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第三王子の日常

「お願いしますっ!」


 俺は謁見室で堂々と土下座する。


おでこに赤い絨毯の柔らかさを感じる。


すると、玉座にいる俺の父親、隻眼王スセリク二世は困った顔で首を傾げた。我が一族は皆黒髪に褐色肌だが、父さんの髪は星なき夜の闇を体現するかのように際立って黒々としている。


父の雰囲気は穏やか。これなら要求が通りそうだ。…と思ったのだが、王の隣に立つ若い男が厳しい声で否定した。


「駄目だ!前回、お前が町に出た時にどれだけの騒ぎを起こしたか忘れたか!あの『ぼおどげえむ』とやらに王都中が夢中になって、大変な騒ぎになったのを忘れたか!」


 この真面目くさった細身の男が俺の兄、王太子ムフタルだ。太い眉を逆立てて、後処理がどれだけ大変だったか延々とまくしたてる。


まあ、二か月前の出来事は確かに俺にも悪いところはあった。


軽い気持ちでこの国に存在しない新しい娯楽を提供してしまったのだ。


何故俺にそんなことが可能かというと、俺が転生者だからだ。


日本という別世界の国の記憶を持って、この国の第三王子として生まれ変わったのだ。


前の世界で平々凡々としていた俺は、一国の王子、しかもイケメンに生まれたことを大いに喜んだ。背が低いのが玉に瑕だが、この程度のことに文句は言うまい。


しかし生まれ落ちて14年。ネットもテレビゲームも無い世界で暮らすのは、王子という身分であっても退屈だった。つまらない歴史の勉強をさせられるのもうんざりだし、ちょっと王城の外に出るだけでも護衛がつく。


自分で遊びの道具を作って広げるくらい、許して欲しい。


そんなふうに思っていると、兄ムフタルの怒声が飛んだ。唾を飛ばさずによくこれだけ喋り続けられるものだ。


「おい、ファルク!聞いているのかっ!?」


 俺が呆けた顔を上げると、兄さんが更に苛立たし気な表情になった。だが、その兄を父さんが宥める。


「まあまあ。確かにあの一件は大変だったが、結果的に我が国で生産した遊戯盤ぼおどげえむを他国の商人が買いにくるようになった。おかげで王城のリフォーム予算も確保出来た。」


 父さんが手を広げて、謁見室内の様子を見るように促す。張り替えられた壁のアラベスク模様が美しい。


「しかし…。」

「それにここ二か月間、ファルクもよく反省し、罰として与えられた数々の宿題もちゃんとこなしている。そうだな?」


 俺はここぞとばかりに強く頷く。数学、古典、歴史などの面倒な勉強ノルマを必死にこなしたのだ。


ムフタル兄さんは少し考え、やがて溜息をついてから言った。


「分かりました。ファルクの外出を許可しましょう。ただし、必ずジャンとラナーが同行すること!」


 18歳のムフタル兄さんは王の仕事を手伝っている。弟である俺の面倒を見るのも兄の仕事の範疇であり、こうして父さんに代わって指示を出してくる。


なんだかんだ言って兄さんも俺に甘い。本当は最初から外出許可を出すつもりだったこともお見通しだ。


「ありがとうございます、兄さん!流石の度量です、兄さん!」

「あほっ!いいから下がれ。こっちはまだ仕事が山積みなんだ!」


 俺は取り繕った真顔で頷き謁見室を後にする。廊下に誰もいないのを確認し、スキップしながら自室に向かった。


いやあ長い謹慎だった。2か月外出禁止はキツイ。ベッドのシーツで縄を作って窓から脱出しようと思ったことも一度や二度じゃない。


「城内でスキップしていると、いよいよ頭がおかしくなったと思われますよ?」


 突然背後から声を掛けてきたのは、侍女であり俺の幼馴染でもあるラナーだ。灰色の髪が端正な顔立ちによく似合う彼女は、気配なく人の背後に立つことを得意とする。俺と同い年のはずなのだが、あまりに優秀なので本当は5歳ぐらい年上なんじゃないかと密かに疑っている。


