役員会議
本日2回目の投稿です。
10/31 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
はぁ……、めっちゃ疲れた。1日に何回風呂に入ってんだろう、俺。
現在は応接室へと移動し、何やら会議でも始まりそうな雰囲気だ。
「さて、優希の人となりが分かったと言う事で」
呼び捨てかよオッサン。別にいいけど。
一緒に風呂に入るだけで俺の人となりが分かったんですか? むしろオッサンの人となりが良く分かったが。
オッサンこと宮坂三姉妹のお父上、宮坂賢一さんは奥さんの花江さんに合わせてか、茶色い着物を着てソファーに腰掛けている。
「牡丹、始めてくれ」
「はい、では役員会議を開催致します」
はいじゃないが。俺何も聞いてないし、ってか役員でもないし。
「ちょうど昨日名刺が出来上がりましたので、優希さんどうぞ」
そう言って牡丹に手渡されたのは、俺の名前が書かれたスペックスの社名入り名刺。
「取締役……?」
本当に何も聞いてないんだが。
「私と牡丹がスペックスの代表取締役で、紗雪は平の取締役。で、アナタも今日から取締役に就任してもらいます」
パチパチパチってあんた達、それでいいんですか? 取締役って会社の役員ですよね? 俺経営者になるの? ノウハウも何もないんだけど。
「そんな簡単に役員になれるもんなのか? 俺はハンコとか書類に署名したりとか一切していないんだけど……」
「スカウトの時に署名とハンコは貰ってますよ。
優希さん、サインしてはハンコをポンってしてたじゃないですか」
もしかして紗雪が高校生だと早とちりして、とにかく言う事を聞いて下手に出ておこうとしてた時に書いた書類の事か?
確かスペックスとの専属契約以外にも書類があったとか、瑠璃が言ってたな。
本当に内容を確認せずポンポンしてたから全く分かってなかった。
「それはまた随分先を見据えて用意してたんだな……」
何かある意味詐欺にあったような感覚なんだけど。
「牡丹は用意がいいですからね」
さすが牡丹、分かってらっしゃる。とか言ってたなぁ瑠璃が。
「株主が代表取締役を決めて、その代表が役員を決める権利を持っているからな。その2人が決めた事なら問題なかろう」
特別な知識も知恵もないが、問題ないのならいいんだろうか……。
「あたし達の主がただのプレイヤーではカッコ付かないからね~」
風呂から上がると、紗雪は実家の自室にてメイド服から大学に着て行った白いワンピースへと着替えていた。今は宮坂家のご令嬢であり、メイドではないという事だろう。
「ちなみに俺は監査役だ。主に決算書のチェックをしてハンコを押す担当だな」
賢一さんもスペックスに一枚噛んでいたらしい。
「私はAランクのアクトレスです。今度お相手してねぇ~」
三姉妹の母親、花江さんもスペックスの常連らしい。絶対にお相手したくない。
Aランクは変態淑女が多過ぎるからな。義理の息子プレイとかマジ勘弁して下さい。
「さて優希、さっきは娘達との将来について語り合ったわけだが、次は会社の未来について語り合おうじゃないか」
瑠璃と牡丹の目の色が変わる。
語り合ったというほど大げさな事は話していないので気にしないでほしい。後で紗雪にフォローさせよう。
「2週間というわずかな期間ではあるが、優希はプレイヤーとして仕事をしたわけだ。
実際に仕事をした経験から何か気付いた事や、今後店に必要な物や改善点などがあれば自由に話してみてくれ」
う~ん、そうだな……。
「まず一番最初に思ったのは、喫茶スペースのメニュー表に値段が載っていなかった事ですね。あれはちゃんと表記しておいた方がいい。
売り物なんだから値段を表記しないのは不親切だし、本当の喫茶店なら値段を明記しないなんて事はない。リアルじゃないと思いました」
支払いは全てお客様がする。プレイヤーが気を遣って飲み物を頼めなかったりするんじゃないだろうか。
紗雪が議事録をとっているようだ。その隣で夏希が小さくなっている。場違いだよな……。
「なるほどな、次は?」
先輩の青葉さんが以前ぼやいていた事を思い出した。
「一部のアクトレスに関する問題ですが、プレイ後にプレイヤーへの評価を入れず放置されている方がおられると聞いています。僕はその経験がないんですが、ポイントを入れてもらえないとプレイヤーはランクアップする事が出来ません。
だからプレイヤーに対する評価ポイントを入れないとアクトレスへのポイントが反映されないように工夫してみるのはどうでしょうか?」
アクトレスとプレイヤーは、互いに評価し合いポイントを付ける。
中には自分だけポイントを貰っておいて、プレイヤーへの評価ポイントを入れない方がおられるらしい。早く名を上げたいプレイヤーにとっては大問題だ。
気に行ったならばお気に入り登録をし、読み終えたなら、いやプレイを終えたなら評価を入れる。これ本当に大事。
「そんな問題が……、全然気付きませんでした」
瑠璃が呟く。まぁ本当に限られたアクトレスのみに見られる問題だからな。
何回もそんなアクトレスと当たる青葉さんは実に運が悪いと言えるだろう。
「牡丹、対応は可能なのか?」
「そうですね、アプリを作ってくれた会社に確認します」
「よし、次は?」
そんなポンポン出て来ませんよ。そうだな、後は何だろう?
