔法使いが5人、僧侶が4人きた。


「そんなにいらねえ!誰か抜けろ!魔法使いは2人、僧侶は1人しかいらねえ!!」


ついに怒りが頂点に達したね。キットさんが怒鳴ると、甲高い悲鳴が上がった。


「きゃーーー!怒らないでくださいーー!!あんた、出ていきなさいよ!」

「ごめんなさーーーい!!そっちこそ!ワタシが残るんだから!」

「怒る声も素敵・・・わたしはとても有能ですのよ。是非私を選んでください」


・・・あ、あわわ。女の熾烈な戦い勃発ですよー。

いままでだって募集して依頼を受けたりしていたのに、今回に限ってこんな選りすぐりの『馬鹿』が来ちゃったかなぁ・・・

キットさんが選べばいいのよ?と見ると・・

目が笑っていない。

あ。これは・・・キットさん怒りの噴火寸前だ!やばい!!


「出て行け!!煩い女などいらん!!」


ぐいぐい女達をドアに押していき、外に放り出した。やっぱし噴火しちゃいましたねぇ・・


「男の冒険者、来ませんでしたね」

「さっきの奴らが妨害したんだろ」


キットさん、ハンサムだもんな。すごく人気があるんだよね。

もしかして、冒険者じゃなく、お嫁さんか恋人募集と思ったのかな?

でもギルドで募集したのにな?変だねぇ・・


「お疲れ様です、キットさん」

()()あんな奴らが来たか・・はぁ・・」

「どうしたんです?()()?」

「お前が来る前、ああいった女が俺のパーティーメンバーでな・・」


で、聞いたところ、とにかくキットさんの嫁になりたい!な女達が熾烈な争いをしていたそうだ。

依頼をきちんとやってくれない、けんかばかり、そしてキットさんへハニートラップ。

ついに爆発、パーティーを解散。そして、ボクが来たと。


「俺は男でいいんだよ。男で!!」

「えー」


まさかのホモ疑惑?

そういえば、ボクを採用しているんだから・・・でもボクに手を出して来なかったよ?


「お前、また馬鹿なこと想像してるだろ。俺を男色家とか思っているだろう」

「何故わかったんですか!!」


だって、そう言うことだよね?だよね?

で、ボクを・・・も、もしかして?男として、好かれているのかな?

え、えええ〜・・そうなのか?男として・・・はぁ・・


「だから!依頼をかたす同僚は、男がいいって言ってるんだ!分かっているか?」

「ソ、ソッスネー」

「信じろよ、ったく。さあて、もう一度集めるか。今度は絶対に、お・と・・」

「どうしましたか、キットさん」


キットさん、黙ってしまいました。そしてボクをちら、と見て。

どうしたんだろう?顔色がなんかドス黒い・・・


「・・・俺が全部倒す」

「えええーーー!!そ、それはキットさんでも、いくらなんでも無茶」

「やる。とにかくポーションを用意だ!!剣も折れる前提で揃える!!」

「ちょっと!!キットさん!!」





そして本当に倒しちゃいました!!

鬼気迫るお顔で丸2日掛かりました。恐っ!

ポーションは17本使いました。ボクも必死でアシストですよ!!


「ワイフュー、疲れた・・」

「はいはい、ご苦労様でした。しばらく寝てください」


キットさんは今横になっています。ボクの膝に頭を乗せて、膝枕です。

換えの大剣も6本折ってます。

まさに死闘でした。


「何を無茶してるんですか。生きてたから良いけど・・・ふぐっ・・えぐっ」


落ち着いたら、死闘を思い出して・・体が震えてきました。

ざっくりと背中を斬られたキットさんを、肩で支えて森の奥に引きずって連れて行き、ポーションを飲ませて。


「よっしゃ!次行く」


呼び止める間もなく、再びドラゴンが飛び回る所まで走って。

ボクもそれに続いて。


必死だったから思考を条件反射にすり替えて、考えないようにしていた。

ようやく落ち着いたら、どんどん怖い場面を思い出して・・・

キットさんが何度も何度も死にかけて、血だらけで・・今着ている服は、血で固まって赤黒いボロ布だ。


「泣くな。俺が死ぬとか思ってたのか?ポーションあれば大丈夫だ」

「採算度外視しないでくださいよ・・・このポーション、1本でどれだけすると・・15匹討伐したって、17本使ってちゃ儲けなんてほんの僅かじゃないですか・・・そういう馬鹿な真似はやめてください。今回は、キットさんが、馬鹿です。頭悪すぎです・・・」