「ホント心臓に悪いからやめて。ちゃんと存在をアピールしてから近づいて来て。」


 だが俺の要求は無視される。


「外出許可が出たのですね?おめでとうございます。」

「うん。ラナーのおかげだよ。予め兄さんに掛け合ってくれていたんだろ?」


 ラナーは意外そうに首を傾げる。


「あら、ご存知でしたか。王太子に指示された倍の量の宿題をこなしたので、ちょっと口添えするぐらいはいいかな、と思ったんです。」


 俺に電撃走る。


「え、あの宿題増やしたのラナーだったの…。しかも、倍って。」

「それくらいしないと、ファルク様は反省しませんから。」


 ひどい。でも、14年間の付き合いでラナーとの間には精神的な上下関係が出来上がっており、強く文句は言えない。


「もうちょっと加減してくれても…。」

「駄目です。ファルク様が考え無しに行動しないようになれば良いだけの話です。」


 前世の記憶があっても、いや前世の記憶があるからこそ、そんな自分を直せる気はちっともしないんだよね。


自室に戻った俺は黒檀の衣装棚の中をかき回す。


外出用の装備に着替えるのだ。


俺が選んだ服を、ラナーが首を横に振りながら棚に戻し、別の服を取り出して渡してきた。黒地に銀糸を誂えたそれは、地球でいうところのパキスタンの正装に似ている。派手過ぎず上品で、同時に市場に出て目立つほどのものでもない。


ラナーの方がセンスがあることは認めよう。



王城の裏手門には、既にジャンが待機していた。こいつは王国騎士団の前団長で今は半分引退した身だ。見掛けは40才ぐらいなのに前王の頃から働いているというから、本当の年齢は…いくつなんだろう。背が高く、服の上からでは分かりにくいが筋骨隆々だ。渋めの顔で一部の女性に人気があるが、本人は愛妻家。


「外出許可がでたら早速お出掛けですか、王子。よほど鬱屈としていたんでしょうな。」

「そのとおりっ!あー、ほんと久し振りに外に出られるよ。」

「ま、今度は王太子の言いつけをよく守ることですな。」


 ジャンはベルトにぶら下げた剣の位置を正し、それから重い裏手門を片手で軽々と開けてみせた。その先は高級住宅地である。俺はラナーとジャンを引き連れて、門の外に小さな一歩を繰り出した。




 ここサビア小王国は、文字通り小さな国だ。国内にある町は、王都を合わせて三つしかない。一番大きな町である王都でさえも、よその国の首都と比べれば小規模で、都市と名乗るのはおこがましい。


実際に小さな国だからといって、わざわざ国名に『小』の字を入れなくてもと思うかもしれないが、これには訳がある。この国は隣の大きな帝国の属国なのだ。宗主国であるガイール帝国に対し、二心が無いことを示すため、わざわざ前王が国名に『小』を入れたのだ。


ただまあ、そんなことをすれば周辺国や帝国貴族からは当然舐められる。実際、外交の場でサビア小王国は国というより帝国の領地扱いされることが多い。


サビア小王国の現王には三人の息子がいる。長男であり王太子のムフタル兄さん、次男であり第二王子のワシム兄さん、そして三男が俺、第三王子ファルクだ。王太子のムフタル兄さんは当然次期国王。次男であるワシム兄さんはガイール帝国の上位貴族のところへ婿入りしなきゃならない。


三番目の俺は…まあ、予備といったところだろうか。今のところ、将来の予定は決められていない楽な身分だ。父さんが政治的に必要だと判断すれば、俺も近隣国のお偉いさんの娘のところへ婿に入らなければならないだろう。


読めない未来のことは置いておいて、今は久し振りの町を堪能する。


町の散策が楽しい理由は三つある。一つ、市場に地球には無かった食材が並んでいること。二つ、中世の街並みを歩くのが日本にいた時からの夢だったこと。そして最大にして三つ目の理由は、魔法に関する店があることだ。魔法ってワクワクするよね。


