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アンチ美少女  作者: 恵美乃海
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2 岸本くんからの忠告

 新しいクラスは、三組。

要くんは、新しくクラスメートになった顔触れをざっと見渡した。

 二年のとき同じクラスで、仲良くしていた岸本とまた同じクラスになっていた。

 それは有り難い。


 だが・・・・・・

要くんは、新しくクラスメートとなった顔触れをざっと見渡し、ため息をついた。


 福沢がいる。

神戸にある、東大の合格者数では全国でも一、二を争う私立高校を目指しているという秀才だ。

大物ではないか。


 そして山岡さんがいる。小学生だったとき、四年間同じクラスだった。

 久しぶりに同じクラスになった。

 小学生のとき、大きな印象があったわけではないのだが、中学三年生になった要くんの目であらためて見ると、ふーん、こんな綺麗な女の子だったのか、という感想を持つ。

大人っぽくて可愛いという形容詞は似合わない。


 さらにはっきりと可愛いな、と言わざるをえない女の子が数人いた。

 こりゃ困ったな。

 要くんは、思った。

 普通の公立中学のレベルで言えば結構なスター軍団かもしれない。

 とりあえず、山岡さんや、可愛い女の子たちには近づかないようにしよう。

 要くんはそう思った。


 担任となったのは上田先生。三十歳代(多分)の女性。教科は英語。


 集団指導体制という言葉が好きな要くんにとっては、あまり居心地がよくないクラスになってしまうかもしれない。

 でも、このクラスなら委員長にはならなくてすむな。

 要くんはほっとした。


 中学二年生のとき、要くんは一学期も二学期も、そして三学期も委員長だった。

 卓越したリーダーシップがあったわけではない。


 クラスにはだいたい四十人くらいいたのだが、委員長の選挙で要くんへの投票は、五票か六票。

 それで委員長になってしまっていたのだ。

 二年のとき、福沢くんはとなりのクラスの委員長だったので、顔は知っていたのだ。


 新しいクラスでの委員長。立候補はなし。

選挙の結果、委員長は、福沢くん。副委員長は、山岡さんになった。

 クラスの半数近くが福沢くんに投票していた。

 要くんは、保健委員になった。


 要くんの友人で、また同じクラスになった岸本くん。

 この三組がスター軍団だとするなら、彼もその一翼を担う存在になるはずだ。


 岸本くんはハンサムだ。成績は、総合したら要くんより良い。そして運動もよくできる。

 が、リーダーシップがあるといえる性格ではないので、二年のとき、委員長選挙ではだいたい要くんより一票少なかった。風紀委員をしていた。


 今年の正月、冬休みに、要くんは花畑町にある岸本くんの家に遊びに行ったことがあった。

 色々話しているうちに、女の子の話になった。


 去年、要くんに年賀状をくれたクラスの女の子は七人いた。

 今年は四人に減っていた。

 倉田さんとふたりで会ったのが、その原因なのだろうな、と要くんは、推測していた。

 面白くない男の子、というレッテルを貼られてしまったのだろう。


 岸本くんには、クラスの半分以上、十三人の女の子から、年賀状が来ていた。

 そのクラスの副委員長からも来ていた。

 委員長である要くんには、その子からの年賀状はなかった。


 ある女の子からの年賀状には、

岸本くんは、クラスの女の子に一番人気があります。

と書かれていた。

こりゃよりどりみどりだね。

要くんは思った。


でも岸本くんは誰とも付き合っていない。

要くんは、訊いてみた。

「岸本は、好きな女の子いないの」


「要、お前、「葉隠」は読んだか」


「いや、読んでないよ。武士道とは死ぬことと見つけたり、だったっけ」


「うん、「葉隠」の中にこういう言葉がある。恋の至極は忍ぶ恋」


「ふむ」


「俺はそういう恋をしたい。ただひとりの人を黙って思い続ける。」


「ふーん」


「でもまだ、この人だ、という人に出会えていないのだ」


「そうか」


 要くんは、岸本くんに、自分が女の子に対して感じていることを話してみた。

みんなに可愛いと思われている女の子は苦手なのだということを。


「なるほどなあ。倉田さんと、何で上手くいかなかったのだろう、と思っていたけど。そういうことか。でもお前、変わっているなあ」

岸本、お前も充分に変わっていると思うぞ。

要くんは、そう思ったが何も言わなかった。


「でもなあ岸本、俺は、みんなが可愛いと思う、そういうレベルの女の子は苦手なんだけど。女の子は好きなんだ。

お前みたいに、忍ぶ恋をしようとも思わない。彼女ほしいな、と思っている」


「じゃあ、どんな女の子がいいんだ。ブスが好きというわけか」


「違う、そういうことじゃない」


どうやって説明したらいいだろう。


「なあ岸本、俺は女の子にはもてると思うか」


「そうだな、クラスで一番人気というわけにはいかないだろうが、四番目、五番目、六番目。それくらいのポジションにはいるんじゃないかな」


「うん、俺もそれくらいかなあ、と思っている。

でとても可愛い女の子だとね。この子だったら、もっとカッコイイ男の子と付き合えるだろうに、何も俺でなくても。そんな気持ちが働いてしまって、何かつまらないんだ。積極的な気持ちになれない」


「ふーん」


「俺は、実は女の子はみんな可愛い。そう思っている。見ていて楽しい。でもクラスの男の子が女の子のことを話題にすると、出てくる女の子はだいたい決まっている。

他の女の子もみんな可愛いのにな。俺はそう思っている。」


「ふうむ」


「さっき岸本は、俺のことそこそこにはもてるだろう、と言ってくれただろ。俺も、そうなのかな、と自惚れている。

で、クラスの中であまりもててはいない女の子を見ると、この子、僕と付き合うことになったら、きっととても喜んでくれるだろうな、と思ってしまうのだ」


「で、それは特定の女の子に対してそう思うわけではないと」


「そう。彼女ほしいな、と思うけど、この女の子でなければだめだ、とは思えないんだ。どうしたらいいんだろうね」


「うん、まあとりあえずは、お前が今言ったこと、俺以外の奴には誰にも言うな。

そうでないと、お前と付き合う女の子は美少女ではないことの証しということになってしまう。

それを喜ぶ女の子はいないだろう。

どの女の子も可愛いと思えてしまう、というのはいいことなのかもしれないな、とは思うけど。

でもそのこと、嫌う奴もいるかもしれない。なあ要。」


「何だ」


「お前、もしかしたらとんでもないプレイボーイになってしまうかもしれないな。気をつけろよ」


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