「おー。儲けられなくて悪かった」

「死んだら・・・儲けどころじゃないじゃないですか・・馬鹿です。馬鹿馬鹿です」

「ははは」

「だれでもいいから、何人か連れて行けば良かったんですよ!そしたら」

「女は煩いし、男はお前がいるから駄目だ」

「ボクがいたらなんで駄目なんですか」

「他の奴らに、お前目に入れたくないというか」


ホモですね。ボク、他の男に狙われると思われてますね。

ボクの顔を見て、キットさんが大きく溜息を吐きました。


「だからな・・俺が男色家だったら、お前パーティーには入れてねーだろうが」

「え?」


男色家だったら、男入れるでしょう?おっと、パーティーメンバーにするでしょう?


「お前、本当に馬鹿だな。お前は女だろうが」


え。


えええ??そ、それって!!


「ええ!気付いていましたか!!いつ!!」

「三年前の面接の時、トイレ入るところ俺は見た。女子トイレ入っただろうが」

「え!でも『男だろうが』って言ってた!!」

「そりゃお前、男の服着てれば『男のフリしているなー、なんか事情があるのかな』とか思うだろうが。だから『乗ってやった』。そのうち女でしたーとか言うかなーと思ってたら、全然言わねーし・・女とバレたくないんだなーと。だから風呂とか、女遊びには誘わなかっただろう?」


はっ!!!そ、そういえば・・・あれっ?いま何か言いましたよ?


「キットさん、女遊びには行ってたんですね?」

「そりゃ男だし。彼女いなかったら他所で済ますだろ?なんだ、お前で済ませて良かったのか?」

「ヒエッ!!」


しれっと言ったーーー!!ま、まあ怒ることもないですし?男の人の生理現象ですし?

・・・モヤモヤ、しますけど?


「ま、今のは冗談だ。俺はパーティーメンバーには手を出さねーよ」

「ソ、ソデスカー」

「お前は大事なメンバーだし、副だからな」

「ア、ハイ」


嬉しい・・?

やっぱ嬉しくない。

というか、すごく嬉しくない。

手を出して欲しくないと言うか、出して欲しいと言うか・・モヤモヤする〜〜〜・・


「キットさん、ボクの事、男と信じていると信じていました」

「そう思ってるだろうと思ったから、『お前女だろ』なんて言わなかった。ありがたがれ」

「そうですか」

「それに、男に膝枕は強請らねえ」


急にキットさん、ボクの太腿の内側、撫でてきた!!


「きゃ」

「こら、そういう可愛い声、出すな。襲うぞ」

「!!!!!!」


ボクは固まってしまいました。

これ幸いと、キットさんがお尻を執拗に撫で回してきました。

だ、駄目です!!!

逃げようとしたら、すぐに捉まってしまいました・・・きゃあ・・・





「とにかく、一人で15匹とか、もう止めてくださいよ」

「いやあ、出来るもんだなぁ。次は20匹に挑戦」

「キットさん!」


ボク、キットさんをギロっと睨んでいます。


「何可愛い顔しているんだ、副」


と、蕩けるような笑顔をこっちに向けました。あ、甘い・・睨んでいるんですけどねぇ?おかしいなぁ?


「その副って、いい加減やめてくださいよ。他のメンバーがいない時もそれって」

「なに、不満か?」

「猛烈に無満です」

「うーーん・・お前の名前、呼ぶの照れるんだよな」

「何故に」

「ワイフ、って呼びそうになる」


・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・?

・・・・・・・・・・・・・・!!!


「そうだ、ワイフ」

「にょ?」


キットさんが、ボクの肩を抱き寄せます。


「呼べる仲になっちまおう」

「ボクでよろしいので?!」

「いいぞ、ボクっ子、我がワイフ」


ぎゃあーーーーー!!

ボクは脳内で絶叫しています。



とりあえず、キットさんは男色家ではなかった、と。

ま、今ベッドの中なんですけど。隣の彼に、気になっていた事を聞いてみました。


「キットさん」

「なんだ、ワイフ」

「照れるー、にゃああ」

「はいはい、で?」

「まさか、バイでは」

「・・・・お仕置き決定」




キットさんはランクがSになりました。そして・・・・ちょっとS気味。


ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。連載もあるよ!

どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。


pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。

https://www.pixiv.net/users/476191

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