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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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ハーレムへようこそ!

10/30 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正

 胸に空いていた穴から目を逸らしていた俺だが、やっとその穴が塞がっていくのを感じている。

 失くしたモノは大切なモノだった。気付かぬうちに遠いどこかに行ってしまっていた。

 それに気が付いた今、もう手放したくはないと抱き締めている。夢うつつのまま、夏希なつきの身体を撫で回していた。


「旦那様」


 いや、今俺が一緒に寝ているのは夏希のはずだ。紗雪さゆきな訳がない。


「アナタ」


 瑠璃るりでもない。


優希ゆうきさん」


 牡丹ぼたんでもない、ってさすがにここまで来れば気付いてしまう。あぁ、このアパート解約してないのバラしたな。

 首だけ声の方へ向けると、3人がこちらを向いて立っていた。


「紗雪、説明しろ」


「はい、昨夜お2人がスペックスを抜け出したのにすぐ奥様が気付かれたのですが、何とか時間が欲しいとお願い申し上げました。

 その代わりにこのアパートの場所を教えるようにと言われまして、交換条件としてお伝え致しました」


 なるほど、アパートの解約をしてない事は最初から気付かれていたが、場所がどこであるかまではバレていなかったと。

 で、俺と夏希の時間を稼ぐ為にここの場所を教えざるを得なかった、と言う事か。本末転倒だな。


「紗雪、次のお前との時間1回休みな」


「なっ!? ……、恐れながら旦那様、私も


「黙れ無能、それを何とかするのがお前の仕事だろうが。使えない家具は捨てる、二度目はないぞ」


「んんっ……、かしこまりました」


 一礼し、一歩後ろへ下がる紗雪。

 やり取りのせいか、夏希が起きて状況を把握しようと考え込んでいる様子だったので、タオルケットを頭まで掛けておく。


「さて瑠璃、その後どうだった?」


石田いしだ先輩には治療に一晩掛かるだろうという事でお引き取り願いました。そろそろエミルちゃん宛てに電話が入る時間かも知れません」


 時計を確認する、朝の8時半か。少し寝過ぎたかも知れん。

 タオルケットの下で夏希の感触を楽しむ。あ、お断りされました。


 昨夜はシャワーを浴びていないので、ちゃちゃっと身体を洗ってしまいたい。

 だがこの3人がいる前で夏希を全裸のままシャワーに連れて行くのもなぁ、どうしたものか。


「夏希、シャワーどうする?」


 おずおずとタオルケットから顔だけ出し、3人と対面する。


「お、おはようございます……」


 そう言って座ったまま頭を下げる夏希に対し、

 

「おはようございます、夏希さん」


「おはようございます、夏希お嬢様」


「おはよう、夏希ちゃん。そして、ようこそ私達のハーレムへ!」


 嬉しくて堪らないような表情で、瑠璃が夏希に抱き着いた。

 いやちょっと気が早くないか? ヴィーン、ヴィーン、夏希のスマホが着信を伝える。


「先輩かしら。紗雪、取ってあげて」


 紗雪がテーブルに置かれた夏希スマホを夏希へと手渡す。通話ボタンをスワイプする前に、瑠璃が夏希を制する。


「いい? 簡単に分かりましたなんて言っちゃダメよ。無理に私達のうちに来いとは言わないけど、自分がどうしたいのか考えた上で返事するのよ。一流の女優(アクトレス)を目指すならなおさらよ。

 優希君に相応しい女になりたいでしょ?」


 目の前でそんな事言われたら俺どうしていいか分かんない。俺に相応しい女って何なんだろう。

 こう考えるのもまだ俺が覚醒し切ってないからか? そんな事ないような気がするんだが。


 夏希は瑠璃の目を見つめ、コクリと頷いてからスマホをスワイプする。


「おはようございます、エミルです。はい、……、はい、大丈夫です。いえ、はい、そうですか。明日は時間通りでお願いします。

 はい、失礼します」


 ふぅ、小さくため息をついてスマホをベッドへと置く夏希。

 スマホから零れた石田さんの声は、全てエミルを心配する内容の物ばかりだった。

 俺とどうなったか、今一緒にいるのかなど、詮索するような事は一切なかった。


「今日も1日オフなんで、ゆっくりしたいと思います。出来れば皆さんと、お話出来たらと思うんですが……」


「もちろん大歓迎よ! 紗丹さたん君も今日は1日オフの日だし、私も牡丹も特に会議や来客の予定もないの。紗雪は大学だけど、多分すぐに帰ってくるわ。ね?」


 紗雪が大きく頷く。とても優しいほほ笑みを浮かべている。

 さゆは嫉妬とかするんだろうか。また機会があれば聞いてみよう。


「ではお部屋をどうするか、私達との関係も含めてこれからの事は後ほど詳しくお話するとして、とりあえずシャワーを浴びたいですよね?

