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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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密室での激しい攻防

11/4 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正

 Yシャツを脱いでうさぎちゃんの身体を覆い隠す。そして顔をじ~っと見つめる。


「どうしたの? 裸よりも半裸の方が興奮するタイプ?」


 すっかりやる気になっているのか、甘ったるい声で問い掛けて来るうさぎちゃん。



「僕はね、養殖ものはあまり好きではないんですよ」


「……、何の話?」


「大きいけど、何かちょっと固いって言うか、天然ものの柔らかさじゃない気がして」


 触り心地の話ですよ。


「僕も割と天然ものに触れる機会が多いのでね、いい天然ものはすごく柔らかくて、自然な弾力なんですよ。ふにょんふにゅんって。

 でも背中に感じた感触は、何と言うか、ちょっと固いなぁって。むにょんむにゅんって感じ……? 中にもう一回り小さいのが入っているような、そんな感覚だったんですよね」


「じゃあ今度は手でちゃんと触ってみたら? 背中では分からないでしょ。両手でちゃんと確かめてみて? 舐めて味見してもいいのよ」


 声色が少し硬くなっている。じわじわと効いて来ているのだろうか。

 うさぎちゃんを見下ろし、さらに攻める。


「よく見るとその目の二重も何か不自然なような気がするんですよね。綺麗過ぎると言うか、作られた感があるし。鼻筋も取ってつけたような気がして。

 唇もぼてってしてて、ふっくらぷるるんとはまた違うんじゃないかな?」


 俺は別に整形している箇所を一つ一つ指摘したいわけじゃないし、そもそも本当に整形していると思って言っている訳ではない。

 攻められ一方の状況を変え、雰囲気をぶち壊し、うさぎちゃんを怒らせるのが目的だ。


「……、それもお断りテクニックの内の一つなの? 怒らせてこの場の雰囲気を台無しにしてしまおうって魂胆ね?

 ふふっ、いいわ、じゃあ私も好きに攻めさせてもらうから」


 胸を隠していたワイシャツを取り払い、うさぎちゃんは俺の顔を柔らかみへと押し付ける。

 むせ返るような甘ったるい匂いがする。人工的な香り、香水か。


「人工的な物はあまり好きじゃないんですよね」


 ため息と共に呟くと、さすがに気を悪くしたのかうさぎちゃんが俺を押し退けて身を起こした。

 顔が無表情ですよ?


「私がここまでして乗って来ないターゲットなんて初めてなんですけど」


 そうですか、今までのターゲットは脇の甘い人達だったんですね。


「うさぎちゃんはご経験が豊富なんですね」


 おっ、無表情だった顔が険しくなりましたね。せっかく綺麗な顔なのに勿体無いなぁ。天然か養殖かは別として。


「そうね、任務遂行の為なら多少はね」


 女スパイも大変だね。


「好きでもない相手に身体を許すのって、どんな気持ちなんですか?」


 眉間に皺を寄せつつも、うさぎちゃんは口角を上げてニヤリと笑う。挑戦的な顔だ。


「身を持って体験すれば分かるんじゃない?」


 そう言って、俺のズボンに手を掛ける。ベルトを外し、チャックを下げる。でも俺は腰を上げない。脱ぐつもりはないですから。

 両手を頭の下へ回し、脚を組んで笑い掛ける。


「止めましょう。引き抜き交渉だと言うのなら、あなたの依頼主クライアントから聞いている俺への条件を提示して下さいよ。

 まぁ引き抜きに応じる気もありませんけどね」


「あぁ~腹立つ! 据え膳食わぬは男の恥って言葉知らないの!? 私がここまでしてるって言うのに指一本触れないつもり!!? 私に恥をかかせて楽しんでるんだ!」


 頭を掻き毟って怒りを露わにするうさぎちゃん。ぶるんぶるんと揺れている。


 はい俺の勝ち、お断り成功。

 危ない危ない、無理やりにでもズボンを脱がそうとされてたら、さすがに力に訴えるしかなくなっていただろう。

 腕力に頼ってお断りするのはプレイヤーの沽券に関わるからな。


 身体を捻じってうさぎちゃんから逃れ、背中を向けて床に落ちたYシャツを着直す。



「で、俺を引き抜きたいって言ってるのはどこの店なんだ? 会うだけ会ってやってもいいけど、時間の無駄だぞ。

 今日の仕事は全部終わったから、俺はこの後すぐでもいいけど」


「今日の仕事は終わったですって!? 私とのプレイがまだ終わってないじゃない! 身体にも触れず、キスすらしないなんて有り得ないわ。それどころか身体をじっくり見てもいないでしょう!?

 こんないい女が目の前で柔肌晒してるっていうのに、あんたどういう神経してるのよ!!」


「俺の仕事はお断りすることだ。だいたいこれも引き抜き先のテストかも知れないだろ? ここでお断り出来ないような奴はプレイヤー失格だ。

 そんな奴を引き抜きたいと言うクライアントの神経の方がどうかしてると思うが」


 怒ってんのは分かるけど、未だに服を着ないのはどうなんだろう。鏡越しに丸見えなんだが。


「あのね、お断り屋に通う多くの女は精神的にMなんだと思うの。でも中には私みたいに攻める方が好きなお客様アクトレスもいる訳。そのどちらの需要も満たせないとダメなんじゃないの!?」


 だから抱けってのは話が違う。どちらの需要であっても俺はお断りをするのが仕事なのだから。

 それ前提で来てるわけでしょ?


「ならお断りのない店に行けばいいだろ。だいたい今のお前はアクトレスじゃない。ただの痴女だ。街中で逆ナンでもして来いよ」


 お願いしたい男はいっぱいいるだろうよ。


「あ~そう、分かった。あんたが引き抜きに応じない事も、私を抱く気がない事も良く分かったわ。あんまり使いたくなかったけど奥の手を使わせてもらうから。

 泣きながら抱いて下さいって土下座させてやるから!」


 そのまま部屋の隅に置かれたバックを漁り、うさぎちゃんはスマホを取り出してどこかへ電話を掛ける。事務所がどうとか、バラされたくなかったらどうとか言い、電話を切った。


「仕事は終わったって言ったわよね? じゃあ今から店を出て私について来てもらうわ。後悔先に立たずってことわざ、身を持って知るといいわ」




いつもありがとうございます。

明日も22時頃に投稿予定です。

ヒーローに憧れる俺は正統派ヒーローに敗れて仲間になる悪役ヒーローになりたい。も合わせてよろしくお願い致します。


誤字修正致しました。


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