一章8『紹介して貰った』
取り敢えず自律組合へ俺は赴いた。自律組合は冒険者の仕事場というイメージがあるが、食事場所や街の案内など様々な業務を受け持っている為、多くの人々から重宝されている。
勿論王都にも自律組合は存在していて、王都の自律組合は王国中の自律組合の中心機能を持つ自律組合王国本部である。
ただ大陸全土の自律組合の総本部は王国外に設置されており、父である国王の密かな目標に自律組合総本部を王国に移させるというものがあるらしい。
ーー尤も到底出来るとは思えないのだが……
イニーツィオの自律組合もそれなりに広く、多くの冒険者で座席は埋まっている様である。一先ず俺は総合案内所の看板のある所迄行くことにした。
総合案内所には人は並んでおらず、受付嬢は楽しそうに談笑をしている。前の世界でもそうだが、総合案内所というのは、余り仕事が無いイメージがある。勿論総合案内所がなければ困ることがあるのだが、日常生活に於いて必要とすることは少ない。
ただ今回は違う……イニーツィオは王都と違って俺の庭ではないのだ!だからこそ誰かに聞いてみなければならないのである。
早速受付嬢に話しかけようしたところ……恥ずかしながら、可愛い亜人の女性が二人《猫人族・狼人族》……その二人共、細い容姿には似合わず、たわわに実った二つの大きな果実に目を奪われてしまった。
因みにだが猫人族の女性の方は……ロリ属性である。本当に因みになのだが。
自律組合を初めてとした受付には、可愛い女性が度々配置されている。逆に可愛いか綺麗でなければ受付嬢にはなることが出来ないと言われるほどである。
そしてその中でも人気の女性らには非公式のファンクラブすら存在する場合もある。何故そんなことを知っているかというと……其れは未だ秘密である。
「いらっしゃいませ。何かお探しでしょか?」
狼人族の女性が声を発した。狼人族の女性は灰色の髪をしていて、ピーンと耳は立っている。少し耳をモフりたくなってしまったのは内緒だ。
(いや『モフらせてください』とお願いをしたらモフらせて貰えるのだろうか)と考えつつ俺は話した。
「何処か良いレストランはありませんか?予算は金貨二枚程あるので……」
早速先程の臨時収入を使うことにした。王族たるもの、常に臣民の為にお金を使う機会が有れば使わなければならない。其れは高額であればあるほど、尚良いのだ。
此処でケチって少ない金額で収めようとするのはナンセンスだ。此処で使ったお金は巡り巡って税金という形で国に徴収され、結局雑費として王族の元へやってくる。
受付嬢は『金貨二枚』と聞き驚いた様子であったが、一瞬で表情を引き締め直した。
そして彼女は徐に後方にある棚から巻物状態となった大きな紙を持ってきた。どうやら地図の様である。この世界の地図は軍事戦略上の事もあり、詳細な地図を発行することは禁止されている。
戦前の日本でも、帝国海軍施設のある海域は空白にされていたり、改竄されていたりしたのと同様に考えて貰えると分かりやすいだろう。
主要な建物のみ描かれている簡易地図を広げて、紹介したのはイニーツィオで三番目高級なレストランらしい。
そのレストランはサービス、店内の様子も完璧で、最も高級なレストランに引けを取ら無いにも関わらず、値段は中流階級以上向けの設定らしい。そして……この街で最も料理が美味しいらしいのだ。いけない、いけないつい涎が出てしまっていた。
百聞は一見にしかず……行ってみることにしよう。