左斜め後ろを歩いているラナーが尋ねる。


「今日も、最初はペネゼヴィチ魔法具店ですか?」

「イエス。勿論。」

「禁忌の魔導書を出せと要求したりするのはもう止めて下さいね?前回、店主さんが泣きそうになってましたからね?」


 あれは色んな魔導書や魔導具なんかを見て興奮しすぎていたね。反省してます。でも大丈夫。今日ははっきりした目的があるのだから。


ペネゼヴィチ魔法具店は、高級住宅地と市の立つ通りとの境にある店だ。町に三つある魔法具店のうち、最も大きく王家御用達の店でもある。…町の商店の大半は王城になんらかの商品を納めており、王家御用達の店じゃないほうが珍しいんだけどね。


店内に入ると、恰幅の良い中年髭親父が手もみしながら近づいてくる。この店の店長であるペネゼヴィチだ。


「王子!本日もよくいらっしゃいました!」

「店長、例のもの届いてる?」


 髭親父は頷く。


「はい。ご注文通りのものがございます。早速ご覧になりますか?」


 俺が勿論と答えると、髭親父は店の奥から金箔をあしらったチークの箱を運んできた。勿体つけて開かれた箱の中には、銅製の台座の上に水晶球が一つ、部屋の灯りを表面に反射させる。


これこそは魔法の才能を測るための鑑定球。本来ならば誰しも15歳になった時に王城の大型鑑定球で魔法の才能があるのかどうかチェックされる。だがあと一年が待てなかった俺は、お小遣いを使って個人用の小鑑定球を予約していたのだ。それなりのお値段で、俺の貯金箱は空っぽになったけど。


俺の背後でジャンがラナーにそっと尋ねている。


「あれ、いいのか?魔法の才を知り学び行使するのは、社会常識を身に着けた15歳以上であるべし、って建前があったろう。」

「問題無いかと。いくら無鉄砲なファルク王子でも魔法で他人を傷つけるようなことはしないでしょう。実は王太子にこの件は相談してあるのですが、それくらいなら黙認する、とのことでした。」

「ならいいか。」


 箱を片付けた店長が俺に声を掛ける。


「早速使われますか?」

「ああ、頼む。すぐ試したい。」


 店主は机の上に水晶球を置く。俺は指示されるまま、それを両手で包みこむように触れた。すると水晶を通して右手から左手に電気が流れるかのような奇妙な感覚があった。


虹色に明滅しはじめた水晶は徐々に色の種類を減らし、最後は金春色になった。それから今度は水晶のサイズそのものが変化する。サッカーボール大だった水晶球はビー玉サイズまで縮み、やがて俺の左掌の中に収まった。


店主がそれをまじまじとみつめ、難しい顔で棚から厚い本を取り出し、なにやら調べ始めた。


「珍しい色になりましたね。ええと…あった。17番色だ。どうやら王子には重さの魔法の才能があるようです!大変珍しいですぞ。」

「重さの魔法?」


 火魔法とか土魔法みたいな元素系魔法の才能を期待してたんだけどな。


「ええ。商人なら垂涎の魔法です。触れている物の重さを軽くできるとか。才能を鍛えれば、馬三匹で運ばなければならない荷を馬二匹で運ばせるといったことも可能になりますぞ!」


 うーん。地味じゃない?


