瑠璃の夢が叶う時
11/4 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
お話の最後を加筆しております。
牡丹お姉ちゃんは掛け湯をしながらも口は止まらない。
「瑠璃ちゃんだって紗雪ちゃんだって、あなただからハーレムの主になってほしいと思ったのよ!?
そこに偽りはないわ、誰も妥協なんてしてないし、無理やり合わせているわけじゃないの! 分かってるんでしょう?
優希はちょっと瑠璃ちゃんを懲らしめようと、認識を改めさせようとしているんでしょうけど、ちょっと言い過ぎ!! もっと優しく言ってあげて。
……、ちょっと紗雪ちゃん、早く脱いで入っておいでよ」
シュパッ! と言う音と共にメイド姿だった紗雪がバスタオル姿のさゆへとモードチェンジ、ささっと掛け湯をして湯船に入って来る。
何ぞこの状況。
「優希、ちょっと言い過ぎ。確かにあたしも牡丹ちゃんも乗り気じゃなかったけど、お姉ぇはちゃんと基夫さんの事を見てた。ハーレムの夢が叶うかもってなって急ぎ過ぎただけなんだよ。
あの2人が上手く行ってても、多分ハーレムにはならなかっただろうけど。その時はお姉ぇも諦めてたと思うよ」
「そうそう、基夫さんが逃げちゃったからこそ余計にじっくりハーレムの主を探そうとなって、ゆうを見つけるまで瑠璃ちゃんずっと恋人いなかったんだから!
お姉ちゃんも紗雪ちゃんもゆうが初めての人だけど、瑠璃ちゃんだって2人目だったんだからね!?」
いや、だから何だと言うのか。
「ちょっと落ち着け。俺が言いたいのは、ハーレムの主像に俺を近付けて行っているだけで、本来の俺の事を見ているのかって事だよ。
主って言うからには偉いんだろ? 偉い人に確認もせず、俺の人生を左右するような役員や株主なんて肩書を加えていいのか?
俺の力で何も成し遂げてないぞ? 俺ただのヒモじゃん」
「ゆうは頭が固い! 黙ってお姉ちゃん達に可愛い可愛いされてたらいいのよ!」
頭を牡丹お姉ちゃんに抱き締められる。頬擦りされてチュッチュされる。
瑠璃と牡丹と距離を置いていた反動がここで来ているらしい。瑠璃はと言うと、俺の後ろに回り込んで牡丹と一緒にサンドウィッチ状態で抱き締めて来る。
さゆは1人腕を組んで、俺を睨んでいる。
「夏希と2人で逃げても、絶対追い掛けるからねっ!」
ねっ! じゃないが。
ってか今さら逃げねぇよ。はぁ……、それも言わないとダメか。
「だから俺が言いたいのは、今までの事もそうだけどさ、これからも自分の理想を押し通して他のみんなを巻き込んだらダメだって事なんだ。
夏希も姫子もいる。今までは三姉妹だけだったからある程度やりたい事も分かってて、それで許されて来たところがある。
けど、これからはそうは行かないだろ? 歯止めが必要なんだよ。これ以上俺の人生を弄んだら夏希と一緒に逃げるからな!!」
またもバンっ! と浴室のドアが開き、バスタオル姿の夏希とひめが入って来る。
「何勝手な事言ってんのよ! 私はどこにも逃げるつもりないし、瑠璃さん達とだって上手くやっていけるわ!!」
「ボクは置いて行くの……?」
何でいるんだよ……。
あぁ、ひめのバスタオル姿はこんな状況で見たくなかったな……。未成熟っぽいそのシルエットを見てちょっとイケない事をしている気分になって来た。俺より年上なのに!
裸の嫁達にもみくちゃにされながら、それぞれの叫びを聞く。
「私を見捨てないで下さい!」
「お姉ちゃんの言う事を聞きなさい!」
「家具って言ったらあたしが黙ると思ったら大間違いなんだからね!」
「私の居場所はここなんだから!」
「逃げる時はマスコットも連れて行くでしょ……?」
あぁぁぁうるさい!
なんでみんなそんなに必死なんだよ、俺はただ瑠璃の今後の行いに対して釘を刺そうと思っているだけなのに……。
口々に叫ぶ声に負け、俺も思わず釣られて叫ぶ。
「分かった分かった! あぁ~もうみんなまとめて愛してやる!!」
「アナタ!」
「ゆう!」
「優希!」
「ゆーちゃん!」
「優希……」
一体俺は何様なんだってんだ、とんだ茶番じゃねぇか……。
ひと通り興奮が収まるのに10分程掛かった。このメンバーが集まるのは夏希とのリプレイ以来か。
夏希が瑠璃の肩を持ち、ハーレムにこだわる理由については少し考えるモノがあるが、夏希も夏希で何か思うところがあるのだろう。
「夏希はどうしてうちに来たの? 仕事はもういいの?」
「うん、早めに終わったから合流しようと思ったんだけど、電話しても優希が出ないから紗雪ちゃんに掛けて、それでも出ないから牡丹さんに掛けたの。
そしたらここの住所を教えてもらって。みんなで集まれるってそうないじゃない? ひめちゃんの事も気になってたし。
あっ、私もひめちゃんって呼んでいい?」
ひめがコクリと頷く。
ちゃっかり俺の足の間をキープしている。さすがはマスコットと言ったところだ。
瑠璃が張り切ってみんなに提案する。
「優希君が私達の事を愛してくれるって言ってくれたんだから、私達も優希君に誓いましょう。これからも変わらずみんなで優希君を愛し、支えるって。
みんなでせっかくこうして集まったんだから!」
「そうね、じゃぁみんな1人ずつお義兄ちゃんにキスして行きましょ! 愛の誓いって事で!!」
よく分からんが、それが必要な儀式なんだったら受け入れよう。
これでみんなの結び付きが強くなり、誰かが悲しい思いをせずに済むと言うのなら……。
「アナタ、愛しています」 チュ
「ゆーちゃん、ううん、優希。あ、愛してる……」 チュ
「ゆう、愛しているわ」 チュ
「優希、愛してるよ」 チュ
「優希、愛してね?」 チュ
こうしてどうやら、瑠璃の夢が叶ったようだ。
みんなして抱き合っているところ悪いが、俺は納得してないんだからねっ!
……、タイミングを見て個別に瑠璃や牡丹にはじっくりと話をしなければ。
今の状況ではとても俺の真意を伝えられそうにないわ。
キャッキャキャッキャしている嫁達を眺めながら、そう思った。
いつもありがとうございます。
10/22誤字修正 絶対負い掛けるからねっ → 絶対追い掛けるからねっ
Twitterにて誤字報告頂きました、ありがとうございます。
誤字修正 とんな茶番 → とんだ茶番
コメントにてご指摘頂きました、ありがとうございます。




