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【書籍化】6歳の賢者は日陰の道を歩みたい  作者: 斧名田マニマニ
3章 王立学園に入学する
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29話 入学のお祝い

 その日の夜、家に帰ると、家族が僕の入学を祝って家族だけのパーティを開いてくれた。

 机の上に並ぶディナーは豪華なだけじゃなく、僕の好物ばかり。

 食べきれない量の料理を見て、僕は感嘆の声を上げた。


 好物を用意してもらえたことも、もちろんうれしい。

 でもそれ以上に、お祝いの準備をしてくれた家族に対する感謝の気持ちで胸がいっぱいだ。


「みんな、ありがとう。すごくうれしいよ」

「エディに喜んでもらえてよかったわ」

「ほら、エディ。今日は腹がはち切れるまで食うんだぞ!」

「ははは、まったく父さんったら。エディ、ほらミートパイもおいしいぞ。取り分けてやるから皿をよこせ」

「ありがとう。でも僕、自分でできるよ」

「まったく。ローガンはいつまでもエディを赤ちゃんだと思ってるな」

「おいおい。それは兄さんだって同じだろう!」

「お兄ちゃんたちはエディがかわいくて仕方ないのね」

「それもそうだ。エディはいつまでもうちの可愛い末っ子だからな!」


 相変わらず過保護な家族たちから、明るい笑い声が上がる。

 前世の記憶が戻ってから、こういうやりとりは恥ずかしくて仕方ない。

 見返りを求めない、ただ一方的に注がれる無償の愛情。


 僕は椅子の上でもじもじとしてから、ひどい早口でもう一度お礼を伝えた。

 家族はそんな態度を取っても気にしない。

 それどころから、「照れてるんだな、可愛いやつめ」と言われて、頭をわしゃわしゃ撫で回されてしまった。


「わあ、もう。うれしいけど、みんなそろそろ普通にしてよ」

「可愛いエディがついに一年生になったんだ。そんな特別の日に、普通になんてしていられるか!」

「旦那さま、奥さま、坊ちゃん。メイリー国からお祝いの品が届きました!」

「えっ、また!?」


 思わず席を立って叫び声をあげる。

 すでに何日も前から、姫や王さまから続々お祝いの品が送られてきていたのだ。

 添えられていた手紙を見ると、今日届いたものがメインのプレゼントということらしい。


 今までのあれらが前座のつもりだったのか?

 ちなみにこれまでもらった品は、エメラルドのついた万年筆やダイヤモンドでできた筆箱、などだ。

 どうやって使えっていうんだ、そんなもの。

 とんでもない成金が入学してきたって思われちゃうよ。


 気持ちはありがたいので、それらは家での学習時、使わせてもらうことにした。


 なんか今回もとんでもないものが出てきそうで怖いな……。

 不安を抱きつつ中身を開けてみる。

 中から出てきたのは、黄金で作られた時計だった。

 しかも文字盤にはびしりと宝石が埋め込まれている。

 う、うわ。

 重量感すごい……。

 大人顔負けどころか、子供がつけたら絶対に重い。

 気持ちの話じゃなく、物理的に。


 六歳児の入学祝いにこんなもの贈るか……?


「ねえ、これはさすがにもらえないよ。送り返して」


 僕は驚きと呆れから、ガクンと肩を落とした。

 さすが王様とお姫様。

 発想が一般人とはかけ離れているな……。


 ちなみにこの時計。

 何度送り返しても、戻ってきてしまうので、最終的には渋々受け取って、家の金庫にしまってもらうことになるのだけれど、それはまた別の話だ。


 ◇◇◇


 ――夕食後、竜人族の族長から魔法を使った連絡が入った。


『部下たちが俺の魔法を見たいと言って聞かないのだ。エディ様に言われたとおり、むやみやたらに使うものではないと言ってなんとか対処してるものの、いつまで乗り切れるかわからん』


 魔法によって映し出された族長の幻影が、頭を抱えて唸り声をあげる。

 根が正直なタイプだからなあ。

 部下をちょっと誤魔化すだけでも、相当苦労しているみたいだ。


『ん、わかった。その件はそっちに行ったときになんとかするから、安心して』

『それは助かった! して、エディ様。こちらにはいつおいでなさる!? 明日か、明後日か!?』

『いや、明日も明後日も学校だって。僕の休みは土日だよ。ちゃんと覚えておいて』


 転移魔法を使えば一瞬で移動できるといっても、宿題だってある。

 何より、平日の夜までバタバタ動き回るなんてごめんだ。

 そんなものは僕の求めている「穏やかで平凡な生活」ではないからね。


『ううむ。まだ四日もあるのか』


 ため息交じりに『早くお会いしたい』などというから、僕は頬を引きつらせた。

 大柄の図体をした魔族の男に、会いたがられてもうれしくはない。


 とにかくまた土曜日にと言って、僕は族長との通信魔法を切った。

 さあ、お風呂に入ろうっと。

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『幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった』
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【あらすじ】
一個下の幼馴染で彼女の花火は、とにかくモラハラがひどい。

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そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の生徒から賞賛を浴びて、学園一の人気者になっていた。
しかも、花火とは真逆で、めちゃくちゃ性格のいい美少女から、「ずっと好きだった」と告白されてしまった。

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