二世帯ハーレム
10/31 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
ダンジョンイベント開催についての議論はとりあえず一段落し、時間も時間なのでみんなで食事に出掛ける事になった。どこかのレストランを予約してくれているらしい。
賢一さんと花江さんは着物からお出掛け用の洋服に着替えられ、運転をしてくれる芹屋さん含めて計8人が今日乗って来た黒塗りのワゴン車に乗り込んだ。
「芹屋さんと一緒にご飯食べるのも久しぶりね」
「そうですね、紗雪お嬢様」
運転席と助手席で楽しそうに会話する2人。この2人の関係性は本当に見てて混乱する。
紗雪が私服姿の時はお嬢様扱いで、メイド服を着ていれば部下扱い。なおかつ父親の愛人でもある。
本人達は元より、周りの人間がどう思っているのか非常に気になるところだ。
到着したのはスカウトされた日に連れて来られたホテルだった。もう来ないだろうとその日は思ったのだが、また来る事になるとは……。
エレベーターでレストランのある階まで上がり、ドアが開くとすでに待機している店長。
「いらっしゃいませ、宮坂様。ご予約頂きましてありがとうございます」
「ああ、今夜もよろしく頼むよ」
前回このレストランに来た際、俺は三姉妹が大企業を束ねるお家のご令嬢だとは思っていなかったので、随分と恥ずかしい事を言ってしまった。正直店長さんの顔を見れない。
「またお会い出来ましたね、優希様」
「……、名前覚えて下さってたんですね、ありがとうございます」
「それはもちろん、またお会い出来ると確信しておりました」
それ以上言わないで下さい……。
前回と同じ個室へと案内される。
俺の両隣に瑠璃と夏希が座る。この状況に慣れるまで時間が掛かりそうだ。
「しかしダンジョンを作りたいというアイディアは、なかなかいい所に目を付けたな。
優希は他にもいいアイディアを持っていそうだ」
賢一さんが褒めて下さっているのはいいのだが、俺を見る目がニヤニヤしているのが非常に気になる。
「そうね、私ももっと色んな提案を聞いてみたいわ」
花江さんはAランクになるほどの常連様だ、新しいサービスが出来たらすぐにでもモニターを買って出て下さるだろう。
「そうですね、お断り屋が全国展開していないのなら、店舗に来る必要なく受けられるサービスを新しく作るのはどうですか?」
スマホを使えばいい。もしくはネットでテレビチャットという手もある。
コールセンターのような物を用意し、一ヶ所で全国のお客様のお相手が出来るようにするのはどうだろうか。
「なるほど、実際に会わなくてもプレイは出来るのね……」
瑠璃が興味を示してくれた。
「実際に会わない分リーズナブルな料金でサービス提供が出来るし、まだ指名を受けるほど人気の出ていないプレイヤーに経験を積ませる事も出来る。人気プレイヤーにはネットでの対応をさせない事で、高ランクプレイヤーは実際に会わないとプレイ出来ないという付加価値を持たせる事も出来る」
そして、どこの地方からのアクセスが多いか統計を取る事で、営業店舗のニーズがどれだけあるのかという事前調査も合わせてする事が可能だ。
「すごいね、一気に規模を大きくする事が出来るかも!」
紗雪も賛成のようだ。
一方牡丹は難しい顔で考え込んでいる様子だ。
「私しては、サービスの質が低いまま提供するという事が引っかかるんですよね」
リーズナブルなサービスは、言い方を変えると低品質になってしまう可能性があるという事だ。それについては反論出来ない。
質を維持する為にスキルの高いプレイヤーを対応させてしまうと、その時間分店舗に顔を出せないという本末転倒な状況になってしまう。
例えリーズナブルなサービスとはいえ、ある程度の訓練をさせる必要があるだろうな。
「プレイヤーの育成として、今何か実施している事はあるのか?」
俺の問い掛けに対し、瑠璃が答える。
「育成とは違うかも知れないけれど、受付フロアのモニターでプレイを見せるようにはしています。職人が言うところの、見て盗めという感じでしょうか」
「見て盗め、か。そもそも瑠璃はスペックスを立ち上げた時はどうしたんだ?
