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サイキック症候群 〜psychic syndrome〜  作者: 響 夏華
能力者たちとの出会い
3/19

第3話 食べ物執着




11月―――――


秋も終盤を迎えようとしていた今日この頃。

響樹と湊はあのお互いの素性を明かした日から行動を共にしていた。

転校当初よりも表情が丸くなった響樹はクラスにも段々馴染んできて、他のクラスメートとも多少会話をするようになった。

そんな中、慣れというのは時折トラブルの元になることもある。


「だから!何度言えば理解するんだよ響樹くんは!」


「理解できるわけないだろ!無茶苦茶なんだよお前は!」


クラスで2人の果てしない奮闘が繰り広げられている中、周りは男女共々 火の粉が飛び移らないよう見物者としてその光景をただただ見ていた。


「なんでそんな嫌なんだよ!」


「ふつーに嫌に決まってるだろぉ?!」


「いい加減諦めろよ…文化祭でメイド服着るだけだろ、子供みたいに駄々こねるなよ」


「どの口が言ってんだよ!駄々こねてんのはお前だ湊!」


響樹の剣幕に湊ははぁと溜息をつき、やれやれと首を横に振る。


「大丈夫だよ」


「大丈夫ってなんだよ、ってかなんで俺が悪いみたいになってんだ?」


湊は親指を立て、満面の笑みで言った。


ことの始まりは、もうすぐこの学校の文化祭が開催されるため、クラスの出し物である女装喫茶の配役を誰がやるかHRで決めていた。

そして湊が響樹をメイドに推薦し、本人は断固として拒否しているのだ。


「そもそもメリットがない」


響樹の口癖〝メリットは?″を聞かれると言葉が詰まるのが最初だった。

しかし、湊は既に攻略の知識を身に着けていた。


「響樹くん」


湊は響樹に近づき、耳元で囁いた。


「放課後、駅前に新しくできたケーキ屋でごちそうするよ」


「ぐっ・・・・」


湊のその言葉に響樹はとてつもなく動揺していた。

響樹は大の甘党であり、最近駅前にできたケーキ屋の前を通るたびに入りたそうにしていたことを湊は知っていた。

女性客とカップルが多いため、男一人で入るのは気が知れる・・・と一人渋っていた様子も何度か見かけたことがあった。

そもそも最初から力で心を読んでいた。


「湊・・・お前卑怯だぞ」


「これ以上ないメリットだろ?さぁ・・・どうする?」


湊はニヤッと不敵な笑いを見せた。

響樹は苦渋の選択を迫られ頭を抱えたが、観念したようにスッと湊に向き直った。


「・・・わ・・・わかった」


その言葉を聞いて湊は「交渉成立~」と周りにピースを送った。


「音森よく言ってくれたな!見直したぞ」


「音森くん本当にありがとう!」


響樹は自分の周りに群がってきたクラスの男女から感謝を述べられたことに理解できず困惑していた。


「え・・・なんだ?」


「いやー実は女子から圧かけられてさぁ~」


クラスメートの1人が事の経緯を話してくれた。

文化祭でやる出し物が女装喫茶に決まった時、どうせやるならクオリティの高いものにしたいということで女子全員から響樹が推薦された。

しかし、響樹は女子とはあまり関わりがなく、性格上すんなり引き受けてくれるとも思わなかったため、湊に相談したところ「俺に任せろ!」と言われ、今に至るということだ。


「・・・湊、お前初めから甘いもので釣ろうと考えていただろ?」


「ありゃ、今頃気づいた?」


響樹は自分の拳に力を込め、今にも湊に殴りかかりそうな状態を男子たちがどうどうと宥めていた。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「あーとんでもないことになったな」


昼休み、二人は昼食を持って体育館裏の階段に腰かけていた。


「まぁまぁ、今日なんでも好きなもの奢るからさ」


「当たり前だ!絶対駅前のケーキを奢ってもらわないと気が済まない!」


甘いもののことになるとどうも響樹は我を忘れてしまうみたいだ・・・

そう思った湊は一つ響樹の弱みを握ったと密かに心内で喜んでいた。


「ん?ここに置いておいた俺のパンがない」


響樹は傍に置いておいた昼食のパンがなくなっていることに気づきその場から立ってみたり、辺りを見回したりしたが見当たらない。


響樹は湊を睨みつけた。


「え・・・俺じゃないよ?」


「あ?お前以外に誰がいるんだよ」


「ちょ、待て待て待て!今までずっとしゃべってたじゃん!」


響樹が拳を作った瞬間、湊はズズッと後ろへ下がり距離をとった。

すると奥の茂みからカサカサッと音がして視線を向けた先には一匹の猫がいた。

首輪をしていないこととだいぶ薄汚れていることから野良猫だと思うが、よく見ると口に何かくわえていた。


「・・・!俺の昼飯!」


突然出した大きな声にびっくりした猫は素早くその場から逃げてしまった。


「待て!猫!!」


響樹はバッと猫を追いかけて一直線に走って行った。


「…響樹くん、食べ物の執着がすごいな」


ボソッと呟きながら湊も続くように追いかけた。






響樹のパンをくわえた猫を後ろから見失わないように二人で追いかけた。

そして学校のグラウンドの隅の方に追い込み、逃げないようにガードし、逃げようとした猫の体を響樹は両手でガシッと掴み、持ち上げた。


響樹に掴まれた猫は、口にくわえているものをなかなか離さずジタバタ暴れていた。


「それ返せ・・・っておい!暴れるな!」


「よっぽどお腹すいてんのかなー」


どうしたものかと2人は「うーん」と唸りながら途方に暮れそうな時だった。




「その子、放してあげて」




背後から聞こえた声に2人は振り返った。






響樹くんは大の甘党です(笑)

甘いものには目がない響樹くんは普段とのギャップがすごいです。


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