表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】6歳の賢者は日陰の道を歩みたい  作者: 斧名田マニマニ
2章 闇の支配者、誕生
10/32

10話 魔法適性診断Sクラス級

前回の話は内容を途中から修正しました

 魔王を倒してから10日が経った。

 僕は今日、母に付き添われて、王立学院の入学前検診に来ている。


 今日は、学校生活で必要な教科書や体操着を購入したり、身体測定を受けたりする。

 そしてもっとも大事なイベント、魔法適性診断もある。


「エディの適性診断はどうなるかしら。ママ心配だわ。エディが天才だということが気づかれちゃって、攫われたりしたらどうしましょう!」

「はは……」


 僕は若干、頬を引きつらせた。

 魔法適性診断では、専用の魔道具を使って、魔法適性度が測定される。

 その子の持つ魔法適性値と、習得可能な魔法が印字されるのだ。

 そうやって個々の才能を測り、結果として出た数値によって、クラス分けがなされる。


 王立学院のクラスは能力の高い順にわけられていて、数値の高い順に、A、B、C、D、E、Fクラスとなっている。

 僕が狙うのは、当然Fクラスだ。


 だけど、僕は最強賢者の能力を引き継いでしまっている。

 普通に診断されると、とんでもない数値が出てしまうわけで……。


 まあ、もちろん、対策はちゃんと練ってきているけどね。


 僕は母に気づかれないよう、ポケットに入っている紙をそっと確かめた。

 これがあれば問題ない。


「それじゃあエディ、いってらっしゃい。ママは入学手続きの説明会に行ってくるからね」

「うん。僕も頑張ってくるよ」


 母に笑顔で手を振って別れる。


「ママどこ? ひっく、ママ……」

「わーっ! これなんの道具? 面白ーい! 俺に貸してよー!」

「きゃーっ! もう、男の子って本当に乱暴なんだから!!」


 周囲のお子様たちがわいわい楽しそうにしている中、僕は粛々と身体測定、簡単な学力試験をこなしていった。


 身長が平均よりも低いのは気になったけど……まあ成長期だからね。

 誤差の範囲だ。うん。


 そして、いよいよーー。


「はーい。魔力適性診断を受ける子たちはこっちに並んでね」


 数人の子供が並んでいる列に誘導されて向かう。


 魔力適性診断ではドーム型の魔法道具の中に、手を突っ込まさせられる。

 そのまま数秒待つと、カリカリ音を立てながら機械が紙を吐き出す。


 僕はひょこっと顔を出して、目の前の子の数値を覗き見た。


 *********************

【新1年生 083番 G.ノートン】


 魔法適性値:C’

 習得可能魔法:土魔法(弱)、土魔法(中)、治癒魔法(弱)、痺れ魔法(弱)、痺れ魔法(中)、硬化魔法(弱)

