みなぎったり大人しくなったり
今日も2回投稿出来そうです。
10/30 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
会社フロア入口にある守衛室で、彼女は清算を済ませた後に俺に向かって手を振った。
「ありがとうございました」
頭を下げ、エレベーターを見送る。
とんでもないプレイだった。未だプレイにてみなぎってしまった俺の衝動が静まってくれない。一体これはどうしたらいいんだろうか。
紗雪をこっそり呼び出すか、それとも牡丹お姉ちゃんに甘えさせてもらうか、いや瑠璃を乱暴に抱き締めるか……。
そんな事を考えていると、気付けば隣に走って逃げ子さんがいた。
「お疲れ様、次に呼ばれているから行こう」
次に呼ばれている? 俺はまだ受付カウンターにも戻っていない。
1人しかお相手出来ないと伝えたはずだが、またお客様とのプレイをしろと言うのか。
楽そうなプレイを選んだつもりがなかなかにハードなお仕事だったので、ちょっと勘弁してほしいな。
次こそ本当に手を出してしまいそうで危険が危ない。
「とりあえず、プレイ終了の報告しに受付カウンターへ戻ろ?」
「ん? ああ、そうだな」
とりあえず言われた通りに受付フロアへと戻るか。
ちょっと前かがみでしか歩けないのでゆっくり歩いて下さい。
エレベーター前まで到着、しかし混雑しているのかなかなか来ない。それだけプレイヤーがアクトレスのお相手に忙しいという事だろう。
「どうしたの?」
どうしたのって言われても、ちょっと説明しかねます。あんまりこっちを見ないで下さい。
それにしても走って逃げ子さん、結構喋る方なんだな。俺に気があるのか?
いやいや、みなぎっているからといって調子に乗ってはいけないな。
それでもなかなか中性的な整った顔、胸はすらりとしているが小さいお尻がとってもキュートで、ちょっとくらい触ってもいいかな? って気になってしまう。
ここで手を出してしまっても、多分あの3人は怒りはしないだろう。「ハーレムの主は気が多い方がいい」なんて思ってそうだし。
あの3人が了承すればハーレムに迎え入れればいいわけで、この手を止める必要はないかも知れない。
ないんじゃないかなぁ。ないといいなぁ。
「もしかして、ボクの身体を触りたいと思ってる?」
バレた。速攻でバレた。
いやでもバレてもいいような気がする。スカートの中身を見せてくるようなコだ、ちょっとくらい触ったからっていきなり叫んで痴漢呼ばわりしないんじゃないか、いやそうに違いない。
よしちょっとだけ触ろう、そして反応が悪くなければ空いているプレイルームへ連れ込んで
「ボク男だけど、それでもいいなら触ってもいいよ」
……、ハ? 男? 男の娘ってヤツ?
チンっ、エレベーター待ってるんだったな、忘れてた。
エレベーターに入り、密室に2人きり。さっきまでみなぎっていた衝動は衝撃的な発言ですっかり大人しくなってしまった。
「男ってどういう事? どこからどうみても女の子にしか見えないんだけど」
「身体は女として生まれたんだ、ボク。でも心は男なんだ。それでもいい?」
性同一性障害、というヤツだろうか。という事は恋愛対象は女性?
そんな人をハーレムなんかに入れてしまったらとんでもない大混乱が起きそうだ。欲望のままに手を出さなくて良かった。
と言うかそもそもハーレムには入らないだろう。何せ心は男、俺の事を好きになる要素がないわけで。
「身体は女で心は男、そして一人称はボクか。そんなに可愛い顔してるのにもったいないもんだな。
でもその方が女の子受けしてモテそうだし、結果オーライか?」
年上のお姉さんとかに受けが良さそうだな。
とある管理人さんほどロリってわけではないが、高校生くらいにしか見えない外見なら大好物ですと言う女性が多そうだ。
チンっ、受付フロアへ到着した。とりあえずプレイ終了の報告をしに行こう。
「ボクは女性にモテたいわけじゃないんだ」
そう言ってまだ俺の隣を離れない走って逃げ子さん。まだ用事があるんだろうか。あ、次のプレイの案内もこのコがしてくれるのかな?