プレイヤースキルの高そうな奴をスカウトしてから営業を始めたのか?」
うっ……! という分かりやすいリアクションで黙り込む瑠璃。
これは何かあるな。紗雪がニヤニヤしているのを見て確信する。
瑠璃が俺の質問に対して言い淀むような事か……、何だろうか。
「お姉ぇ?」
「瑠璃ちゃん?」
この2人が瑠璃に対して強気に出る事、つまりアドバンテージがある事が関係している……?
「彼氏を使ったのか」
ギクリと音が聞こえそうなリアクション、非常に分かりやすい。
「こ、このお話はいずれちゃんとしますからっ!!」
両手をバタバタと振って話を終わらせようとする瑠璃。
まぁ過去は人それぞれだし、今さら何を言っても変わるわけでもないし。俺自身複数の女性と付き合っているわけだから、それほど……、
いや気になるわ。でも気にしていない振りをしておこう。
「分かった」
瑠璃がすごく残念そうな顔をしている。嫉妬してほしかったんだろうか? すごく面倒臭い。
「それにしても幼馴染が結城エミルとしてデビューしているとは、優希もすごいな。さすがは俺の息子だ」
あからさまな話題の変え方、娘を想っての事なのだろうか。
それにしても下手くそだ。俺いつからオッサンの息子認定されてんだろう。
「私の身勝手な行動で多大なご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いいのよ、夏希ちゃんのお陰でこうしてみんなで楽しく食事出来るようになったんだもの。これからも頑張ってね」
花江さんも娘達のライバルであるはずの夏希を持ち上げる。
この人も自分は正妻だとか賢一さんに言ったりするんだろうか。愛人が多い旦那を持つ妻というのは色々と気苦労が多そうだが。
「ひかりちゃん、このデザートおいしいわね」
「そうですね、花江さん。ここのデザートはどれも絶品です」
……、上流階級の家庭事情はとても複雑そうだ。
食事が終わり、また前回同様あのバーへと行く事になった。またもやバーの入り口でマスターがお待ちかねだった。
「いらっしゃいませ、宮坂様。お待ちしておりましたよ、お坊ちゃま」
そのニヤニヤ顔を止めて下さい、マスター。
「今日は久しぶりに一緒なんだから、ひかりちゃんも飲んじゃいなさいよ。運転なら紗雪にさせればいいから」
「いえいえいえ! 私は運転手としてご一緒しているだけですので」
「花江、無理に飲ませるのは良くないぞ」
何やらオッサンが弱気な顔をしている。ちょっと面白いから煽ってやろう。
「芹屋さんは飲むなら何を頼まれるんですか?」
ちょっと考えてから、ヴァイオレットフィズという答えが返って来た。マスターに目配せすると、またもやニヤニヤしながら頷いたので伝わった様子だ。
「だいたい賢一さんは愛人を多くし過ぎですよね、花江さん。花江さんと私がいればそれでいいじゃないですか!!」
「そうねぇ~、そう思うわよねぇ~」
花江さんの相槌が適当である。それもそのハズ、すでにこのやり取りは15回目なのだから。
前回同様俺達が来たタイミングで店を貸し切りにし、もう他にお客さんはいない状態なのでそれほど問題ではなさそうだ。
賢一さんのオロオロする顔が面白い。
花江さん公認の愛人なんだからもっと堂々としているもんだと思ったが、芹屋さんは他の愛人とは違う特別な間柄のように見受けられる。
今後の為にもよくよく観察しておこう。もちろん反面教師としてだが。
「遠目から眺める分には面白いな、あの3人」
「家ではなかなかあんな風にならないからねぇ、芹屋さん。お酒飲むと人格変わっちゃうのは、あたしちょっと嫌だなぁ」
俺達5人は少し離れた席に移動し、マスター同様ニヤニヤしながら眺めている。瑠璃も牡丹も飲み過ぎないように言ってあるので、前回来た時のようにフラフラになる事はなさそうだ。
「今日で夏希のオフはおしまいか。明日早いのか?」
「ううん、お昼前に部屋を出たらいいくらいかな」
「そうか、でも今日は自分の部屋に戻らないとな」
またしばらく会えなくなるのは少し寂しいが、それは仕方のない事だ。
「いつでもうちに帰って来ていいからね?」
「ありがとう、瑠璃さん。これから、よろしくお願いします」
と言う事で、今日はお開きとなった。
いつもありがとうございます。