 *********************


 よかった。

 表記の紙は、昔とまったく変わってないみたいだ。


 これなら考えていた方法で、うまく乗り切ることができる。

 続いて僕の番がやってきた。


「E.ラドクリフ君。お願いします」

「はーい」


 白衣を着た女の先生に指示されたとおり、魔法道具に手を突っ込む。

 ひんやりするような、温かいような感覚が手のひらに伝わってくる。

 それから数秒後……。


 魔法道具はとんでもない長さの紙をはき出しはじめた。


「えっ!? どうなっちゃったの!? 紙が止まらないっ!?」


 その様子に驚いて、教師が魔法道具に飛びつく。


 *********************

【新1年生 084番 E.ラドクリフ】


 魔法適性値:SSS

 習得可能魔法:火魔法(弱)、火魔法(中)、火魔法(強)、火魔法(超)、水魔法(弱)、水魔法(中)、水魔法(強)、水魔法(超)、ーーーーー………………………………

 *********************


「こ、これはいったい……!?」

「ロイス先生、どうされました!?」


 異常を察知した他の教師たちが集まってくる。

 わあ、予想通りやっぱり大騒ぎになったな。


 *********************

 風魔法(弱)、風魔法(中)、風魔法(強)、風魔法(超)、土魔法(弱)、土魔法(中)、土魔法(強)、土魔法(超)ーーーーー………………………………

 *********************


「エディ君の診断結果が止まらないんです!! まさかこんな……こんなことが!?」

「落ち着いて下さい!! いや、しかしこれは……登録されているすべての魔法が出力されているんじゃないか!?」

「これは、学院始まって以来の秀才……いや、天才だ!! この子はAクラス……いや、特別にSクラスを作って、個別授業をしてもいいくらいだぞ!!」


 教師たちの視線が、一斉に僕へと集まる。

 他の子供たちも、興味津々という感じでわらわらと集まってきた。


「あの子どうしたの? すっごい魔法が使えるのかな?」

「僕よりもあんなにたくさん……!」


 そろそろかな。

 僕はすうっと息を吸って、無邪気な声をあげた。


「わあ! この魔法道具、壊れてるんだねー!」

「こ、故障……? でも、いままでそんなことは一度も……」

「いや、それしか考えられんでしょう! こんな数値を叩き出すなんて前代未聞ですよ!!」


 教師たちがてんやわんやしている隙を突いて、僕は他の魔法道具に手をかざす。……ふりをした。

 そしてすかさずポケットから、仕込んでいた紙を取り出す。

「ほら! 先生たち、見て! こっちの機械でやったら、こんな紙になったよ?」


 *********************

【新1年生 032番 M.ラドクリフ】


 魔法適性値:F

 習得可能魔法:鈍足魔法

 *********************


 教師たちは顔をつきあわせるようにして、僕の紙を覗き込んできた。


「うわっ、これは……」

「すごい……こんな最低な数値は、ラドクリフ家の次男以来では!?」


 そう。

 これは正真正銘、Fクラスの人間のステータスだ。

 というか、名前でわかる通り、これは僕の二番目の兄マックスのものである。

 剣の才能に特化していて、魔法は得意ではない兄。

 兄も6歳のとき、同じように診断を受けて、Fクラスに配属された。

 いま僕が持っているのは、当時の兄が持ち帰ってきた紙だ。


 混乱している教師たちが気付く前に、用紙をさっと引っ込める。

 名前や番号が違うとバレないよう、敢えて騒ぎが大きくなるまで待っていた甲斐があった。


「いやあ、やはり故障だったんだな」

「大変だわ。この列の子達を他の列に移動させないと!」


 そんなふうに言いながら、教師たちは忙しそうに散っていった。


「エディ君、ごめんなさいね。もう行っていいわよ。その紙はおうちに持って帰ってもいいからね」


 優しそうな女の先生が、僕の数値を記録しおえると、すまなさそうに言った。


「うん! じゃあ持って帰ろうっと。先生、さようなら」


 僕はほっと胸を撫で下ろし、再び紙をポケットに仕舞い込んだ。

 助かったよ、マックス兄さん。

 心の中で兄に感謝する。


 うちのママがなんでも記念にとっておく人で助かった。

 これで計画通り、魔法適性診断はクリアできたな。

 よかったよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作はじめました!
こちらもよろしくお願いします( *ˊᵕˋ )

『幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった』
https://ncode.syosetu.com/n0844gb/

【あらすじ】
一個下の幼馴染で彼女の花火は、とにかくモラハラがひどい。

毎日えげつない言葉で俺を貶し、尊厳を奪い、精神的に追い詰めてきた花火。
身も心もボロボロにされた俺は、ついに彼女との絶縁を決意した。

「颯馬先輩、ほーんと使えないですよねえ。それで私の彼氏とかありえないんですけどぉ」
「わかった。じゃあもう別れよう」
「ひあっ……?」

俺の人生を我が物顔で支配していた花火もいなくなったし、これからは自由気ままに生きよう。

そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の生徒から賞賛を浴びて、学園一の人気者になっていた。
しかも、花火とは真逆で、めちゃくちゃ性格のいい美少女から、「ずっと好きだった」と告白されてしまった。

って花火さん、なんかボロボロみたいだけど、どうした?
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