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友達の彼女の告白を断ったら、お断り屋にスカウトされました!  作者: なつのさんち


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55/212

2人だけの時間

次の日……、ではなく前話の続きです。


10/30 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正

 誰かの手のひらで踊らされていようが、今は関係ない。今この時が大事だ。全てだ。

 この部屋には俺と、エミルの2人しかいない。誰にも邪魔はさせない。


 後ろから抱き着き、長く綺麗な髪の毛に顔をうずめる。大好きな匂い。落ち着くような、それでいてドキドキするような匂い。頭がくらくらする。

 少し強引だがベッドへと移動し、2人で腰掛ける。

 耳の後ろにキスをし、今まで触れた事のなかった幼馴染みの感触を味わう。


 幼馴染みなのか、それとも今日初めて会った若手人気女優なのか。今の俺には判別が付かない。


 小さい頃はよく2人で風呂に入ったりしていたが、それも小学校に上がる前の話だ。こんなにも柔らかく、少しでも力を入れれば壊れてしまうような感触。


「俺達制服来たままだな。高校の制服に良く似た格好で、あの日の続きか。

 失くした時間を取り戻そうとしているみたいだな」


 そっとエミルを横にして、上から覆い被さる。こんな顔、俺にしか見えないようにしておかないと。


「今は、エミルだから、何の事言ってるのか分からないよ……、キャッ!」


 邪魔な物を1つ1つ取っ払って行く。

 俺のトラウマ。

 幼馴染みとしての距離感。

 女優としての立場。

 1人の男、1人の女として、1つ1つ……。


「手馴れてる感がちょっと嫌だな……」


 キスをして口を塞ぐ。エミルが俺の顔を両手で掴み、離してくれない。

 せっかく邪魔な物が無くなったのに、これじゃあエミルをちゃんと見れないじゃないか。

 大丈夫、何も恥ずかしがる事なんてないんだ。ほら見えた。


「綺麗だ。あの時はじっくりと堪能する余裕がなかったからな」


 両親が事故で亡くなった後、何とか俺を元気付けようと一緒に泣いたり、冗談を言ったり、学校の話を振ったりしてくれていた夏希。

 その夏希に対し、俺は一切の反応をせずに無表情で黙ったままだった。

 優奈の面会時間はずっと病院におり、面会時間が終われば家に帰ってぼーっとする生活を続けていた。

 これではダメだと思ったんだろう、夏希は俺の目の前で着ていた服を全て脱ぎ、裸で抱き着いて来たんだ。

「これでも、アカンの……?」とても勇気が必要だったであろう。そこまでしても反応を見せない俺の目の前で、夏希は泣いていた。

 女性として見られなかった事、ここまでしても俺が無反応な事、どちらにしてもショックだっただろう。

 本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。自分が情けない。


「何の事か、分からないよ……」


 シーツを握り顔に押し付けて隠す夏希。鼻水を啜る音、身体を震わせて泣いている。

 この涙は、その時を思い出しての悲しみか、それともこんな日が来た事に対する喜びか……、それとも両方か。


「夏希、ありがとうな。エミルは知らん事かも知れんけど、夏希には本当に感謝してるんや。

 大好きやで?」


 声を上げて泣く夏希。ただ抱き締める事しか出来ない。横向けに寝転んで抱き締め、背中を撫でる。

 耳元で、ありがとう、大好き、これからも一緒にいてほしい、そんな事を言い続けているうちに、夏希は寝てしまった。



 寝てしまった夏希にタオルケットを掛けたはいいが、さぁこの衝動をどうしようか。

 せっかく夏希も了承の元、事を運んでいたのにも関わらずこのお預け状態。

 この行き場のない衝動を、たかぶりを1人で処理するなんてとんでもない!

 ここはひとまず落ち着こう。大丈夫、今は夜の8時。時間はまだ十分にある。


 夏希も今日はとても疲れただろうから、このまま朝まで寝ている可能性はあるが、そうなったらそうなったで構わない。朝日の中で結ばれるってのもなかなかイイもんだ。



 久しぶりに帰って来た部屋、少し掃除をする。物音で夏希が起きたら一石二鳥だ。でもあまり音を立て過ぎても無神経な奴になってしまう。加減が難しい。



 全く起きる気配がない。あれから2時間が経った。

 俺も疲れているはずだが、精神状態が最高にハイってヤツなので寝れる気がしない。

 夏希が俺のベッドに寝ている。この状況で寝れる奴の気が知れない。さっきから何度も部屋を意味もなくウロウロしているが、もう限界かも知れない。


「ん~……」


 夏希が寝返り、掛けていたタオルケットがハラリと落ちる。隠されていた胸元が露わになり、目が離せなくなってしまった。


 ちょっとだけ、ちょっとだけ触る程度ならいいだろう。

 夏希の横に寝転び、ピタっと身体を密着させる。まだ起きる気配はない。

 後頭部に顔を埋める。反応なし、オールグリーン! いや俺の脳内はオールピンクだ!! ヒャッハー!!

 掛けていたタオルケットをバサリと取り去り床へ捨てる。

 さぁ、ショウタイムの始まりだ……!!


「んっ……」


 夏希の顔が目の前にある。チュッ、キスをするとパチリと夏希の目が開いた。


「ゴメン、寝てた……?」


「いや大丈夫、寝ててくれてもいいよ。堪能させてもらってるし」


 話す間も手を止めず、身体を起こして首筋に鼻を当て、深呼吸する。


「ちょっと!? アカンて、シャワーも浴びてへんのに……」


「今はエミルなんじゃなかったっけ?」


 あれあれあれ? ニヤリと笑った俺の顔を見て、またシーツに顔を押し付けてしまう。


「じゃあシャワーを浴びに行こう。洗ってあげる。さぁ、腰を上げて」


 シャワー浴びるなら服を脱がないとね。びちょびちょになってしまう。


「じ、自分で出来るから! 大丈夫だから!!」


 慌てて起き上がり、俺の手を制する。分かりました、自分で脱ぐと言うのならそうしてもらいましょう。じ~っ。


「変態っ!」


 むしろご褒美です。

 俺が脱がすという提案を断らせ、自分で服を脱がせる事で一緒にシャワーを浴びるというより難を示しやすいであろう提案のハードルを下げる。

 しかし、だからと言ってなかなかそう簡単に素っ裸になれるわけもなく。真っ赤になってモジモジしている夏希が愛おしく感じられる。


「夏希、ごめんな。もう我慢出来ん」


 シャワーなんて浴びなくても、したい事は出来るのだ。



いつもありがとうございます。

また明日もお付き合いよろしくお願い致します。


コメント・評価・ブックマーク、お待ちしております!!


9/23 誤字修正

・あまり音を立て過ぎても無神経や奴になってしまう → あまり音を立て過ぎても無神経な奴になってしまう

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