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天高く…

俺の重力魔法は日に日に強力になっていく。魔力量そのものの増加も目覚ましい。


とはいえ、我が馬カウィを一日中ずっと軽量化させておくのは流石に難しい。


結果、王都への帰還は午前中はカウィに乗って、午後は自分の足で歩くという形になった。


カウィ自身は最初母親との別れを寂しがっていたが、すぐに気持ちを切り替えたようで元気溌剌。常に走る喜びを全身で表現している。


道中、実は財布管理担当でもあったジャンが財布をジャラジャラと鳴らす。


「予定ではこんなに銀貨が余るはずじゃなかった。財布が重いですな。善きかな、善きかな。」

「折角だから、もう少し奥さんにお土産買っても良かったのに。」


 俺がそう言うと、ジャンは笑う。


「ハハハ!無駄遣いだ、とかえって怒られます。」


 あー、あの人ならそうかもしれない。


「ラナーもお土産買ってないよね?」

「私は大きな収穫があったので不要です。王子こそ、他はともかく、王妃様へのお土産は購入しましたか?」

「それを忘れるほど、僕も愚かじゃないよ。」


 ラナーが、そういえば、と話題を変えた。


「結局、最終日まで町長の館の盗聴の仕掛けは使われませんでしたね。」


 ジャンが答える。


「恐らく子爵本人が利用して、王子から少しでも多く金を巻き上げるための情報を手に入れようと考えていたのだろう。ところが賭場の件で仕掛けを利用しているどころじゃ無くなってしまった。」

「あの仕掛けを作らせるために職人に握らせた金も安くは無かっただろうに。」

「人間、追い詰められると訳の分からないことをするもんですな。ちなみに、あれを作った職人の情報もクロヴィス町長に渡しておきました。」


 ザイノルド子爵の犯した罪の数は多い。帝国は彼に厳しい処罰を与えるだろう。サビアの王子として帝国に思うところはあるが、しかしガイール帝国が中央大陸で最も優秀な法治国家であることも事実だ。




 王都への帰りの道も、途中の村で一泊して、翌日の昼過ぎには王都へ着いた。町民が俺を見て少し戸惑っている。


「あれ?ファルク王子がここにいる?」

「じゃあ、さっきのは王子の仕業じゃないのか?」


 どうやら何かあったらしい。事情を尋ねると、先ほど王城から何かが空へ飛び上がっていったらしい。ゴオオと大きな音を立てていたので、王都の多くの町民がそれを目撃したようだ。


俺はすぐに何があったかピンときた。カウィをジャンに任せて、王城に急ぐ。そして父さんや兄さんに顔を見せるより先に、まっすぐカリフ爺さんの部屋へ向かった。


やたら上機嫌な様子のカリフ爺さんが俺の姿に気づく。


「おお、王子!惜しかったのお!もうちょっと早く戻ってくれば、あれが見れたのに。」

「やっぱりあれを飛ばしたんだ。勘弁してよ、カリフ!せめて町から離れたところでやってくれ。町の人々が、また僕がなにかやらかしたと噂してるんだ。僕の妙な噂の半分はカリフ爺さんのせいだからね!?」

「いや、十分の一くらいじゃろ。」と急に冷静になったカリフが言う。


 カリフが飛ばした『あれ』とは、ロケットのことである。人工衛星を宇宙に飛ばしたりするロケットだ。前に俺がカリフに宇宙や惑星の話をした時から、カリフはロケットの製作に取り組んでいた。


中世レベルの技術しかないこの世界で大気圏外までロケットなんか飛ばせるのか、と思ってしまうが、実はこっちの世界のほうがロケットを高く遠くに飛ばすのは簡単だ。地球で使われていた化学ロケットは、大量の燃料を搭載する必要があり、それがロケットを重くしていた。しかし、ここには魔法がある。無から燃焼を生み出せるのだ。


まあ実際には、魔石やら魔導装置やらが必要だが、化学燃料に比べれば遥かに軽い。



 カリフは俺と話をしながらも、時折複数の水晶球を操作している。


「それは?」

「ああ。『ろけっと』に双子精霊の片割れを憑依させてある。そこから送られてくる情報がこの精霊憑きの水晶で見えるのじゃ。それだけじゃない。少しなら『ろけっと』の進行方向を調整することも可能。」


 けっこう凄いね。流石はサビア小王国一の賢人と呼ばれているだけのことはある。


「でも、よく父さんが許可したね…。」

「『ろけっと』は惑星軌道上で『じんこうえいせい』として機能するよう設計した。神の如く地上の様子を覗くことが可能だと言ったら許可がおりた。」


 カリフ謹製のロケットは人工衛星を搭載しているのではなく、ロケットそのものが人工衛星になるらしい。軌道計算とか無理だと思うんだが、その辺の調整は精霊がやってくれるらしい。便利過ぎるだろう、精霊。


「どれ。そろそろ大気の外に…うおおっ!!?」


 突然叫び出すカリフ。


「ど、どうしたの?」

「ろけっとが…衝突した。」

「??…衝突?なにと?」


 カリフはしばし水晶球を見つめ、それから答えた。


「天井だ。透明な世界の天井に衝突したのだ。」



 世界に天井がある。そんな訳が無い、と言いそうになったが堪えた。ここは異世界。そういうこともあるかもしれない。


己の内から湧き出てくる疑問を抑え、研究室で唸るカリフ爺さんを放置して、後回しにしていた父と兄への帰宅の挨拶を済ませることにした。


父さんには挨拶だけで済ませ、ムフタル兄さんにはイスタタウンでの出来事を詳しく報告した。


兄さんは黙って俺の話を最後まで聞いて、それから首をこきこきと鳴らした。


「それで、あの珍妙な馬を連れて帰ってきたのか。」

「えーと…すみませんでした?」

「いや、謝る必要は無い。基本良くやったと思うぞ。」


 素直に称賛されると、かえって不安になる。


「…よくやったと思うが、言うべきことがあるとすれば…油断するな、ということかな。」


 言葉の真意が理解できず首を傾げると、兄さんは話を続けた。


「帝国貴族が皆、その子爵のように愚かだと思うな。あんなものかと油断するな、ということだ。サビア小王国を軽視する帝国が、能力の低い者を我らの担当に回しているというだけのこと。『本物の帝国貴族』は手ごわいぞ。それを忘れるな。」


 耳が痛い。確かに俺の中にそういう気持ちがあった。要注意だ。


兄さんの忠告をしかと肝に銘じた。


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