微妙な顔をしている俺の肩をジャンがぽんと叩いた。


「兵を率いる時に輜重部隊の負担を軽く出来そうだ。良かったですな、王子!」

「戦争になった時点で、この国滅ぶから。」


 俺が喜んでいないことを察知した店長が、作り笑いを浮かべて話題転換を図る。


「この鑑定球の水晶ですが、鑑定後は装飾品として身に着ける方が多いのです。宜しければこちらで指輪か首飾りに加工いたしましょうか?ああ、勿論これにはお代は頂きません。サービスでございます。」


 正直、どうでもいいな。まあ一応作ってもらって、いまいちだったらラナーにあげよう。


ちらっとラナーを見ると、こちらの考えを見通したように首を横に振った。


「ダサいのは要りませんよ?」




 店を出て、市場の方に向かって歩く。周囲の建物こそ中世のものだが、道は綺麗で酷い匂いもしない。町に雇われた魔法使いが定期的に水魔法や風魔法で掃除しているからだ。


市場の喧噪はなぜかいつも心地よく感じる。普段静かなお城の中にいるせいだろうか。


南西から北東にかけて大きなカーブを描く通りを歩いていると、一軒の工芸品店の前に群衆が集まっている。店内で誰かが言い争っているのを物見高い連中が見学しているようだ。


護衛であるジャンが目を細める。


「厄介事の匂いがする。避けて通りましょう。」


 俺は頷く。しかし、群衆の中の数人が俺に気づいて叫び出した。


「ファルク王子だ!」

「王子だって!?丁度良いじゃないか!」


 皆がこちらに気づいて手招きしてくる。


「王子!仲裁を!助けて下され!」

「王子!」

「ファルク王子!」


 こうなると逃げる訳にはいかない。仕方なく工芸品店に向かう。ジャンは肩を竦め、ラナーは小さく溜息を吐いた。


店内では、よく知る男が冷や汗をかき青い顔になりながら抗弁していた。30歳半ばのこの男は、店の主で工芸士でもあるヤークトだ。短く刈り上げた頭と稲妻のように吊り上がった目が彼に威圧感を与えていて、普段ならばこんな弱気な表情は見せない。


だが相手が悪い。五人の騎士を引き連れる中年男性は、馬と槍の意匠をこらしたマントを羽織っている。ガイール帝国アリンテ伯爵家の印だ。アリンテ伯爵当人は御年70を超える老人だと聞く。ならば、この中年男はその息子だろう。


サビア小王国の西にアリンテ伯爵領と国境を接していることもあって、アリンテ伯とは交易で関わることも多い。しかし、アリンテ伯爵領はサビア小王国の5倍の土地面積を誇る大領地で、力関係で言えば、残念ながら我が王家より伯爵の方が上だ。


アリンテ伯の息子は己のチョビ髭を撫でながらヤークトの話を聞いていたが、途中で話を遮った。


「職人。私は、ただで寄越せと言っているのでは無い。金は十二分に払うと申しておる。こちらも暇では無いのだ。さっさと渡したまえよ。」

「し、しかし、原盤は王城に寄付するように組合からも言われておりまして…。」

「ええい!くどいぞっ!」


 俺はゆっくりと二人に近づきながら、話の内容を把握していった。原盤とは、俺が二か月前に作った『積み立て将棋』の遊戯盤の最初の一つのことだろう。あれが一気に流行って、その騒ぎで俺は外出禁止になったのだ。あの時は道を歩けば五分に一回ペースで対戦を申し込まれていたからなあ。


『積み立て将棋』の流行はあっという間に国外にも広がり、今では王都の職人たちが輸出用に大量に遊戯盤を作っている。ヤークトは、俺が作った最初の遊戯盤を美しく作り直した最初の工芸士だ。彼に渡した最初の遊戯盤をアリンテ伯の息子が欲しているという訳か。


あれを欲しがるとはなかなか先見の明がある。地球でも、もし『世界で最初に作られたチェス盤』が存在していたら、それを欲しがって金を出すコレクターは大勢いるはずだ。この世界でも『積み立て将棋』が広まれば広まるほど、原盤の価値は上がっていく。


