エピローグ 新生活のはじまり
「な!? そんな……魔力切れだって……!?」
ヒューイは、あからさまに取り乱しはじめた。
実を言うと、戦闘がはじまるのと同時に探知魔法を発動させて、ヒューイの魔力量の減少を確認していたのだ。
彼の頭上に表示された魔力量はいま、0になっている。
当たり前だ。
いくらなんでもあんなに打ちまくっていては、子供の魔力量なんかすぐに尽きてしまう。
魔力量はレベルに合わせて増えるものだ。
ヒューイがいくら名門一家の生まれで、魔法の才能があったからって、六歳の子供があげられるレベルなんてたかがしれている。
僕もそのことは身に染みてわかっているからね。
最初からこれを狙っていた。
「魔法、使えなくなっちゃった?」
「く、くそ」
「あっれー? さっき言ってたよね? 魔法が使えない人間に価値はないって。いまの君ってもしかして」
ヒューイの顔から、さあっと血の気が引いていく。
見開いた目は、恐ろしいものを見るかのように僕を凝視していた。
そのとき、ちょうどいいタイミングで予鈴を告げるチャイムが鳴った。
「教室戻ったら? もう君にできることは何もないんだし」
「くそ! 覚えてろ……!」
「わあ、待ってよ、ヒューイ!」
まさに負け犬の遠吠えだね。
ヒューイと取り巻きたちは、逃げるようにしてAクラスのほうに駆けていった。
これで一応、一件落着かな?
さて僕も教室に――。
「す……すごい!」
「ほんと、すごいよっ!」
「あのいじめっ子をかっこよく追っ払っちゃうなんて!」
「わあ!?」
僕の周りにFクラスの生徒たちがわっと群がってくる。
メイジーを中心に、次々言葉をかけられた。
「エディくん、スポーツ万能なの!? 魔法のボールを簡単によけちゃうんだもん!」
しまった。
撃ち返すわけじゃないしいいやって思ってたけど、魔法を避けるなんて、確かに普通の子供じゃ不可能かも。
「えっと……その……。ぼ、僕の家ではいつもああいう特訓をしているんだ!」
「すごーい! あのいじめっ子も追い返しちゃったし」
「すごくなんてないよ。あいつが勝手に自爆してくれただけだし」
「でも全然怖がってなかったよね?」
「え!? い、いや、そんなことないない。すごくこわかった!」
引き笑いをしながら必死に主張する。
かなり無理やりな誤魔化し方でも、子供たちはさすが素直だ。
あっさり信じてくれた。
「あ、あの……エディくん。こわかったのに庇ってくれたんだね。本当にありがとう」
進み出てきたのは、苛められていた気弱な少年だ。
「エディくん、僕より小さいのにすごいよ」
そんなにチビなのかな僕。
ヒューイにも指摘されたし。
ちょっと気になってきた。
でもまだ成長期だから大丈夫なはずだ。
「ありがとう」
少年に手を握られて、僕は驚いた。
「僕、あいつにいじめられて怖かったけど、でも君みたいな友だちができたからよかったよ……」
「え……と、友だち?」
思わぬ言葉にきょとんとしてしまう。
「あっ、ごめん。嫌だったかな?」
「いや、びっくりしただけ」
「じゃあ友だちになってくれる?」
「……う、うん」
「僕も君が困ってるときは助けるからね。本当にありがとう!」
「私も友だちになりたいな」
「僕も!」
「私も!」
メイジーや他の子たちも次々名乗りをあげる。
どう反応したらいいのかわからなくて、僕はぎこちなく笑い返した。
だって友だちって。
前世の頃憧れていた友だちが、ついに僕にもできたのだ。
なんだろ、このほわほわした感じは。
「あ、本鈴のチャイムだ! エディくん、いこう!」
そう言って、少年が手を差し伸べてくる。
僕はちょっと戸惑いつつ、その手を握り返した。
わいわい騒ぎながら、クラスメイトたちと一緒に教室の中に入る。
そうだ。みんなの名前、あとで聞いておかなくちゃ。
こんなふうにして、ちょっぴり騒がしい僕の学園生活がスタートしたのだった――。
これにて本編完結です!
ここまでお付き合いいただきありがとうございました!*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*
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