「ん~、瑠璃。このお断り屋はRPGなんかでよくある冒険者ギルドを元にして作ってるんだと思うけど、合ってるか?」
「ええ、合ってます。ランク制度を導入していますし、プレイヤーカードはそのままギルドカードのようなものですから」
つまり、リアルギルドなわけだ。
ファンタジー物のRPGシステムの再現をしているという事なら、一つ大きな要素を取りこぼしている。
「現実的に再現出来るかどうかは分かりませんが」
そう前置きして、少し前から考えていた提案をする。
「冒険者ギルドが再現出来たのなら、もう一つ再現してみたいものがあります」
みんなが俺に向き直る。そんなに期待されても困るが、言うだけ言ってみよう。
「リアル迷宮を作りましょう」
どこか大きな広場や会場を用意し、イベントを開催する。
ダンジョンを作り、プレイヤーをモンスターに見立てて徘徊させ、冒険者に見立てたアクトレスに探索をしてもらう。
通常であればプレイヤーがお断りをする側なんだが、そのダンジョンイベントに限ってはプレイヤーの誘惑をアクトレスがお断りする事で先に進み、ランクの高いプレイヤーが待つボス部屋を目指す。
ボス部屋のプレイヤーに対して見事お断りする事が出来たアクトレスには、伝説のアイテム的な景品を進呈する。
どうだろうか、なかなか面白いイベントになると思うのだが。
「何それすごく面白そう!! って事はあたし達はダンジョンマスターって事ね、何かワクワクするわ」
「じゃぁ紗丹君には文字通り魔王役をしてもらいましょう。ダンジョンに付き物のレアポップモンスターになってもらって、勝つ事が出来た方にも景品をお渡しする事にしましょう」
紗雪と牡丹がノリノリだ。実現可能かどうか分からないが、プランを立てるだけでも面白いと思う。
「じゃあ冒険者は夏希ちゃん扮する王女様が異世界から召喚した転移者って設定にしましょう!
イベント開始時にエミルちゃんに開会宣言の挨拶をしてもらったら盛り上がりそうね!!」
こらこら瑠璃、夏希を巻き込むな。
エミル起用となると高畑社長が嬉しそうに企画に入って来そうで、面倒臭い事この上ない。
あ、決して夏希を除け者にしようとかそんなんじゃないからな!?
だからそんな目で見ないでほしい。こいつには考えている事が筒抜けのようで気が抜けねーな。
「なかなか面白そうじゃないか。使えそうな会場がないか、俺の方でいろいろと当たってみよう」
しかしこのオッサン、ノリノリである。
「先に魔王がどのあたりにポップするのか教えてね?」
花江さん、俺一点狙いとかマジで怖いから止めて下さい。
いつもありがとうございます。
やっとリアルダンジョンの話を出す事が出来ました。
今後ともよろしくお願い致します。
9/26 誤表記修正 レアドロップモンスター → レアポップモンスター ドロップ → ポップ
感想にてご指摘頂きました、ありがとうございます。
リアルダンジョンがまだ始まっていない件




