裸のお付き合い
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さて、現在の状況をご説明しよう。
ここは宮坂家の浴室だ。浴室と言ったが、ホテルの大浴場のような広さがある。団体さんで入る事を想定してこの規模にしたのだろうか。
マーライオン的な物の口からはお湯がドバドバと出ており、常にお湯が掛け流されている状態の湯舟。ゆうに十数人が同時に浸かる事が出来るだろう。
湯舟の外にはメイド長と美少女メイドが待機しており、時折湯加減はどうか聞いて来る。初対面の女性がこんな状況の中突っ立っているだけでのぼせ上りそうですけど。
そして一番重要な情報、一緒に湯舟に浸かっているこのナイスミドル。
宮坂三姉妹の御父上、宮坂賢一氏と一緒に風呂に入っている件について。
「優希君、湯加減はどうだ」
のぼせ上りそうです。
何故こんな状況になったのか。少し時を巻き戻そう。
「着きました」
芹屋さんがそう言ってからもうしばらく車を走らせた先に、やっと立派な洋館が見えて来た。
どんだけ敷地広いんだ、ちょっとした運動公園くらいあるんじゃないか? 洋館以外にも小さな建物がいくつかあり、これが大企業グループの筆頭株主の財力かと驚かされる。
洋館の玄関近くに車が停まり、芹屋さんが後部座席のドアを開けてくれる。
「いらっしゃい」
見てすぐに分かった。瑠璃と紗雪のお母さんだと。
わざわざ玄関で出迎えて下さった。
いつもこんな上品そうな着物姿なんだろうか。伝統産業が根付く街で暮らしていたとは言え、俺は全く着物に詳しくないので上手く表現する事が出来ないのが残念だ。
ただ見ただけで分かるのは、牡丹の花が描かれた瑠璃色の着物に、白い帯を合わせておられるというくらいか。
あれ? これって三姉妹を表現してる?
「お招き頂きありがとうございます。桐生優希と申します」
「潮田夏希と申します」
「ご丁寧にどうもありがとう。自分の家だと思って寛いでくれていいからね?
あなた達もお帰りなさい。最近全然帰って来ないと思えば……、いい男ね」
瑠璃の脇腹を肘で突く和服美人。
いきなり居心地悪いです。
「ただいま、お母さん。お父さんは応接室?」
瑠璃が脇腹を押さえつつさらっと流してくれたから助かった。そうそう、手土産を渡さないと。
しかし次の一言で俺自身が流される事になる。
「お父さんはお風呂で待ってるわ。さぁ、優希君。行ってらっしゃい」
芹屋さんに手土産を奪われ、紗雪に手を引かれて靴を脱ぐ。
えっ、あの、え~……、なんて言っているうちに脱衣所へと着き、さぁさぁと脱がされる。
初対面の女性に服を脱がされるなんて、と思ったが、よく考えればつい2週間くらい前にもあったな。
そして現在に戻る。広い湯舟に男2人。裸のお付き合い。この汗はお湯が熱いからだけではないと思う。
「で、優希君はうちの娘達とどんな付き合いをしているんだね?」
娘達と、のあたりにだいぶ悪意が籠っている気がする。
「はぁ、とてもいいお付き合いをさせて頂いています」
「そんな事を聞いているんじゃない」
怖ぇ~よ。
「将来はどう考えているんだ? 私達夫婦には娘しかいない。いずれ婿を取らないとと思っていたんだ。
瑠璃ももう22だ、ぼちぼち見合いをさせてもいい頃だと思わないか?」
いや、俺に聞かれても。
何とかしてくれよと紗雪を見る。芹屋さんと2人、無表情でこちらを見ている。
「そこらへん、優希君はどう思うね」
う~ん、どう思うと言われてもなぁ。素っ裸だし、変に言い繕っても仕方ないし、正直に言って怒られるか。
「僕達は今何が楽しいかという事しか考えていません。正直将来どうするか、なんて考えてたらこんな状況にはならないと思うんですよ」
瑠璃達にいつまでこのハーレムを続けるかなんて聞いた事もないし、俺も今どうあるべきかしか考えていない。
「まだ2週間しか経ってないという事もあって、探り探りですね。まだ僕自身娘さん達の事を理解し切れていない点も多いし、僕の事もまだまだ知ってほしいと思ってます。
宮坂のお家の事を考えると、やはり僕は身を引くべきなのかも知れません」
「旦那様、それは……」
「黙れ家具。……、求められてこの関係になったんですが、僕自身すごく楽しいんです。最近辛い事が多くて笑顔すら忘れてたんですけど、娘さん達のお陰で救われたんです。今さら別れろと言われても無理です。僕には4人全員必要なんです。
見合い? 知りませんよそんなもの」
「ちょっと優希様、それは」
「黙れ家具が、俺に恥をかかす気か」
お父さんも家具好きなんですね。芹屋さんが紗雪と同じ反応をしているのが気になる。
「賢一さん、もしかして……」
「ほっら見ろ、お前が勝手に喋るからすぐにバレたぞ? 宮坂家の秘密を知られてしまった。生きて帰す訳には行かないようになってしまった」
殺されるフラグキターーー(棒) どうやって逃げようか。
「紗雪」
「はい、メイド長は大旦那様専用の家具でございます。メイド長の他に4人囲っておられます」
俺より2人多いじゃん。
「言うなよ紗雪、これからが面白いところじゃないか全く。しかし優希君もなかなかやるな。
男ならそれくらいじゃないとな、うん」
何なんだこの茶番は。さっきからニヤニヤしてこのオッサン。
「バラしたひかりには罰が必要だな。優希君、一晩貸そうか?」
娘達の恋人に寝取らせさせようとかとんでもない人だな。
紗雪が氷のように冷たい目で見てるけど大丈夫? 芹屋さんの方はちょっと期待するような目だが。
「勘弁して下さい……」
はぁ、もう上がりたい。
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