 紗雪ちゃん、お連れしてくれる?」


「かしこまりました」


 タオルケットにくるまったままベッドから立ち上がり、夏希が紗雪に連れて行かれる。

 あいつ夏希を洗うつもりじゃないよな…? しょぱなからあまり飛ばし過ぎないようにしてほしいもんだが。


「それでアナタ、どうだった……?」


 どうだったとはえらくザックリした言い方だな。

 正妻としては他所よその女との一夜の感想を聞きたいものなのだろうか。本当に変わっているなぁ。


「うん、最高だった」


 正直にそう伝える。夏希の前でこんな会話したくないから、今のうちに素直に言っておこう。

 瑠璃の顔がぱっとはなやぐ。こいつも本当に美人だな、変態なのに。

 くそー、幼馴染みと感動の再会を果たした後だと言うのに、どうしてこうもときめいてしまうのか。俺も大概変わってるのかもな。


「それは良かったですね」


 目尻に涙を浮かべ、牡丹が頷いている。あぁ、こっちにも変態な美人さんが……。

 俺って本当に変わった()達に恵まれているんだな。

 好きな相手が想い人と結ばれ、嫉妬するでなく共感して共に涙するとは。

 器が大きいのか、器がぶっ壊れているのか分からんが、今の俺にとっては何もかも手放したくないと思えるかけがえのない存在だ。

 こうして俺は瑠璃が用意したハーレムに、さらにどっぷりとはまって行ってしまうのだ。

 

 いや、それではダメだ。俺がハーレムの色を決めて行かなくてはならない。あくまでハーレムの主は俺なんだ。

 そこが非常に重要、譲ってはいけない最低限のライン。


「瑠璃、もし夏希がハーレムに入りたいと言ったら、俺とのスケジュール調整を最優先にしてほしい。あいつはなかなかオフなんて取れないだろ。多分俺のオフと重なるのはごくたまにだと思う。

 幼馴染だから特別にと言うつもりはないけど、少ない機会を大切にしてやりたい。……、いいか?」


 瑠璃は手で口を押え、驚いた表情をしている。

 牡丹も眩しい所を見るかのような、まるで成長した弟を見るかのような表情。いや牡丹の場合はそのまんまか。


「分かりました、アナタ。任せて下さい」


 俺が本当の意味でハーレムの主になった瞬間かも知れない。



分かりにくいかも知れませんが、今回のタイトルは優希へ向けての「ハーレムへようこそ!」と瑠璃が夏希に言った「ハーレムへようこそ!」の二重の意味になっています。夏希はまだハーレム加入の意思表示をしておりません。

と言う事で、今回で第二部終了。23時に幕間を挟んで明日より第3部を開始致します。


今後ともよろしくお願い致します。


9/23 誤字修正

・やり取りのせいが、夏希が起きて状況を把握しようと考え込んでいる様子だったので → やり取りのせいか、夏希が起きて状況を把握しようと考え込んでいる様子だったので

・初っ端からあまり飛ばし過ぎたいようにしてほしいもんだが。 → 初っ端からあまり飛ばし過ぎないようにしてほしいもんだが。

・いや牡丹に場合はそのまんまか → いや牡丹の場合はそのまんまか

・俺も大抵変わってるのかもな → 俺も大概変わってるのかもな


誤字大杉orz



電子書籍版お断り屋の4巻目及び合本版の最終部分がこの回になります。

平成31年2月19日に2回目の警告を受け改稿を重ねた結果、全体を通すとそれほどお話は変わっていないのですが、部分的な文章はガラッと変わっています。

正直に言って電書版の方がエロい。

各電子書店様よりダウンロード販売されておりますし、ピッコマというアプリを入れて頂ければ全て無料で電書版をお読み頂けます。

この機会に是非ともご検討下さいませ。

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