「終わりました、思ったよりもヘビーでした」
「お疲れ様です、助かりました。他のアクトレス達も渋々納得して下さって、お帰りになりました」
ふむ、みんな帰ったのか。って事は俺は誰に呼ばれているんだ? またプレイしないとダメなんだと思っていたのだが、別の用事でもあるんだろうか。
くいくい、走って逃げ子さんが袖を引っ張ってくる。
「みんな待ってるから、行こう」
「みんなって誰? アクトレスじゃないのか?」
「アクトレスで合ってる。でもお客様じゃないの。とりあえず連れて来てほしいって」
アクトレスであってお客様じゃない、何かの謎かけか? あんまりそういうの得意じゃないんだが。
考え込んでいると手を取られて引っ張られた。連れられて歩いて行くと、またエレベーター前。
「どこに行くんだ?」
「先に衣装フロアへ行って着替えないと」
もっと詳しく説明してくれてもいいんじゃないかな。まぁいいか、疲れてるし黙って従っておこう。
エレベーターに乗り衣装フロアに到着。走って逃げ子さんが受付嬢に何やら声を掛けている。
「紗丹様、こちらへお着替え下さい」
出された衣装は、詰襟の学生服だった。俺の隣で何故か走って逃げ子さんもセーラー服を受け取っている。
「じゃあ着替えて来て」
そう言って更衣室へと入って行った。もしかしてプレイ相手って逃げ子さん?
心は男、と言いつつ俺とプレイしていい感じになるおつもり? またちょっとみなぎって来たかも知れない。
とりあえず制服に着替えようか。懐かしいもんだ、うちの高校は男も学ランで女はセーラー服だったな。
もう何年も前の話のような気がする。いろいろあったからなぁ……。
学ランに身を通し、更衣室を出るとすでにセーラー服姿の逃げ子が待っていた。
よく似合う、まるで現役のようだ。
「じゃぁ行こう。学校フロアへ」
さぁ握れとばかりに右手を差し出された。左手で握り、またエレベーターへと乗り込む。
ちょっとニヤけているかも知れない。無表情を装い、逃げ子さんに尋ねる。
「で、プレイ相手は君なのか?」
「私もプレイ相手の1人」
そう言えばさっきみんな待ってると言っていたな、複数アクトレスを相手にしないといけないのか?
一体どんなプレイなんだろうか。
学校フロアへ到着し、『1-1』とプレートが貼られた横開きの扉の前で立ち止まる。
逃げ子さんがノックをし、一呼吸置いてから扉を開く。
教室の中にはセーラー服姿の5人の女性が立っていた。
「夏希……? 瑠璃、牡丹、紗雪に石田さんまで? 何なんだこの状況は……」
窓の外からは夕焼けが映り込み、教室内を赤く染めている。これはまるであの時の再現。
あの時? いつの事だ、何があった? 思い出せない、でも脳裏に焼き付いているこの光景。
何を忘れていたんだろうか。記憶の奥底へと仕舞い込んだ何かを呼び起こそうとして、軽く頭痛を感じる。
教室の前で立ち尽くし、歩き出せないでいる俺の背中を、逃げ子さんの小さな手がそっと前へ押し出した。
感じる木の匂い、少しホコリっぽい空気、こちらを見つめるセーラー服姿の5人。後ろにももう1人。
「さぁ、始めましょうか」
始めたくない、何故かそう思った。
次話は23時頃に投稿するつもりです。
コラボ作品、心の中へ紡ぐ糸も合わせてお願い致します!
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9/23誤字修正
・「ん?ああ、どうだな」 → 「ん?ああ、そうだな」
・さっきまでみなぎっていたアレは衝撃な発言で → さっきまでみなぎっていたアレは衝撃的な発言で
・疲れてるし黙った従っておこう → 疲れてるし黙って従っておこう




