クンポルの涙
私は田中、人のいない地で自給自足をして暮らしている
「さて、今日も畑に水をやりに行くか」
一面に広がるトウモロコシ、今年はとても豊作だ
「ん?畑が荒らされている!」
おそらくイノシシだろう、トウモロコシが食い散らかされていた
「酷いもんだ」
これ以上食われても困る、こういう時の為に用意していた動物用の罠を置いておこう
こういう事があるから自給自足は楽じゃ無い
しかし、私は人間社会で暮らすより自然の中で1人、生きていく事を選んだ
動物達と上手くやってこそ本当の自給自足だろう
そして今日はコーンポタージュと卵のピッケルをディナーにし就寝した
「クンポル、クンポル」
早朝、畑の方からなにか動物の声が聞こえる
「畑荒らしが罠に引っかかったな」
私は即座に向かった
そこには想像もしていなかった謎の生物が罠に引っかかっていた
「クンポル、クンポル」
大きさはサッカーボールより少し大きいくらい
見た目はカエルに鳥の毛を生やした様な姿の生き物
「君は何だ?」
「クンポル、クンポル」
「クンポルと言うのか?」
そして私は罠を外し飼うことにした
「また畑を荒らされても困るしな」
クンポルは私にとても懐いた
「クンポル、君の好きなトウモロコシだ」
「クンポル!!!クンポル!!!」
おおはしゃぎだ
そんなクンポルとの生活が1年程続いたある日
クンポルが子を産んだ
「お、お前どこで?」
「クンポル///」
そして子クンポルはすくすく育っていた
月日は流れ、子クンポルはクンポル程の大きさになっていた
子クンポルになにか美味しい物を食べさせたい、そう思った私は久しぶりに町に出てケーキを買った
「ケーキを買ってきたぞ!」
あれ、クンポルがいない
「クーーーンポル」
畑の方から悲鳴が聞こえた
どうした?!
私は畑に一目散に走った
そこにはイノシシとボロボロのクンポルがいた
おい!!
イノシシは逃げたが
そこには息をしていないクンポルがいた
「おい、クンポル…嘘だろ」
「嘘だーーーーーー」
クンポルは私の畑を守ってくれたのだろう
畑なんて君の命に比べたら…比較にならない
私は人生で経験した事が無いくらいに泣いた
そして決意した
「子クンポルは私が大切に育てる」
18年後
「お父さん〜まだトイレ終わらないの?」
「もう少しだ待っていてくれ」
子クンポルは高校を卒業し今日からここ群馬を離れ東京に行く
「じゃあ、出発するか」
娘の巣立ち、電車で行くとこの子は言ったが心配で車で新居に連れて行く所だ
「お父さん、今までありがとうございました」
やめてくれ、ただでさえ走りづらい山道なんだ
視界が悪くなってもっと走りづらくなるだろ
「なにか新しい生活で困ったら連絡するんだぞ」
「お父さんも体に気をつけて長生きしてね」
そして私の4年間のキャンパスライフが始まろうとしていた
「あーーー初めての都内新生活、色々不安だなぁ〜」
まずは家具屋さんから行ってインテリア!
バイトとかも探しつつ〜 大学に備えるぞ〜
そんなこんなで今日は大学の入学式、ネイルをして髪も巻いて
大丈夫だよね私、もう田舎っぽくないよね
ちょっと不安になりながら案内された席に座った
「あーーー入学式とかだり〜」
隣にちょっとチャラチャラした男性が座った
「よろしく〜 よろしく〜」
周りに声をかけている
「よろしく〜おれ一郎 現役合格です〜」
私に話しかけてきた、こういうタイプの人苦手かも…
「あ、どうも 田中子クンポルです」
「可愛い名前だね、よろしく〜」
私はその瞬間、恋に落ちた
その日はそのまま家に帰ったが一郎の事が頭から離れない
「はぁ〜、明日も会えるかな」
胸がいっぱいで苦しい、もう寝ちゃおう
「ん〜〜〜あ、寝すぎた…遅刻だ…」
少し落ち込みながら学校に向かった
もう1限には間に合わないかなぁ〜
「おい!お前も遅刻かよw」
後ろを振り抜くと一郎がいた
「え、一郎君も遅刻なの?」
そこには偶然彼がいた
「寝坊しちゃって萎えてるわ〜 今日一緒にサボらない?」
「えっ2人って、2人で?」
「なんか大学とかモチベ上がんないわ〜やっぱおれに向いてないかな〜 今から新宿行こうよ」
その日、私の初めてを一郎に。
そして私は一郎に依存し彼の影響で大学に行かなくなり
夜の仕事で一郎と遊ぶお金を稼ぐ日々を過ごした
「おい、子クンポル 5万今日入るんじゃなかったのか?」
「お給料日は明日だよ…もう高い薬買わないで…一郎最近酷いよ…」
「うるせ〜」
バシッ!!
「もう、無理だよ…」
私は泣きながら無我夢中に走った
逃げなきゃ 本能が言っていた
そんな時、目の前にイノシシが通りかかった
「お前は、私の母親を殺した!!!」
そのままイノシシに殴りかかった所をツノで反撃され、私の短い人生が終わった