状況を把握した俺は、二人に声を掛ける。


「どうかしましたか?」

「む。余所者が口を挟むものでは…いや、王家の方かな?失礼した。私は、アリンテ伯爵が三男、セリオ・グジ・アリンテだ。」


 伯爵の息子は俺の上等な服装と態度からこちらがサビア王家の者だと気づいたようだ。


「スセリク2世が三男、ファルク・アレイマル・サビアです。本日はよく我が国へいらっしゃいました。」

「いや、第三王子自ら歓迎の挨拶とは。有難き幸せ。」


 政治的な力はアリンテ伯爵家が上だが、典礼上は小王国といえど他国の王家が家だ。セリオという男は丁寧に俺に向かってお辞儀をする。


「なにか言い争っておられたようですけど…我が民がご迷惑を?」


 セリオが笑顔で首を横に振る。だが、目が笑っていない。


「とんでもない!単なる取引、商売のやりとりをしていたに過ぎませぬ。」


 俺の存在に元気づけられたヤークトが顔色を取り戻す。


「こ、こちらのファルク王子こそ『積み立て将棋』の考案者なんですっ!」


 それを聞いたセリオが目を見開く。信じられない、という顔だ。だがすぐに表情を取り戻し、ニヤリと笑う。


「なるほど、なるほど。ファルク王子になんらかの『功績』が必要だ、とスセリク王は御考えになられたようだ。」


 『積み立て将棋』の本当の考案者が別にいて、それをうちの父親が俺が考えたことにしたって言いたい訳か。いや、この国じゃそういうのやらないんだよね。おたくはどうか知らんけど。


「功績が必要な理由…もしや、異国から姫が嫁いでくる?」


 なんか勝手に勘違いしてる。しかしこれは都合が良いかもしれない。


「…さて、僕が『貸していた』原盤を王家で保管しなければいけない理由が分かって頂けたでしょうか?」


 セリオの笑顔が深みをます。今度こそ、本物の笑顔だ。


「ええ、ええ。分かりました。分かりましたとも。確かに、王子の『功績』の証拠は必要でしょう。私が買い上げようなどとは余計なことでございました。」

「折角王都まで足を延ばしていただいたのに、申し訳ないですが…。」

「とんでもない!私は新しい『情報』を得られました。此度の小旅行の良い土産になります。」


 では失礼、と配下の騎士達を連れて機嫌良く店の外へ出て行く。それをしばし見送っていると、ヤークトが溶けるように全身の力を抜いて机に突っ伏した。


「大丈夫?」

「はい、王子のおかげです。でも、なんか勘違いして帰っていったみたいですけど、大丈夫なんすかね?」

「こっちは嘘言ってないし。いいんじゃない?」

「はあ。ま、王子がそう言うなら。…それより、この二か月間大変だったんすからね!遊戯盤は作っても作っても、足りないと催促されるし。今みたいな要求してくる方もいるし!」


 グチグチと文句を言うので、適当に聞き流す。ジャンが興味深そうに奥の机の下に隠されていた原盤を観察している。


「これを王子が作ったのですか?噂は聞いていたが、私自身は初めて見ました。」


 ラナーと俺で、ジャンに『積み立て将棋』のルールを説明する。


「そうか。手前のマスに資産を積み上げながら、兵となる駒で防衛したり、相手の資産を奪ったりするのですな。」

「はい。ただ序盤に資産を沢山貯め込もうとすれば、その分兵の動きは疎かになり…。」

「逆に、兵ばかり動かしていると後半は資産不足で苦しくなるのか。いや、これは面白いな。」


 ルールを素早く把握するジャンをラナーが褒める。


「ジャン様は理解が早いですね。やはり一軍を率いていたお方は違います。」

「いや、頭の回りでラナー殿に勝てる気はしないな!…しかし、王子はよくこんな遊びを思いつきましたな。」


 俺はヤークトの子弟が入れてくれたお茶を啜りながら答える。


「前世でやったことのあるゲームを真似しただけだよ。」


 するとジャンが眉をひそめる。


「王子はまだ自分が異なる世界から転生したと主張されているのか?」

「当たり前だけど、公の場では言わないよ?」


 俺がそう答えると、ジャンが安心したように頷いた。


 

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