ハーレムという方法
本日2回目の投稿です。
10/30 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
高畑社長が帰るという事で、外までお見送りしますわと瑠璃と牡丹がついてオフィスを出て行った。
残されたのは俺と夏希、そして紗雪と石田チーフマネージャーの4人となった。
「ゆーちゃん……、優希はお隣の人と付き合ってるの……?」
おずおずと尋ねて来る夏希。意識して優希と言い直しているのはやっと気分が落ち着いて来た為か。
高校に上がる前まではずっとゆーちゃんだったが、自分から言い出して優希と呼ぶようになったんだったっけか。
「…………」
紗雪は沈黙を保っている。俺から話せという事か?
まぁ人に説明させるのも何だが、自分で言うというこの羞恥プレイ的な状況は辛いものがあるな。
ってか石田さん瑠璃から俺の事聞いてんだよね? 何でノーリアクションなんすか?
「お付き合い、か。男女の関係かと言う意味やったら、そうなるな」
ちょっと回りくどい言い方になってしまった。男らしくないと言われるだろうが、自分から堂々とハーレムの主であるとはなかなか言いにくいものだ。ってかそうそう言う機会なんてないと思う。
しかし、あとの2人が帰って来てしまったら、全て説明せざるを得ないだろう。やはりその前に自分から言い出すべきか。
「実はこないだ、バイト先の友達の彼女に告白されてな、喫茶店で。お前とよく2人でカフェ巡りしてたやろ? 最近1人でおいしいケーキ探して出掛けるようにしてんねん。長い事精神的に引き籠ってたから、意識して外に出るように、な。
んで、その告白をお断りしたんを、瑠璃と牡丹に見られてて、それでお断り屋のプレイヤーにスカウトされたんや」
「何でスカウトされたからって紗雪さん? と付き合う流れになんの?」
おっとツッコみがちょっとだけ早かったな。声も平坦、目つきも鋭いね。
分かった分かった、ちゃんと説明します、ハイ。
「オーナーの瑠璃と牡丹は、それぞれ目的があってお断り屋を立ち上げた。
牡丹は過去に起こった身内の事件がキッカケ、瑠璃は昔からの夢を実現する為にや。牡丹の方は自分で聞いてくれ、俺から話す事やないし。
ん~で、瑠璃の理由は、その……、何と言うか、アレやアレ、うん。あ~」
「私の姉、瑠璃は中学生の頃から、ハーレム物の物語に憧れてたの」
あ~、タイムリミットでしたか~……。
「もちろん主人公になりたいんじゃなくて、色んなタイプの女キャラを侍らしている主人公の、正妻に憧れてたのよ」
「ハーレム……?」
そら理解出来ないよな、日常会話でハーレムなんて単語使わねぇもん。もし道端でハーレムがどうのこうのって話が聞こえて来ても、あぁ小説の話してるなってくらいにしか思わないもん。
「そう、それでとある喫茶店で、ハーレムの主を見つけたの。姉は正妻枠、私は義理の妹枠、そして牡丹ちゃんは愛人枠。ここまで言えば分かる?
私達三姉妹は優希を主とする、ハーレムの女キャラなのよ」
はぁ、人から聞くと本当に何でこうなったんだろうと改めて思う。
まだあれから2週間しか経っていないが、自分自身すっかり慣れ切ってしまっているのを自覚する。
非日常の日常化、知らぬ間にとんでもない所まで来てしまったもんだ。
「ハーレム、そんな方法が……」
ん? 夏希よ、そのリアクションはちょっと違うんじゃないか? 何かもっと早く気付いてたら良かった的な言い方に聞こえたんだが、気のせいだろうか。
そこは優希の変態! とかそういうリアクションなんじゃないの? 普通は。
やっぱお前も相当変わってんのな。
「あたし達は高畑社長に貸しが出来た。あなたが生放送に飛び入りした事で、本来であればスポンサーへの違約金などでとんでもない状況に陥ったであろう状況を、牡丹ちゃんが何かあった時の為にと事前に打っていた対応策を取る事で回避した。
だからその対価としてあなたのプライベートを要求したの。あなたが聞いていた通り、高畑社長的には問題ないそうよ」
「エミルのプライベートを要求とは、どう言う事……?」
やっぱり分かってなかった石田さん。でもそれが普通のリアクションだろう。
でも高畑社長に対して分かりましたと言ったのは、何に対する返事だったんだ?
「あたし達のハーレムの事をもっと詳しく説明すると、複数の属性を持っているキャラばかりなのよ。
姉は女社長で正妻、牡丹ちゃんは秘書で愛人、そして私は義妹でメイド。そしてそこにあなたが入るの。幼馴染で女優、どう? ハーレムに8つの女キャラが存在する事になる。
あたし達にとっては非常に魅力的なキャラだわ。とっても楽しそうじゃない」
そう言って紗雪は俺の首に手を回し、抱き着いて来た。顔を夏希の方へ向け、ニヤリと笑う。
「優希をみんなで共有しながら、時には独占も出来る。同じ男に惚れた女同士で仲良くも出来る。この1フロア上で優希を入れて4人で住んでるの。だから、あなたにも一緒に暮らして欲しいのよ」
ね? 優希。と耳元で囁く紗雪。
いやいやいや、それではい分かりましたになるワケがない。
俺と夏希は生まれた時からの幼馴染で、家も隣同士。その関係で今までずっと来た。
だと言うのに今日から男女の関係になれ、そして同じ男を私達で分け合いましょうって言われてハイそうですかとなるワケがない。
「ちょっと! うちのエミルを何だと思ってるの!? ただ男と付き合うってだけでもダメなのに、その男を複数の女性で分け合いましょう? みんなで一緒に暮らしましょう?
事務所として認められるワケないじゃない!!」
「石田先輩、高畑社長は了承されていましたよ、先輩も聞いていたでしょう?」
瑠璃と牡丹が戻って来た。瑠璃の笑顔がちょっと怖い。後輩でも正妻でもなく、これは出来る女社長としての顔だ。
「それは、そうだけど……、でもチーフマネージャーとしてそんな事認められないわ!!」
「では優希さんのスポーツ飲料CM出演の件はナシですね」
牡丹がピシャリと言い切った。空気に呑まれた石田は、うっと息を飲むしかなかった。
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