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第五話


考察しようと思ったが、特に考える事はないんじゃね?

別に美少女になっても困る事はないしな……。

むしろ望むところである。


だが、『ワルプルギス』については少々――ね。


ワルプルギス――稀代の大魔導士にして天災の魔女。

天才じゃねくて天災ね。

まぁ、作ったモノが凶悪過ぎてプレイヤーたちの間では天災と呼ばれていたNPCだ。

中でも『ワルプルギスシリーズ』と呼ばれる使い魔はかなりぶっ飛んだ性能と癖を持ったモノが多く、当時ワルプルギスとはっきり名称が付いてる使い魔は一体しか持っていなかった。


今はクレアとテレサで二体というか、三体に増えたが。


後は自力で使役した使い魔が数体程度と言った感じだ。

使い魔は一人で行動する際に必要と感じる性能の使い魔しか使役していなかったからな。


あとはワルプルギスは俺の師匠でもある。


ゲームシステムに『師弟』と呼ばれるものがあり、これは特定のNPCと師弟関係になれるのだ。

勿論、プレイヤー同士でも可能だ。

師弟関係なるといろいろと便利なモノを得る事ができるので、わりとみんな利用してたと思う。


俺は運よくワルプルギスと師弟関係を結ぶことができ、彼女から出される課題をこなして魔法やらスキル、アビリティなど獲得していた。

使い魔もその内の一つ。

ちなみに彼女からもらった使い魔の中に、『ナイトドール』と『マリオネットアサシン』も含まれる。

後者に至っては、進化して『ワルプルギスの双子人形』になったが。


なんというか、彼女からもらった使い魔は皆、ワルプルギスの何某とかに進化するんじゃないかと思ってしまうな。


それにな……ワルプルギスシリーズ。これがまた――。


と思い出していると、金属と金属がぶつかる音に何かが爆ぜる音が聞こえてきた。


「閣下。どうやら双子が燥いでいるようです」


いつの間にか、影から出てきたナイトドールがやれやれと言った感じで、話しかけてくる。


先行した二人が野営予定地にいる人物と戦闘状態のようだ。

あれやこれやと考えてた所為で気付くのが遅れてしまった。


彼女たちが言ってた『為すべき事』とは偵察ではなかったようで。

なんともまぁ戦闘意欲が高い事で。



「どうされます? 別段、心配するような事にはならないと思いますが……」


と若干不安げな声色のナイトドール。


「んーまぁ……てか相手が敵だ、って俺言ってないよね?」

「ええ。言っておりませんね。ただ、妙だとは感じていたようですので……」


ナイトドールの不安がわかった気がする。

このままだと双子の相手がやばい……。


「……それって一般人の可能性もあるよな!?」

「むしろ、その可能性の方が高いかと……」


ヤバイヤバイ! このままだと一般人をデスしちゃう!

戦闘音が聞こえるし、ナイトドールが燥いでると言ったので双子ちゃんは遊んでるんだろうが……相手はそれどこじゃないだろ!?

流石、イカレ魔女のお手製だけあるわ!!


慌てた俺は双子が燥いでいるであろう現場に全力で向かった。




「いいわぁっ! もっと踊って!」

「流石ね!! こんなに踊れるなんて!」



ほどなくして、野営地に着くと双子ちゃんの燥ぐ姿が見え、彼女たちの声が聞こえてきた。



先ず、クレアだが、なにやら厳ついピエロのような人形の肩に腰かけ笑い声をあげていた。

テレサは次々と短剣を手にした細身の人形――これもピエロのような外観――を生み出しそれを相手にけし掛け笑っている。

双子ちゃんはとてもご機嫌のようだ。


で、件のお相手だが。

外套姿で顔がよく見えないが、攻撃を躱す度に開けた外套の隙間から軽装を意識した鎧姿が見え、そこから感じた体つきで女か? とアタリをつける


動きを意識した装備なだけあってか、その動きは素早い。

テレサの人形を翻弄するように剣で切り伏せ、かなり余裕があるようだ。

まぁ、倒してもテレサがすぐに人形を補充するのでキリが無い様だが。


クレアは相手が大振りになった際の隙をついてるようだが、上手く躱されているようだ。

てかクレアの乗ってる人形の武器がえぐいな……大鉈って。


死角からの攻撃でも、相手はそれを察知してから躱している様は、はっきり言って異常に感じる。


例えるなら、銃の発砲音を聞いてから弾丸を避けてる感じだ。

普通ならそれで避けるなんて不可能だ。

いくら、魔法があるこの世界の人間でも、できない芸当だろうな。

人間以外なら可能かもしれないけど。


そして、相手がクレアの攻撃を躱して追撃しようととすればテレサの人形が割って入り、それをさせない。

なんともまぁ……俺だったら、いぃぃぃーってなる戦法だな。


とりあえず、俺はその現場を見て、焦ったのは杞憂だったなと思い安心した。

お互い、本気じゃないみたいだし。


双子が本気じゃないのは、使い魔故にいろいろと感情がこちらに流れてくるのでわかる。

で、相手だが、顔はフードを目深く被っていて口元しかはっきりわからないが、笑ってるように見える。

それにさっきも思ったが、余裕を持って動いてようだし、本気ではないんだろうな、と見ていたら相手の気配がガラッと変わる。


その瞬間ナイトドールが俺を守る様に前に出る。


「やはり……この気配は閣下と似てますね」

「似てる? どこが?」

「この世界の住人とは異質なところが、です」


それを聞いて俺は頭を捻ってしまう。

自分が異質なのはわかってるが、そういう事ではないんだろう。


確かに、双子ちゃんが相手にしているこいつは、この世界の住人ではないと思う。

が、過去俺が対峙した異世界人ではない、とも思う。


その理由は、今こいつから感じる――『ヤバさ』


これはあの異世界人には感じなかった。

頬を切られてから、あ、ヤバと感じたぐらいで、その前はなんら脅威は感じなかったし。


なら、こいつはなんだ? 別の異世界人か? と考えたところで相手が動き始めた。


手にした剣を逆手に持ち切っ先を地面に向ける。

そして、体から青黒い靄のようなモノが――てこれ剣気じゃねっ!? なんでこいつが! と驚いている内に相手は剣を地面に勢いよく突き刺した。


足元から感じる強烈な殺気と力を感じて、避けるのは無理! なら! と全力で防御魔法を発動させた。

ついでにナイトドールも、と思ったが奴は盾をかなり頑丈そうなものに作り替え全力の防御態勢だったので自分だけに展開した。


双子ちゃん? ああ、この程度でどうにかなるワルプルギスシリーズではないので、大丈夫です。


と、その刹那を過ぎ、地面から黒い刃がこちらに向かって飛び出してきたが展開した防御壁に阻まれ、俺に届くことはなかった。







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