伯爵家ご令嬢の初恋シチュ:リクエストを少し改変
ftg様より頂きましたリクエストを少し改変して書かせて頂きました。
10/31 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
朝、大学へ向かう紗雪を見送った後、瑠璃と牡丹と3人でスペックスのオフィスへと向かう。と言ってもエレベーターで1フロア降りるだけなのだが。
夏希と宮坂家へお呼ばれしてから3日が経った。まだCM撮影の日取りは確定していないらしい。夏希の方もまだ聞かされていないようだ。
「今日の予約は3名か。千里さんの予約ではないな。よし、ぼちぼち時間だから降りるわ」
「アナタ、行ってらっしゃい」
瑠璃が抱き着いてキスをせがむ。はいはい、チュ。
「優希さん、頑張って下さいね」
牡丹にもチュっと。手を振りエレベーターへ乗り込む。
予約が入った段階ではまだアクトレスの設定要望が見れないのは何とかならないだろうか。
現状ではアクトレスが来店し、アクトレスカウンターでプレイオーダーを記入してからでないと情報が入って来ない。
まぁ今はそんな事を言っても仕方がない、とりあえず受付カウンターへと向かう。おっと、久しぶりの顔を見掛けたので声を掛けておこう。
「おはよう、信弥さん」
「おはよう、紗丹。CMに出るらしいじゃないか。エミルちゃんとはどういう関係なんだい?」
Bランクに上がってからというもの、アクトレスからの予約が殺到していてこの人も忙しそうだ。週に5・6日出勤しているらしい。
「エミルとは幼馴染なんだ。芸能界デビューしてたのは最近知ったんだけどね」
ふと隣を見ると、逃げ子さんこと姫子さんが俺のスーツの裾を握っていた。
「おはよう、姫子さん。どうした?」
「アクトレスがお待ちだから呼んで来てって」
受付嬢に頼まれたらしい。信弥さんと別れ、受付カウンターへと向かう。
「おはようございます、希瑠様。本日お1人目のアクトレス情報です」
手渡されたファイルとプレイオーダーを持ってソファーに座る。何故か姫子さんも隣に座ってしまった。
「仕事はいいのか?」
「あなたをプレイルームへ送るのが私の仕事だから」
そうですか、じゃぁ気にせず書類を確認しよう。
・12歳の貴族令嬢のアクトレスと使用人の既婚庭師であるプレイヤー
・場所は庭園
・結ばれぬ恋と知りつつ想いを伝えたい
なるほど。12歳というのがやや引っかかるが、アクトレス情報によると見た目はかなり幼い感じのようだ。
特に無茶なプレイをされる事はないそうで、普段通りで大丈夫だろう。
受付カウンターへファイルを返却し、姫子さんに連れられてエレベーターへ向かう。
「姫子さんは俺と紗雪達との関係ってどう思ってんの?」
姫子さんが俺に気があるのかどうか、そして客観的に見て俺達はどう思われているのか、どちらも聞きたくて質問をしてみた。
「とても面白そう」
う~ん、言葉が少なくて判断が付かない。
面白そうて。見ていて面白いのか、自分も入って面白い事をしたいのか……。
どうせならストレートに聞くか。
「姫子さんも俺のハーレム入る?」
「入っていいの? みんな私が入って迷惑じゃない?」
一瞬目が光ったような気がする。しかも『私』と来た。
性同一性障害ではないと冬美ちゃんに診断されたのをきっかけに、意識して女性に寄せて行っているんだろうか。
ちょうど公園フロアの庭園区画に到着した。用意されていた選定鋏を持つ。
「いや、逆に歓迎されるんじゃないか? まぁ考えてみて」
俺がスタンバイすると、姫子さんがアクトレスへ声を掛けに言った。ちなみに姫子さんはエキストラアクトレスとしてプレイに参加する。
「サルタン、お嬢様がお見えです」
お付きのメイドにしては覇気がなさ過ぎだろうに。お嬢様の為に日傘を差している姫子さん。
俺はその場で跪き、アクトレスへと頭を垂れる。
「いいのですサルタン、お顔を上げて下さいませ」
はっ、と言い立ち上がる。
アクトレスは20代前半くらいの小柄な方だった。12歳とは言い難いが、それなりに背が低い。姫子さんと同じくらいか。
「今日はお話があって参りました」
「それはわざわざ……、足をお運び頂きまして恐縮です。お声を掛けて頂ければ私から出向きましたのに」
「いえ、それにはおよびませんわ。私はサルタンがお仕事をしている姿を見るのが好きなのです」
そう言って、お嬢様は恥ずかしそうに下を向く。
「私のような者の仕事をですか……、お嬢様は広い視野をお持ちなのですね」
ニコリと笑い掛けると、釣られてかお嬢様も笑顔を見せて下さった。
「実は私……、侯爵家からお見合いの打診を受けたのです。お相手はご嫡男とお聞きしております」
「そうですか! それはめでとうございますね。侯爵家のご嫡男と言えば、先日行われたパーティーでお嬢様をダンスにお誘いになったとか。その際に見初められたのですね」
ええ……、とまた下を向かれる。しかしすぐに顔を上げ、意思を持った瞳で俺を見つめる。
「私は、別に想いを寄せる方がいるのです。ですが、私は伯爵家の娘。お父様の決めたお相手に嫁ぐのが私の使命なのです」
「そうですか……、お嬢様はご立派です。ご自分の進むべき道をしっかりと見据えていらっしゃる。
きっとお嬢様が想いを寄せる誰かも、お嬢様の幸せを願っている事でしょう」
そうだ、と言って庭園に植わっている白いツツジ科の花を切って手渡す。
「これはアザレアという花です。花言葉は『あなたに愛されて幸せ』です。覚えておいて下さい、いつか旦那様になられる方へプレゼントなさるとよろしいでしょう」
「サルタン……、ありがとう」
ツツツっとお嬢様の目から涙が零れ落ちる。涙は拭かないまま、失礼と言い残してお嬢様は去って行った。
先ほどのお嬢様はクーリングタイムを取らず、泣いたままの顔でプレイルームを出て行かれたそうだ。姫子さんが1人で俺の元へと戻って来た。
「本当に政略結婚させられたお嬢様なんだって」
へぇ~、あのアクトレスは姫子さん相手に身の上話をされたようだ。異性であるプレイヤーよりも、メイド役を務めた同性の姫子さん相手にクーリングタイムを取られたようだ。
俺と話すよりも言いたい事が言えたのかも知れないな。
「ハーレムに入って何をするの?」
俺の手を引き、受付カウンターへと戻る道中に姫子さんが改めてそんな事を聞いて来た。
いくら何でもそれは初心過ぎるんじゃないか? 自分で面白そうと言っていたのに、この反応はちょっとアレだな。
「そうだな、みんなに可愛がられるだろうな」
無難にそう答えておく。
ハーレムに入れるかどうか、後でオフィスにいるメンバーを交えて話してみようか。
いつもありがとうございます。
この後23時頃に新作「ヒーローに憧れる俺は正統派ヒーローに敗れて仲間になる悪役ヒーローになりたい」を新規投稿致します。
お断り屋と同じ街で繰り広げられる、中学生の恋愛をテーマにした作品です。
合わせて読んで頂ければ二度楽しめるよう進めて参りますので、よろしくお願い致します!




